表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/39

第28話 再度侵攻

「敵艦のワープアウト反応が感知されました」


 報告を受けた僕たちは、急いで屋敷の地下格納庫にある連絡艇に集合した。


「そ、それで敵は何隻なの、ドクター!?」


「全部で7隻です」


 金髪ロリで僕の幼馴染なアリサちゃんと、本体の宇宙船は遠く月軌道上に浮かぶ船の人工知能とのやり取りに捕虜のサミアさんがうなずく。


「7隻か。およそ二個小隊だな」


「わたくしたちの艦の分が抜けていますが、臨時編成の半個中隊で威力偵察を兼ねるといったところでしょうか」


「所属の行方不明艦の捜索と状況把握には妥当なところだろうな」


 サミアさんと、その妹でやはり捕虜のラティファさんの分析を聞きながら僕はため息をついた。


「連邦の救援は、やっぱり来ないのかな」


「ま、まだだよお兄ちゃん! この捜索部隊さえ追い返せば助けは絶対くるもん!」


 アリサちゃんの強気な叫びに、意外にもドクターが賛同する。


「確かに、その可能性もなくはありません。この規模の部隊の迎撃に成功すれば、敵がより大規模な艦隊を編成してこんな辺境惑星に再び差し向けてくるかは検討の余地があるでしょう。

 どちらにしても相応の時間が稼げるでしょうし、帝国の混乱を見た連邦が救援を差し向けてくれる可能性はあります」


「でしょ。寄せ集めの半個中隊でこの地球を落とそうだなんて。その甘さを思い知らせてあげるんだから!」


 アリサちゃんはドヤ顔でそう言い放った。

 どうやらこの間の戦いに勝ったことで随分と自信を深めているみたいだ。


「ただし、それはあくまでこの部隊に勝てればの話です」


「え……。まさか、勝てないの!?」


「さすがに7倍の敵ともなれば、いくらユニゾンドライブを駆使しようともまともにぶつかればまず無理でしょうな」


 ドクターの指摘にアリサちゃんがガーンとショックを受ける。

 だけどまあ、7倍は勝てないよなあ。

 いくら無敵のタイガー戦車でも、わらわらと群がってくるソ連戦車に最終的には飲み込まれて撃破されてしまうようなものだろうか。

 戦いはやっぱり数だよ、アリサちゃん。


「ですが敵は、2つの小隊に分かれて2方向から捜索と索敵を行いつつ地球に接近しています。これをそれぞれ各個撃破に持ち込むことができれば、あるいは勝機があるかもしれません」


「本当!?」


「それでもギリギリの綱渡りです。片方の小隊の撃破に手間取ればこちらが包囲されて負けます。

 たとえ包囲前に撃破できても残りの小隊に持久戦を選択されてしまえば、高度な精神集中を余儀なくされるユニゾンドライブの使用限界が来てやはり負けます」


「だ、大丈夫よドクター。向こうは私たちを辺境配置のただの老朽艦で、すぐに撤退するか降伏すると思って油断するはずでしょ。

 それなのに旧世代艦のバカみたいな頑丈さとマニュアル操作なのを悪用して、パイロットが廃人になる危険性すら無視してとっくの昔に禁止された戦法で特攻してくるなんて考えもしないわよ。たぶん強烈な不意打ちになるんじゃない?」


「確かに老朽艦が突然驚異的な性能を発揮して単艦で小隊を圧倒して見せれば、敵は恐慌状態におちいって組織的な抵抗ができなくなるかもしれません。そうなれば戦意喪失した敵部隊を相手に、こちらの一方的な蹂躙じゅうりん戦となる展開は確かにありえます」


「でしょ?」


「ですが、それは敵の指揮官にもよります。突然の劣勢にも慌てず、的確に逆襲に転じることができる名将が相手である場合もあるのですよ。

 それに、危険で不安定なユニゾンドライブに頼った長時間の連戦はやはりリスクが高過ぎます」


「そ、そこはお兄ちゃんとの愛の力で乗り切るから大丈夫!」


 それを聞いて僕の頭が痛くなった。

 だけどそれはドクターも同じだったようだ。


「ユニゾンドライブは本当に危険なのですよ、お嬢様」


「でも、こないだは全然平気だったじゃない」


「それは恐らく、同調性と相違性が奇跡的にうまくバランスしたからでしょう」


「よく分からない……」


「兄妹のように育って気心が知れ、互いの存在を大切に思ってその全てを容易に受け入れてしまえる下地があればこそ、拒否反応も無くいきなりの同調に成功したのです。少々の意識や記憶の混濁もそれならあまり気にしないでいられますしな。

