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プロローグ
少年が手にした一冊の本。
開いたその物語の少女に恋をした―――
そっと手を伸ばしてみても届かない、『次元』という名の距離。
決して辿り着けない、架空のその世界。
もしも触れ合えたなら
もしも微笑み合えたなら
幼心が抱いた、叶うはずのない願いは灰にも成らずに、ただ見詰める程切なく、その想いは溢れ出す。
キミが言った台詞の意味なんて知らずに。
あの日からずっと、この空の下で少女と出逢う―――、そんな幻想を小さな胸に思い描き続けていた。
そして目覚める、変わらない風景の中で。
夢から覚めれば、この胸には切なさしか残らないけれど。
それでも、架空のキミに……。




