第一章 動きだす世界(12)
時は念話による会話までさかのぼる。
『そ、そうか。でも、なんか嫌な感じがするんだ。気を付けてくれ』
『ほう。魔王の心配をするか。カカカッ。そんなことをされたのは初めてじゃ。まぁ、ありがたくその言
葉を受け取っておくとするかの』
ルーシーそういうと念話を終了する。
そして、警戒のために巡回させていた部隊から聞いた別動隊がいると思われる方向を見つめる。
「すこし遊んでくるかの」
そう一人口にすると、背中に黒色のコウモリのような翼を出現させ城壁から飛び降りると、勢いを利用し空へと舞い上がって別動隊の迎撃へと向かった。
(たしか、この変だったかの)
ルーシーは敵を視界にとらえるため高度を下げ森に目を凝らす。
ちなみにここにはルーシー以外誰もいない。他の者は砦のすぐ近くで待機している。
なぜか。
端的に言うと、邪魔だからである。
突然、ルーシーの下方からやりが飛んでくる。
それを何でもないように魔法障壁で受け止める。
しばらくすると槍は霧散し姿をなくす。魔法の槍だ。
「ほう。お主が来るとわの」
そう口にしながら槍の飛来した方向に目をやる。
「よぉ、クソガキ」
ルーシーの視線の先、森に少し開けたところに男が一人立っていた。
「ディヴェリア・ゴールトン」
ゴールトンは口の端をゆがませる。
「今回の件、弁明があるのなら聞いてやらんでもないぞ。内容によって楽に死なせてやろう」
この言葉を聞き、ゴールトンは声をあげて笑う。
「まるで、勝利を確信しているような言い草だなぁ。おい」
「あたりまえじゃ。誰が貴様のような小童に後れを取るか」
「ほう? だが、前哨戦は俺に後れを取ったんじゃないか」
ルーシーは少し顔を曇らせる。
「ふん。そんな小細工をするのは正面を切って勝てぬからなのだろうが」
「あーあ。負け惜しみとは耳が痛い」
そういいながら相手をバカにするように笑う。
もともと短気なルーシーはそれに耐えきれず無言で魔法を繰る出す。
ルーシーの背後に十個の魔方陣が展開され光線が放たれ地面へと突き刺さる。
「じゅごごごおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉおぉぉぉぉんん」
地面に直撃した瞬間爆発が起きる。
上級魔術「スピア・バースト」だ。
砂煙が晴れる。
「さすがだなぁ」
そこにはさっきと同じようにゴールトンがたっていた。
しかし、その周りは大きくえぐれ木々も吹き飛んでいる。
「生意気な」
ルーシーはそう一言だけ口にすると右の拳に魔術陣を組みながらゴールトンに突っ込む。
「レインフォース」
強化魔術を施した拳を思いっきり叩き付ける。
「レインフォース」
ゴールトンも同じく対応する。
「くっ」
ルーシーはゴールトンの力を利用し後ろに飛び地面に着地する。
ゴールトンの得意魔術は強化魔法だ。
「今度はこっちからいかせてもらうぜぇ」
「レインフォース・ダブル」
強化魔法の二重掛けだ。
ゴールトンは地面をける。
一瞬でルーシーの眼前へ。
「このっ!」
瞬時にルーシーも魔法障壁を展開。
ゴールトンが目にも止まらない速さで拳を打ちだし続けてくる。実際には常人には何が起きているかわからないだろう。
「おらおらおらおらぁぁぁぁぁ。どうしたクソガキぃ、防ぐのでていいっぱいじゃねぇか」
もちろんルーシーもただ防いでいるわけではない。
ゴールトンの地面に魔方陣が展開され、すぐに炎の柱が立ち上る。
「おっと」
今度はゴールトンが後ろに飛びのく。
だが、ルーシーは着地点にもすでに魔法を展開している。
「なっ」
そこから出現したのは炎でできた体の半分が地面に埋まっている竜だ。
ルーシーはゴールトンの攻撃を防ぎつつ、上級魔術「フレイム・ピラー」を布石にし、超級魔術「ブレイジング・フレームドラゴン」を繰り出したのだ。
「があぁぁぁ」
その竜は大きく口を開けそのままゴールトンを飲み込んだ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
ゴールトンは声を上げる。
竜は、そのまま渦を巻くように空へと体を伸ばし竜巻をおこす。これにより内部の熱量は何倍にも膨れ上がる。
「っ…」
最後まで読んでいただけるだけで感謝です。
前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。




