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第一章 動きだす世界(9)


 部屋へと戻り、昨日のように食事とお風呂に入りベッドにもぐりこむのだった。

次の日も午前中はサナさんと勉強し、午後はルーシー、サラさんに付き合ってもらい魔法の特訓をしていった。


特訓を始めて五日が経った。


今日はサナさんが仕事のため、午前の勉強は休みとなってしまったので午後までどうしたものかと部屋でソファーに腰掛けながら天井を仰ぎ考えていると、膝に重みを感じる。

視線を前に戻すと、そこには女子中が…。ルーシーがこちらを向いた格好で俺の膝に馬乗りしていた。


「暇なのじゃ、構うが良い」


こういう姿を見るとまだまだ子供だなと思ってしまう。

そして、あいつに姿を重ねてしまう。前世の俺の妹に…。


(今頃どうしてるかな…)


(いきなりあっちの世界から消えちゃったからな)


俺がそんなことを考えていると、ずっと無言だったため無視されたと思ったのかルーシーがポカポカと俺の胸のあたりを殴ってくる。


「無視するでなーい」


「ぐはっ」


実際はポカポカなどと可愛いものではなく、ドンドンといった感じだ。


(魔王、恐るべし…)


「わ、わかったから…」


俺は声を絞り出し、ルーシーを制止する。


「むぅ、分かれば良いのじゃ」


そう言いながら腕を組み踏ん反り返る。


(お、おい。そんなに反ったら)


「っ…」


そう思った瞬間、俺の膝という不安定な位置ということも相まって後ろに倒れてしまう。

俺は慌てて腕を伸ばし、自分の方に体を引き寄せた。


「ったく、危ないだろ」


俺は抱き合っていた形から、ルーシーの肩を持ち少し離しながら注意する。


「…」


だが、ルーシーは俯いたまま何も言わない。


(もしかして、さっき無理やり引っ張ったせいでどっか痛めたんじゃ)


俺は心配になりその顔を覗き込む。


「ルーシー、大丈夫か?」


「な、なんじゃ。別になんでもないのじゃ」


俺が視界に入ると顔を少し紅くしていたルーシーはそう言いながら顔を上げる。


「そうか。なら良かった」


「ふん、あたりまえじゃ。我を誰だと思うておる」


「で、何するんだ」


「主が考えよ」


 そういわれしばし思案する。

 俺は必死に考えた末、それを口にした。


「寝るか」


「…」


「じょ、冗談だ」


 ルーシーが何も反応しいので、慌てて訂正する。だが…。


「ふむ、それもありじゃのぅ」


 そういうと、俺の膝から降りる。そして、隣に腰を下ろしたと思ったらそのまま横になると頭を俺の膝にのせてきた。


「何してんだ」


「お主が寝ると言うたのじゃろ」


 自分から提案しておきながら、即肯定され何となく違和感を感じたのでもう一つ提案することにした。


「じゃ、じゃあ。寝るまで何か話でもするか」


「それはおもしろそうじゃの。そうじゃ、主の世界のことを知りたいのじゃ」


 そういいながら、ルーシーは顔を上に向けこちらを見る。


「そうか。それならまず、俺たちの世界には魔法はないんだ。だけど…」


 その日、俺たちはしばしの休息を楽しんだのだった。



最後まで読んでいただけるだけで感謝です。


前作「居候彼女は泥棒猫」もよろしくお願いします。

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