表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/151

第五篇 聖都決戦篇 第一章 異変(12)

ごめんなさい、短いです。


そして、数日後…。


「大丈夫? 忘れものない?」


 部屋を出る前に、まるで母親のようにあれこれと確認してくるサナ。


「あぁ、多分大丈夫だ」


 俺は荷物を持って、ドアノブにてをかける。

 サナはもう侍女ではない。


 だから、防衛上重要な場所である転移陣へいくことは許されないのである。

 いくら、元魔王直轄の者であったとしてもだ。


 故に、サナとはここで別れることなる。

 そこで、俺はあることを思い出し振り返る。


「どうしたの?」


「あぁ、ちょっと忘れ物を思い出した」


 そう言うと、呆れたように「何を忘れたの」といいながら部屋の奥に行こうとするが、俺はサナの手を掴む。

 そして、俺はそのまま自分の方へとサナを引き寄せ


「っ…」


 軽く口づけをした。


「これが、忘れ物だ」


 そうかっこつけながらも、頬を紅くしながら言うと。


「も、もう一回」


 そして、今度はサナから口づけをしてきた。

 顔をゼロ距離から、十センチ離れる。だが、次お互いに顔を近づける。

 そのまま二度、三度繰り返した。


「じゃあ、そろそろ行くよ」


「うん」


 最後に、お互いの存在を確かめ合うように抱き合ってから俺は部屋を出た。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 ものすごく愛おしく、かわいく、素敵な笑顔が、俺のみた最後のサナの姿であった。





「…」





 ドアが閉まると同時に、床にぽたぽたと大粒の涙が落ちる。


 そして、足の力がなくなったかのように崩れ落ちてしまうサナ。

 どんなに笑顔でいたとしても、言葉では応援していたとしても、心配なものは心配で、寂しいといったら寂しいのだ。

 けれど、サナは海斗に心配かけまいと、今日まで気を張り詰めて耐えていたのだ。


「海斗…、ひぐっ」


 ふと、視線が自分のお腹に行く。


 海斗は気が付いていたかわからないが、徐々にお腹も大きくなってきていた。


「ダメね。もう一人の親になるって言うのに、いつまでもこんな風では…」


 サナは自分のお腹をゆっくりとさする。

 その姿は既に、母親のそれであった。


 そして、サナの目からは流れていた雫はいつのまにかとまり、先ほどまでの悲しみに暮れた少女の表情は、もうそこにはなかったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