第20話 BBAvsキング炉利
「金曜はどうして二人とも学校を休んだのかな?」
色々あった週明けの月曜日に部室に行くと、いきなりそう桜井部長から聞かれた。
「え、いやあ。ちょ、ちょっと一緒に風邪を引きまして……」
「そうか、そんな時も君たちは仲がいいんだね」
部長がフフッと微笑む。
その笑みに僕はなぜかドキリとした。
「お兄ちゃんと私は一心同体だから当然だもん」
アリサちゃんがそう言いながら僕にヒシと抱き着く。全てがバレて以来、アリサちゃんの遠慮が更になくなってきた。
僕はそんなアリサちゃんをどうしたものかと、未だに考えあぐねている。
「それじゃあ二人は見てないのかな?」
「見てないって、一体何をです?」
僕の疑問に部長がニヤリと笑った。
「何って、宇宙戦争をだよ」
僕は思わずブッと噴き出す。
「う、宇宙戦争!?」
「うん。金曜日に小惑星帯でそれらしき不審な発光現象が観測されたって、そう一部のネットの間で今話題なんだよ」
そ、そうかあ。まああれだけ派手にドンパチしてたら観測されちゃうよね。
小惑星とか事前トラップごと幾つも吹き飛ばされてたしなあ。
「へ、へえ、そうなんですか。それは知りませんでした」
僕は遠い目をしながらそうしらばっくれるしかなかった。
「こないだの電波ジャックとも時系列が合うから、本当に地球が侵略されるんじゃないかって議論が起きてるよ。天文部員としてこれくらいのことは把握しておいて欲しかったかな」
「す、すみません」
苦笑いで謝る僕を部長は興味深そうに眺めてくる。なんだか少し居心地が悪い。
「まあいいよ。それにまだ何もないところを見ると、どうやら地球を守ろうとする連邦とやらが勝ったのかもしれない。君はどう思う?」
まさかその通りですとは言えないから、僕は適当に誤魔化すしかなかった。
「そ、そうだと、いいですね」
「本当にね。電波ジャックの映像からすると、帝国とやらに占領されれば無事には済みそうにないからねえ」
すると突然アリサちゃんが目を輝かせた。
「あ、あの映像を信じてくれるの!?」
部長はそんなアリサちゃんを面白そうに見る。
「信じるに足る何かがある、とは思っているかな」
「何かって、一体何ですか?」
部長の意見を知りたくて僕はそう聞いてみた。
「全世界同時電波ジャックという技術的な側面もさることながら、あの映像からは苦しい立場からの精一杯のメッセージのようなものを感じるんだよ。ただの愉快犯ならそんな回りくどいものにはしないだろうからね。恐らく善意から発せられたであろうその意志を、私は信じてみたいんだ」
その言葉にアリサちゃんが目をうるませた。
「今までずっと部長のことを、お兄ちゃんを誘惑して勧誘するただのエロババアだとばかり思ってたけど。実はいいところもあったんですね部長!」
僕から離れて今度は部長に抱き着くアリサちゃん。
「こやつめ、ハハハ! 花の女子学生を捕まえてまさかずっとそんな風に思っていたとはな。この金髪ロリが、一体どうしてくれようか」
「い、痛い。痛いです、部長……」
アリサちゃんが部長に頭を左右からグリグリとされていた。
女子学生同士のキャッキャウフフな戯れのはずなのに、なぜか僕には女教師に折檻されてる残念な中等部生に見えた。
女子学生をことあるごとに強調する部長や、スレンダーで幼い容姿を気にするアリサちゃんにはとても言えないけれど……。
「まあそれはともかく。こう見えて私はそれなりに人生経験を積んでいるんだよ。だから二人とも、何かあったら遠慮なく私に相談してくれていいからね。
部活に関することでも構わないし、それ以外のことでももちろん大歓迎さ。なんなら、次の宇宙戦争はどうなりそうか、とかでもね」
部長が意味ありげに僕にウインクをしてみせる。
僕はそれを、あいまいな笑みで受け止めるしかなかった。
「そ、そうですね……。何かあったら、ぜひそうします」
そう言われたからといって、まさか素直に相談するわけには絶対いかない。
帝国の皇族を捕虜にしたんですけどどうしたらいいと思いますか、とはやっぱりなかなか聞けないのである。
あーでも、盗聴や下着ドロが正式にバレたのに更にベタベタしてくる幼馴染をどうしたらいいのかはちょっと聞いてみたい。
盗聴しながら盗んだ幼馴染の下着にイタズラしていることを同級生の女の子に相談かあ。
想像するとすごくドキドキするけど、やっぱりNGだよねえ……。




