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最終話 思わぬ伏兵と盟約の儀式

「というわけですので、帝国との交渉でボロが出ないようにあなたにはこれから姉さんと繰り返し愛し合ってもらいます。ついでにアリサさんともですね」


 そう言われて、僕は既に何も反論できなかった。

 いや、すごく嬉しい気持ちもあるんだけど、やっぱりあの2人と本格的に付き合うと考えるとこんな僕でいいのだろうかという不安と尻込みの方が先に立つ。

 でも僕も既に敵艦をこの手で沈め、帝国から救うはずだった地球を逆に連邦から見放されるという窮地に追いやり、今更後戻りもできない立場に追い込まれていた。やってしまった行為の責任はやっぱり取らないといけない。

 ここは一つ覚悟を決めて、とことんまで流されるしかなかった。

 そう後ろ向きな決意をした僕に、だけどラティファさんは新たな爆弾を投げてきた。


「その後で結構ですから、わたくしとも一度、肌を合わせておいてくださいね」


「はい!?」


 僕が素っ頓狂な声を上げると、よく聞こえなかったと思ったのかラティファさんがもう一度僕に説明してくれた。


「ですから、いつでもいいのでわたくしのことも抱いておいて欲しいと言ったのです」


 何でもないことのように言うラティファさんに僕は唖然としながら確認する。


「ど、どうしてそんなことをする必要があるんですか!?」


 するとラティファさんが怪訝けげんそうな顔をした。


「どうしてって……。わたくしも姉さんと同じく皇位継承権を持った令嬢なのですよ?」


「そ、それは僕も知ってます」


「そしてわたくしも一緒に捕虜になってしまったわけです」


「そう、ですね」


 そううなずきながらも、僕はなんだか非常に嫌な予感がした。


「なのに姉さんだけが無残に汚されて、身も心も喜んであなたに奉仕するまで調教されたあげく、皇位継承権すら返上してこの辺境惑星の統治権をあなたのために求めるというのはおかしくないですか。そのように下劣な欲望まみれの男が相手なら、必ずもう1人のお姫様のことも襲ってその体を好きにもてあそぼうとするはずです。

 それとも聡さんは、そこまでわたくしに女としての魅力がないと思われますか?」


 そう聞かれて、ラティファさんのおっとりとしたロングヘア―の美貌と、サミアさんすら凌駕する巨乳を前に僕はゴクリと唾を飲み込んだ。


「つまり、そういうことです。姉さんほど舞い上がってはいなくても、わたくしも同じように調教されてあなたに奉仕する女に成り下がったことにしないと話が矛盾するのです。わたくしの皇位継承権だけ残ってしまうのも交渉時の支障になりますしね。

 ですから、帝都でボロが出ないようにわたくしのこともよろしくお願いしますね。さとしさん」


 ラティファさんのニコリとした笑顔に、僕は当然そのまま素直にうなずくことなどできはしない。


「いやいやいやいや。ラティファさんは僕のことを好きでも何でもないですよね!? それなのにいいんですか、僕なんかに汚されて!」


「あら、わたくしはあなたのことを既に好ましいと言っていますよ。年下の男の子を可愛がるのも嫌いではないですし、姉さんに酷いことをするならわたくしが最初に相手をするとも言っていたではないですか」


「た、確かに観覧車の中や屋敷でそんなようなことも聞きましたけど、あれは人柄のことだとか捕虜だから仕方なくとか、そういうことでしたよね!?」


 だけどラティファさんは僕の必死の反論を涼しい顔でかわす。


「捕虜としての扱いを全然しようとしなかったあなたが今更それを言うのですか? それに一度くらいは絶望したあなたを女として慰めてあげるともわたくしは言いました。だからこれはその約束のただの履行に過ぎません」


