第五篇 聖都決戦篇 第一章 異変(4)
「それにしても、動けるものなのじゃな」
ご飯の支度を終え、みんなでテーブルを囲みご飯を食べていると、ルーシーがそんなことを言ってきたのだが、主語がなくわからず聞き返す。
「何がだ」
「サナじゃ。妊娠したら動けなくなるものじゃと思ったのじゃ」
「まぁ、まだ早い段階だからな」
「そうですね」
相槌を返しつつ、お腹を触るサナ。
なんだか、日が経つうちにだんだんと大人な雰囲気が感じられるようになったな。これが母性というやつなのだろうか。
「けれど、動けるからといって無理しないでくれよ」
「分かってるって」
俺の心配をよそに、軽く返事を返してくる。
そこで、スフィアが静かなことに気が付き顔を見ると。なにやら、ぼぉーとサナのお腹を眺めている。
「スフィア?」
ちょっと心配になって声をかけると。ばっと俺の方を向き。
「私にも子種をください」
「「「ぶぅぅー――――」」」
サナ以外が一斉にふきだした。
「な、何言ってんだよ」
「そそそうじゃぞ」
「ダメですよ! 次にもらうのは妹である私です」
「ちょっとお前も何言ってんだ」
突然の飛んでも発言に、この場が一気にカオスと化す。
その様子を高見の見物するサナ。
「いいじゃないですか、旦那様。旦那様の子種をもらう、これのどこがおかしいというのですか」
テーブルに身を乗り出しながら迫ってくるスフィア。
そんなことすると、体勢的に二つの豊かなお山が激しく主張してくる。
「言い方が生々しすぎるんだよ。てか、身を乗り出してくるな」
そういって、視線を頑張って引きはがすが、サナにはもちろんバレているようで。
「いてっ!」
視線は他の人達にむけながら、無言でサナが俺の足を踏みつけてきた。
そのことに対し、抗議の視線を送るがより踏みつける力が強くなったので、俺はそこでいろいろとこの状況を諦めるのだった。
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「zzz…」
「まったく、こんなところで寝てしまって」
スフィア様が飛んでも発言をし、カオス状態となった後、お酒も入ってしまったせいでさらにひどい状態となってしまった。
まぁ、お酒に弱い海斗だけがつぶれてしまったのだが。
お皿などは先にかたずけたので、テーブルに突っ伏して寝ている海斗をベッドに運ぼうとしたのだが、一緒に片付けをしていたスフィア様がキッチンから出てきてそれを止められた。
「お腹に障るだろう。私が運ぼう」
「あ、ありがとうございます」
いうこと為すことはとんでもない方だけど、本当にやさしい方ですね。
そう思ったのだが。
「スーハー、スーハ―」
しかし、なにやら海斗を抱きかかえているスフィア様から妙な音が。
「スフィア様、何をなされているのですか?」
そう声をかけると、あからさまにびくっと反応を示す。
「な、何のことだか…」
そういって、急いで海斗をベッドに寝かし始めた。
まったく、油断も隙も無い。
「ふぅ、これでいいですね」
ベッドには既に未久様が横になっていたので、今は海斗様と並んで寝ている。
あ、未久様が海斗に寝返りを打ちながら抱き着きましたね。
まぁ、これくらいは許すとしましょう。
その様子を椅子に座りながら見ていると、スフィア様がお茶を持ってきてくれました。
「ありがとうございます」
「いどういたしまして」
スフィア様は三つのカップをテーブルに置きます。
「そう言えばルーシー様は?」
「トイレに行ったわよ」
「そうですか」
お互いにコップに口をつけ一息つく。
二口目でのどを潤した時、ちょうどルーシーが部屋へと戻ってきた。
「すまぬ、少々待たせてしまったの」
「いえ」
ルーシー様とスフィア様は何のことをおっしゃっているのだろう。
二人の会話が理解できず、首をかしげる。
それに気が付いたスフィアが補足してくれた。
「あぁ、ちょっとあなたに話があるのよ」
「そうじゃ。まぁ、我はそこまで気にしていることではないのだがな」
見え見えに意地を張るルーシー。そんな彼女のこころをよんでいるかのように、
「なら、わたくしとサナの二人でお話ししますので」
「しないとは言っておらんではないか」
スフィアの分かりやすい口車に乗ってしまうルーシー。
ルーシーが席に着いたのを確認してから、
「それで、お話というのは」
そう尋ねると、スフィアは怪しげな笑みを浮かべながら。
「それは…、旦那様のことに決まっているでしょう」
最後までお読みいただきありがとうございました。
少し忙しくなったので更新遅くなってしまういました。申しわけないです。