 それと同時に男女という性差があり、人種からして連邦と地球で異なる上に、性格もかなり違うという互いの相違性が、自我の融合による精神崩壊という最悪の事態を回避することに有利に働いていると思われます」


「よ、要はお兄ちゃんとならユニゾンドライブを使っても何とかなるってことでしょ?」


 そう言うアリサちゃんの顔は微妙にこわばっていた。

 多分あまり理解していない。


「まあ、今のところはそうです。それでもいつその精神バランスが崩れてユニゾンができなくなったり、副作用で自我が不安定になるかは全く分からないのですぞ?」


「別にこの先もずっとそれを使おうっていうわけじゃないから大丈夫よ。今回さえもてばそれでいいんだし、私達には他に取れる方法だってないじゃない」


 アリサちゃんの指摘に、今度はドクターが微妙な沈黙を余儀なくされる。


「……仕方ありませんな。確かにもしこの次があるとすれば、それはもうどうしようもない状況になっているでしょうしな」


 ついにドクターが折れた。

 だけど、それでは納得しない人もいた。


「貴様たちは、本当にそれでいいのか?」


 サミアさんの問いにアリサちゃんがふくれっ面をする。


「どーいうことよ!」


「前に言っただろう。連邦の救援が来たとて、精神感応炉にたずさわる貴様たちが幸せになるとは限らない。いやそれどころか、間違いなく今より不自由な生活を余儀なくされるはずだ。

 それは本質的に囚人の境遇と何ら変わらない。精神感応エネルギーがもたらす福音ふくいんを豚のようにむさぼることしか知らぬ、そんな愚かな大衆の奴隷になるということだ」


「…………だから?」


「帝国に来い。そうすれば今と同じか、それ以上の自由と生活を保障しよう」


「そうして貴族様として学校のみんなや友達を私に弾圧しろっていうの?

 そんなこと、まっぴらごめんよ! 私はパパとママの愛したこの星を守るの。そのためなら私はいくら自由を制限されても構わない。お兄ちゃんさえそばにいてくれればそれでいい!」


 アリサちゃんはきっぱりと言い切った。

 それを聞いて僕は、かなわないなあと思った。僕はただ、そんなアリサちゃんをそっと陰から支え続けるだけだ。


「そうか。ならばもう、何も言うまい」


 アリサちゃんの決意とそれをまぶしく見守る僕を見て、サミアさんはそれ以上の説得をしてこなかった。

 こうして、僕たちの方針が決まった。





「って、お兄ちゃんもそれでいいよね!?」


 アリサちゃんが思い出したように不安そうな目で僕を振り返る。

 僕は笑顔で頷いた。


「もちろんだよ、アリサちゃん」


「お兄ちゃん、大好き!!」


 アリサちゃんが勢いよく僕に抱き着く。


「もうこれからは本当に私に何も遠慮しなくていいからね。盗んだ私の下着を盗聴した私のエッチな声を聞きながらコソコソ汚すんじゃなくて、私の体にもしたいことを自由にしてね。

 たとえ不自由な生活でも、お兄ちゃんのいやらしい欲望には絶対に不自由なんてさせないんだから!」


 アリサちゃんのとんでもない宣言に僕の笑顔が引きつる。


「お兄ちゃんの大好きなスク水だってブルマだって、お兄ちゃんのためだけに着てあげる。猫耳を付けて甘えてあげるし、お兄ちゃんだけのいたずらメイドさんにだってなってあげるんだからね!」


 アリサちゃんの下着を片手に夜な夜なつぶやいていたイケナイ妄想を口にされて僕は慌てた。

 サミアさんとラティファさんの驚く顔がつらい。


「ア、アリサちゃん!? あ、あれは冗談だから。僕、本気じゃないからね?」


「え、そうなの。じゃあ私たち兄妹なんだよって、嫌がる私に無理やり襲い掛かる鬼畜プレイの方が興奮してやっぱり良かった?」


「それも違うから! お、お願いだからちょっと静かにしててくれるかなあ」


 だけどアリサちゃんは、なぜかショックを受けたように更につぶやく。


「も、もしかして……。綺麗な年上の女教師や看護婦さんから大きな胸で誘惑されて、ちょっと強引に迫られるプレイの方がいいの?

 そ、そんなの、私に勝ち目なんてないじゃない」


 アリサちゃんが悲しそうにうなだれた。

 うん、本当に黙っててくれるかな。僕が隠し持ってるイケナイ本の内容まで全部暴露されていくんだけど。

 恐る恐るサミアさんたちの方を見ると、勝ち誇った顔で大人な女性を意識したポーズを取り始めるサミアさんや、全部分かっていますよというわけ知り顔のラティファさんがいた。

 こうして僕は、新たな敵部隊と戦う前からその精神を味方によって激しく削られていく……。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