「僕まだサミアさんやアリサちゃんに失望されて人生に絶望してはいないんですけど!?」


「まあ、いずれされるかもしれませんからその前払いです。

 いえ、分割払いということにしてあなたが求めるなら何度だってお支払いしてもよい、という程度の気持ちはわたくしもちゃんと持っていますよ」


「そ、そんな……」


 その思わぬ覚悟を聞いて絶句する僕にラティファさんが苦笑した。


「それとも、やっぱりわたくしには女の魅力をおぼえませんか?」


 それは卑怯な質問だった。


「でなければ、わたくしのことを得体のしれない怖い女だと思って本当は嫌っていますか?」


 僕の弱く薄汚い本性をちゃんと見抜いた上で僕のことを真剣に扱ってくれる、ただ一人の女性だとは思ってる。

 だから僕はその質問には全力でブルブルと首を横に振って答えた。


「それなら、わたくしのことも姉さんやアリサさんと同じように可愛がってくれるとわたくしは嬉しいです。

 なにせあなたはわたくしのおっとりとした上辺うわべに騙されず、陰謀好きの冷徹な一面を知りながらわたくしを頼りにしてしたってくれる、たった一人の殿方なのですから」


 それは僕がどうしようもない変態で自分に自信が無いせいだからでもあるんだけど、女性からそこまで言われるとさすがの僕もそれ以上尻込みすることができなかった。

 でも一応聞いてみる。


「僕の変態性癖は、盗聴や下着ドロくらいじゃ止まらないかもしれませんよ?」


「そうでしょうねえ。その趣味をこれ以上姉さんやアリサさん相手に発揮されて2人を更におかしくされても困りますので、その辺の欲望はこれからはなるべくわたくしにぶつけるようにしてください」


「僕は本当に情けなくて、何もできないダメ人間なんですよ?」


「そこまで卑下ひげしたものでもないと思いますが、女にここまで言わせても逃げ道を探すくらいにヘタレなのは十分承知しています」


「それと、僕だけラティファさんに変態性癖をさらけだすのは不安です。か、代わりにあなたの腹黒でドSな本性を僕にもっと見せてください。じゃないと僕は、安心できません」


 それは互いの弱みを握りあって安心したいという、実に小心者らしいつまらない見栄と保身だった。


「それにそうしないと……、いつかラティファさんが壊れてしまうような気もするんです」


 変態性癖をこじらせて一人暴走しがちだった自分の後ろ暗い経験と、どこか親近感を感じてきたラティファさんの腹黒さへの心配がつい僕にそんなことを言わせてしまう。

 そんな僕の余計な一言にラティファさんが驚いたように目をパチクリとする。そしてフッと笑った。


「わたくしの重荷まで背負って一緒に苦しまないと安心できないだなんて、あなたは本当にドMないい性格をしていますね。そんな不器用なところも、わたくしはとても好きですよ」


 それは何だかすごく柔らかな笑みだった。


「でもせっかくそう言ってくださるなら、頑張ってわたくしの愛のムチにも耐えてもらうことにしましょうか」


 その言葉に僕はラティファさんからの絶え間ない言葉責めと、ムチやロウソクをおねだりさせられる自分の姿を思わず思い浮かべる。

 愛が、とても重くて痛そうだった……。


「な、なるべくご期待に沿えるように、頑張ります」


 僕は冷や汗をかきながらそう答えるのがやっとだった。

 それを聞いたラティファさんが苦笑する。


「なるべく、ですか。それはとてもあなたらしいですね。

 ええ、これからも色々となるべく頑張ってください。期待せずに期待しています」


 そうして僕の宇宙戦争はひとまず終わった。

 これからも色々あるような気がするけれど、それはまた後で考えよう。

 あ、でも部長には今のうちに何とか連絡しとかないとなあ。

 早くしないと本当に僕なんかの愛人に勝手にされてしまいかねない……。




 だけど僕はまだ知らない。

 金髪ロリのアリサちゃんのみならず、貴族どころか皇族の令嬢であるサミアさんやラティファさんまで僕の毒牙にかかることを知った部長が、


「私のセーラー服姿を魅力的だと言ったあの言葉にウソはないんだよね?」


 となぜかライバル心を燃やしてしまうことに。

 部長を使える人材だと判断したラティファさんが、実は一番年上で友達とかの結婚を気にするお年頃な部長を巧妙に焚きつけたのは言うまでもない。

 帝国との交渉で地球を手に入れ、連邦とのキャスティングボートすら握るというラティファさんの壮大な陰謀が、部長の諜報員魂?に火をつけたのもまずかった。

 一応僕はもしもの時は愛人のフリでいいですからと言っているんだけど、部長の目つきが最近なんだかとても怪しい。

 アリサちゃんとサミアさんの語る僕の大袈裟な英雄譚を聞かされてからというもの、どうも一緒になって僕のことを誤解し始めたフシがある。

 部長の中の様々な思惑と幻想が一線を超える前に、早く我に返ってくれないだろうか。僕は本当に全然大した事の無い、ただの変態紳士に過ぎないのだから。


 そうため息をつきながら部活の合宿という名目で来た温泉旅館の部屋に戻ると、この慰労会のスポンサーである部長に招待されたサミアさんたちをまじえて、地球の統治権獲得とその先の野望のための検討会がなぜか始まった。

