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第四編 恋する乙女篇 第三章 広がる歪(1) 


 二人と険悪な雰囲気になってから三日が立った。

 あれから、サナは俺と仕事以外の会話をしなくなりその会話も冷たくそっけないものになってしまった。


 そして、スフィアはというと俺を見つけると明らかに避けるような行動をし、何か仕事上で話さなければいけない時も顔を真っ赤にしながら俺と接するために、接しているこちらまで恥ずかしくなってきてしまう。


 またそれをサナが目撃してしまい、その日は一度も顔を合わすことはなく、俺への書類なども部屋の前

に置かれていた。


 仲違いしてから何より困ったのは、衣食住だ。

 服はもちろんのこと、食事から何からほとんどサナに頼りっぱなしだったがために、何もできないという現象に見舞われた。


 もちろん家事などができないわけではない。


 ただ、今まで任せっきりにしていたがために何がどこにあるかがわからず、その物を探すところから始めなければならないのだ。 


「はぁ」


 俺はため息をつきつつ、一人寂しい朝を迎える。


 四日目の朝の到来だ。


 日に日に重たくなっていく体に鞭を打って立ち上がる。

 そんな感じでまた一日が始まったのだった。




「最近元気がないのぅ。海斗よ」


 今後の全体的な戦略を立てるべく、ルーシーの部屋を訪れていた俺にそう問いかけてきた。


「ん? いや、大丈夫だ」


 俺は心配をかけまいと笑顔を作って答える。だが、今の俺は自分で思っているよりもひどい顔をしているらしく、ルーシーはその言葉に首を振る。


「まったく、仕事のしすぎじゃ。少し休んだらどうじゃ」


 俺の向かい側に座っているルーシーは体を乗り出して心配そうに顔を近づけてくる。


「っ…」


 だが、その行為がスフィアとのことをフラッシュバックさせ思わず息を呑む。

 そんな俺のことなどつよしらず、ルーシーの影響でさらにこわばってしまった俺を心配げにより顔を近づけてくる。


「ルーシー、その、近い」


 俺はついにその状況に耐え兼ねて声を上げる。


「っ!」


 すると、自分では自覚がなかったのかその状況にルーシーも気が付いた瞬間、一気に顔をまるでりんごのように真っ赤にして慌てて席に腰を戻す。


「き、気のせいじゃろう」


「そ、そうか」


 俺も平静を装いつつ、応答する。


「…」


「…」


 二人の間に気まずい雰囲気が流れる。

 こういう微妙な空気というのは、何度経験しても慣れない。


 「さて、どうしたものか」と考えているとドアがノックされる。

 ルーシーが許可を出したので、部屋のドアが開かれ訪問者が顔を見せる。


 その訪問者とは…。


「失礼します。魔王様、本日は城下の視察に行かれる日ではあります。急ぎご用意を」


 セバスさんだった。


「そうじゃったかのぅ。まぁ、わかった」


 仕事の予定を忘れていたルーシーに対し、呆れた顔もせず準備を促すセバスさん。

 促された本人はというと、座っていた椅子から「よいしょっ」とかわいらしく声を上げて降りると、トテトテと部屋の奥へと駆けていく。


 そして、どこからともなく現れたサラさんがその後に続く。


「さて…」


 ルーシーとサラさんが別の部屋に入るのを見届けると、先ほどの雰囲気も丁度よくうやむやになってくれたので、これを好機とこの部屋から出ていこうと後ろを向くと。


「うおっ」


 すぐ後ろにセバスさんが立っていた。


「失礼しました」


「あ、いえ。それで、なにか」


「いや、海斗様もお早くご用意をと思いまして」


「へっ」


 思わぬセバスさんの言葉に俺はスッとんきょな顔になる。


「用意? なんの?」


「それはもちろん、城下の視察ですよ」


 そう、いつもはみせない笑みを携えながら言ってきたので。「これは、嵌められたな」と確信する俺であった。


 


最後まで読んでいただきありがとうございました。


短くてすみません。

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