第五篇 聖都決戦篇 第二章 獣の国(5)
翌朝、俺はドアのノック音で目が覚める。
俺は声を出して、部屋の中へと招き入れる。それを聞いて、ドアが開き侍女が屋へと入ってきた。
「海斗様、朝食の用意が出来ております」
「あぁ、分かった。準備したら行くよ」
それを聞くと、手早く支度を済ませて部屋の外へと出た。
すると、少し離れた扉からミーシャも丁度出てくるところだった。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
俺は普通に挨拶をしたのだが、なぜかどことなくよそよそしさを感じるミーシャを訝しみながらも、俺がそのままエリス達が待っている部屋に向かうと、ミーシャも後に続いてきたのでそれほど気にも留めなかった。
部屋に着くと既にエリスとアリスが席で談笑をしながら待っていた。
「やぁ、おはよう」
「あぁ、おはよう」
エリスのいつも通りの気さくな挨拶に、俺もいつも通り言葉を返す。
だが、その近くにいるアリスに目を向けるが、顔を背けたままこちらを見ようとしない。
「あ、アリスも、おはよう」
「…ォㇵョ」
ものすごく小さい声だったが、何とか挨拶を返してもらえた。
まぁ、挨拶くらいだれでも返すか。
しかし、どこかでアリスとは話さないと…。
そんなことを考えつつ、俺達も席についた。そして、すぐに俺たちの目の前に朝食が運ばれてくる。
昨日の夕飯時も思ったが、魔王国側との交流が活発になったためか、食材にもいつも大国で食べているものが普通に含まれている。
とまぁ、そんなうちにいつの間にか朝食を食べ終えてしまっていた。
考え事やめてしまうと、昨日のアリスとのことが脳裏にフラッシュバックしてしまう。
「っ…」
とてもじゃないが、アリスの顔を見れない。
てか、なんで俺はキスくらいでこんなに心を乱しているんだ? 俺はサナと「c」まで行ったというのに…。
「海斗、大丈夫か?」
「えっ?」
いきなり名前をよばれたことに驚き周りを見回すと、心配そうにみんなが俺の方を見ていた。
どうやら、いつの間にかみんなの食事も終わり、席を立つところだったようだ。
「あ、ごめんごめん」
俺は苦笑いをしつつごまかすように謝辞を述べる。
「まったく、しっかりしろ。これから危険なところに行くのだからな」
「あぁ、ハハハ」
エリスにお叱りを受けてしまった。
そんな俺を横目に、エリスが場をまとめる。
「では、数刻の後、出発だ。二人は心して支度を整えるように」
そう締めくくられ、みんなが部屋から出ていく。
俺も支度をしなければならないので、足早に部屋を後にしようとしたのだが、エリスに呼び止められた。
「な、なんだ」
「三十分後、一人で私の部屋に来い」
それだけ言うと部屋を出て行ってしまった。
「どういうことだ?」
頭に疑問符を抱えたまま、俺は自分の部屋へと向かって歩き出した。
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