 だけどそこは女性が4人も集まった会なので、当然のごとく途中から話がどんどんと脱線していく。


「ちょ、ちょっとアリサちゃん。部長に僕の下着ドロの話なんかしないでよ」


「サミアさんも対抗して僕が汚した下着を初めて履いた話なんていいですから」


「それとラティファさんは足でこっそりと僕の下半身にイタズラするのをやめてください!」


「そして部長ははだけた浴衣ゆかたのまま悩ましい目で僕をチラチラと見ないでー!!」


 そう叫びながら僕は思う。

 アリサちゃんの部屋を盗聴しながら盗んだ下着を汚すことしかできなかった僕が思えば遠くへ来たものだと。

 果たして僕は、この女性たちを本当に幸せにできるんだろうか。

 こんな僕にはとても無理だという不安がどうしてもよぎるけど、それでも今までみたいに自分に出来る事を何とかこなし続けるしか道はない。

 さしあたっては部長を僕の毒牙から守ることだった。

 何もこれ以上僕の犠牲者を増やす必要はないはずで、手遅れなアリサちゃんや、複雑なお家事情を抱えるサミアさんたちと部長では立場が違う。部長ならまだ引き返せるはずだ。

 そして何より、4人もの女性を相手にする責任の重さに僕自身が耐えられそうにない。

 僕が息も絶え絶えにひとまず隣の部屋へ戦略的撤退を図ると、そこにはなぜか既に布団が敷いてあった。


「あらあら、気の早い殿方ですねえ」


 その言葉に後ろを振り返ったら、そこには目をランランと輝かせたアリサちゃんに、恥ずかしそうに立つサミアさん。そしてラティファさんに後ろから肩を抱かれた部長が何やら覚悟を決めた目で僕を見つめていた。


「まだ夜は長いですが、もう始めてしまいましょうか。これは新たな仲間を迎えて女同士の結束を固める初めての儀式ですので、朝までたっぷりと付き合ってもらいますからね。聡さん」


 そうして部屋のふすまがラティファさんの手で静かに閉じられる。

 変態紳士として獲物を遠くから生温かい目で眺めるだけだったはずの僕が、公開羞恥プレイで狩られる側へと転落した瞬間だった。撤退をしたつもりが、実は自分から死地へと迷い込んでいたのだ。

 いや、本来ならそれでも嬉しいシチュエーションのはずなのに、やっぱり不安が先に立つのは僕がとことん小心者なせいかもしれない。


『地球は今、未曽有みぞうの危機にさらされている』


 そんな電波ジャック映像から始まった僕の宇宙戦争は、僕の方が4人の美女や美少女に囲まれながら貞操の危機にさらされるという超展開を、いつの間にか迎えることになっていた。

 この先も帝国や連邦を相手に色々ありそうな気がするけれど、天使で妹のようなアリサちゃんに、上官に反抗してまで僕らを救ってくれた武人のサミアさん。僕と似た闇を抱える陰謀家で姉思いのラティファさんと、所属組織の思惑を無視して僕らに正体を明かし励ましてくれた諜報員の部長。

 ここにいる4人の女性たちと一緒なら、不思議と何とかなりそうな気がする。

 ただの変態紳士に過ぎない僕だけど、そんな彼女たちのためにせめて持てる全力をこれからも尽くし続けようと、そう強く僕は思った。




「あ、でもやめて、浴衣ゆかたを乱暴にひんかないで!」


「それにアリサちゃんはどうして脱いだしまパンを僕の口の中に突っ込もうとするの!?」


「サミアさんもすまぬと謝りながらまだ温かいブラジャーで目隠しをしようとするのやめてください!」


「ラティファさん、あなたが手錠を手にするとほんと怖いからそれだけは許してもらえませんか……」


「それと部長は実は一番年上なんだから、『うわっ』て引いてないでみんなを止めてよ!」




 そうして魔女たちによるサバトのうたげが始まる。

 僕は一体どうなっちゃうんだろうか。まさか前だけじゃなくて、お尻の貞操の危機とかにはならないよね!?

 そんな不安と期待が入り混じる中、手首に手錠がはまる音を聞いて僕はモゴモゴと悲鳴を上げる。

 それでも僕は、結局は彼女たちのしたいようにその身を預けるつもりでいた。こうなったら何をされても僕も一緒になってうたげを楽しむだけだ。

 だってそれが、今ここで僕が彼女たちにしてあげられる、ただ一つの全力なのだから。







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