第18話 オッパイ三国志
「呼びつけておきながら随分と待たせてくれるではないか。さすがは連邦の野蛮人だな」
二人組の女性の一人が、艦橋に入ってくるなりそう言い放つ。
「姉さん、失礼ですよ。いくら礼儀知らずな方たちでも、本当のことを耳にすると気を悪くするするかもしれません」
穏やかに妹らしき人が姉を注意するものの、そっちも十分失礼だった。
「そうか。そうだったな。これは大人げないことをした。
だが、どうしてここには子供しかいないのだ」
姉と呼ばれた銀色のショートヘアーに小麦色の肌の女性が、豊かな胸を誇示するように憮然とこちらを見下ろす。
ピッチリとした黒い宇宙服なボディースーツの上から半透明な布を肩と腰に巻く、その姿で睨まれるとなぜかすごくドキドキとした。
「そうですねえ。捕虜との接見が怖くて子供をよこすだなんて、連邦の軍人さんは本当に意気地がありませんねえ」
ロングヘア―でその姉より更に巨乳な妹の人が、小首をかしげながらおっとりとこぼす。
だけどやはり内容はかなり辛辣だった。
「し、失礼なのはそっちの方でしょ。私たちがあんた達を倒したんだからね!」
アリサちゃんが憤慨したように言い放つと姉妹は顔を見合わせた。
そしてやれやれと言わんばかりにアリサちゃんを見る。
「なあお嬢ちゃん。どうしてここまでついて来たのかは知らないが、早くちゃんとした大人を出してくれないか。なんならそこの艦長席でふんぞり返っていただろう政治将校殿をだ」
政治将校殿という言葉が非常に皮肉めいて聞こえたのが気にかかるものの、艦長席に座っていたといえば僕だろうか。
それにこのままアリサちゃんに応対を任せていると何だか酷くもめそうな気がする。
「あ、あのー。そこの席に腰掛けていたのは僕なんですが……」
「何、君が?」
「え、ええ。まあ」
鋭い視線を受けてドギマギするものの、座っていたことには違いない。
「では誰がパイロットだというのだ。まさかこの少女だとでも?」
「だからさっきからそう言ってるじゃない。あんたたち負けたくせに態度でかすぎよ!」
ぷんすかと怒るアリサちゃんに、ようやく姉妹がいぶかしげな顔をする。
「まさか、本当なのか?」
なぜか僕の方を見るので、僕は仕方なく頷いた。
「そ、そうです。僕たちが、あなた方を撃破しました」
「なんだと!?」
姉が驚き、妹さんの方は細い目をうっすらと見開く。
「そのことに間違いはございません。ですから私がこれまで全て応対していたのですよ」
ドクターがそう言い添えることでようやく信じてくれたようだ。
「で、ではこの少年が、あの悪名高き政治将校だというのか……」
「とても若くて頼りなく見えるのですが、人は見掛けによりませんねえ」
何だろうか。とても嫌な驚き方をされている気がする。
「お、お兄ちゃんはこう見えてとっても頼りになるんだからね!」
アリサちゃんが僕の腕に抱き着きながらフォローを入れてくれたけど、残念ながらそれは火に油にしかならなかった。
「こんないたいけな少女にお兄ちゃんと呼ばせているのか……」
「あの親密そうな感じからすると、昼はパイロットシートの上で戦わせて、夜はベッドの上で違う戦いをさせているに違いありません」
「そうして思想だけでなく身も心も隷属させているのだな」
「まだお若いのにお兄ちゃんプレイでご奉仕させるだなんて、どうやらとんでもない変態性癖を隠し持っているようですね」
ヒソヒソと話しているけど丸聞こえだった。
否定したいけど変態性癖については遺憾ながら反論できない。幼馴染の盗聴と下着ドロは、彼女たちの想像の斜め上を行くのか下を行くのかどっちなんだろうなあ。
僕が遠い目をしながらそんなことを考えていると話し合いはまだ続いていた。
「では我々を生かして捕らえたのは!?」
ハッとしたように叫ぶ姉に妹が残念そうに答える。
「間違いなく、その毒牙に掛けるためかと」
「な、何ということだ。連邦の政治将校の慰み者になるくらいなら、いっそこの命この場で絶ってくれる」
「ダメです姉さん。いくら変態プレイ好きとはいえまだ少年です。何とか出し抜く方策を考えましょう」
「そ、そうは言うが、自分はまだ男を知らぬのだ。その身をこんな奴にいいようにされるなど我慢ならん!」
僕はそんな姉からキッと睨まれた。
「いたいけな少女のみならず、命を懸けて一騎打ちをした相手までその毒牙に掛けて侮辱しようなどと恥を知れ! わ、我らに何かしてみろ。絶対にその首を掻き切ってやるからな!」
「無駄です姉さん。わたくしたちは格納庫に用意されたこの首輪をつけることを既に余儀なくされています。これがある限り、絶対に向こうに危害を加えることはできません」
そう言われて、姉の方が悔しそうに首に嵌められたチョーカーのような物に手をやる。
ドクターの事前説明によると、僕らに危害を加えようとしたりすると痺れる程度の痛みから、気絶や果ては処刑まで自由に行える物騒な捕虜用のアイテムだという。
まあでもそんなものでもないと、僕とアリサちゃんなら容易にこの姉妹に制圧されてしまいかねない。
「くっ、ならばいっそ殺せ! 自分は死んでも貴様をお兄ちゃんなどと呼ばぬし、夜の奉仕とやらもせぬからな!」
「早まってはいけません。相手はまだ少年なのですから、肌と肌を合わせて優しく包み込んであげればもしかしたらこちらになびくかもしれません。あちらがお兄ちゃんプレイなら、こちらは年上のお姉さんや赤ちゃんプレイで優しくあやしてあげればいいのですよ」
「だ、だが自分は…」
「大丈夫です姉さん。ここはわたくしに任せてください。幸いわたくしは子供好きです。飴と鞭でうまく自分好みに調きょ…いえ、教育するのはなかなか楽しいのですよ?」
えーと、それは子供好きというのかな。
「……すまん。お前には、辛い役目を押し付けてしまうな」
「気にしないでください。せめて姉さんだけでも無事なら、わたくしも頑張りがいがあるというものです」
そう言うと僕は妹さんから優しく微笑まれた。
「そういうわけですので、ひとまずわたくしで我慢してもらえませんか。その代わり、誠心誠意のご奉仕をお約束します。姉さんの純潔を人質にわたくしで遊んでみるのもなかなか趣深いと思うのですが、いかがです?」
姉より大きなその巨乳を組んだ腕で下から持ち上げながら、悩まし気な目で僕を見つめてくる。その威力は絶大だった。
僕は誘われるままフラフラと妹さんの方へ…
「お兄ちゃんを誘惑しないで!」
アリサちゃんが僕と姉妹の間に立ちふさがりながらそう叫ぶ。
あ、危ないところだった。天文部への入部の時のように、僕はまたハニートラップに引っかかるところだった。
我に返った僕は慌ててアリサちゃんに続く。
「そ、そうですよ。僕はただ詳しい話をお二人からじっくりと聞ければなあと、そう思っているだけです」
それを聞いた姉が顔色を変えた。
「くっ、我ら二人の体をじっくりと嬲りながら情報を聞き出すだと。やはり若くとも政治将校。その下劣な欲望と尋問の手管からはやはり逃れられぬのか」
アリサちゃんまで顔色を変えて僕に振り返る。
「そうなのお兄ちゃん? やっぱり胸が大きい方がいいの!?」
「ち、ちちち違うよ? アリサちゃんの小さなオッパイもすごく可愛いと思うよ!?」
アリサちゃんがガーンとショックを受ける。
「やっぱり小さいと思ってたんだ……」
「胸であればどんなものでも見境なしか。このケダモノめ!」
「もし大きな胸がお好きであれば、やはりわたくしがお役に立てるかと。姉さんのもなかなかですが、大きさならわたくしの方がやはり上です。
さあ、ここに顔をうずめて存分に甘えていいのですよ? お姉さんでもお母さんでも、好きなように呼んでくださって構いません」
もう何が何やら収拾がつかない。
僕は、3つの異なるオッパイの間でただオロオロとすることしかできなかった。




