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第五篇 聖都決戦篇 第二章 獣の国(7)


「海斗さん、何してたんですか? もう時間ですよ」


 部屋の前まで行くと、準備を済ませたミーシャが俺のことを待っていた。


「すまん、すぐ用意する」


 荷物はまとめてあったので、持つものを持つとすぐに部屋を出る。


「待たせた、行こうか」


「はい」


 足早に門の方へと向かい、俺の後ろにミーシャが続いていた。

 城を出たところで、エリスが俺たちのことを待っていた。


「エリス、世話になった」


「あぁ、気にするな。其れより、ちゃんと話はできたのかい」


「おかげさまでな。その、ありがとう」


「なに、妹の面倒を見るのは姉の役目さ」


 そういって、エリスは城の上の方に目を向ける。

 すると、エリスの部屋と思われる場所にアリスがこちらを見下ろしている姿が見えた。


 アリスも、それに気が付いたのか手を一瞬振りかけたが、顔を急激に赤くして窓から離れて見え

なくなってしまった。


 俺は、ふとアリスの別れ際の最後の言葉が気になった。


「なぁ、エリス…」


 俺はエリスの方を向く。


 だが、エリスはアリスのいたところを見つめたまま顔を動かさない。

 そして、その横顔がどことなくものいわせぬ雰囲気を感じてまった。


「…」


 俺が、何も言えずに固まっていると、それを訝しんだエリスがこちらを向いた。


「海斗?」


「あっ、あぁ。いや、やっぱりいい」


「なんだ、気になるではないか」


「じゃあ、無事ここに帰ってきたら話すことにするよ」


 そう言うと、エリスは少し不満そうに顔をしかめるが、俺は気にせずに改めて姿勢を正してエリスに向き直る。


「じゃ、行ってきます!」


「ふぅ、まぁよい。とにかく、絶対無事で帰ってくるのだぞ」


「あぁ」


 俺の返事を確認すると、ミーシャの方を向き


「そなたも海斗の事頼んだぞ」


「は、はい!」


「よし、行ってくる!」


 そして、ついに俺たちは獣の国へと向かい歩みを進めた。


 少し進んだところで振り返り、まだ見送ってくれているエリスに手を振る。

 それに呼応して、エリスも手を振り返してくれる。


 この先、どんな危険が待っているかはわからない。けれど、大切なものを守るために、進んでいくしかないのだ。


それが、たとえ茨の道だとしても…。





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