透明な神様の居場所
友人と話した「透明人間になったら何をする?」という馬鹿な話と、時々考える「神様ってどこにいるんだろう」という哲学(浅い)。この二つを合わせた不思議系日常物語です。1話完結です。
皆さんは神様を信じますか?ーー
なにもこれは宗教のお誘いではなく、神様とはどこで私たちを見ているのか、それを知りたいだけの物語である。
朝起きると体が透明になっていた。
つまり誰しもが一度は夢に見る透明人間である。服を着るとまるで服が意思を持ち、歩いているように見える。
今日は仕事があるが、こんな状態で行けるはずもなく、休む旨の電話をかけ、部屋のベッドに腰掛ける。
さて、どうしてやろうか。
今まで妄想したことのない人はいないはずだ。覗きや盗み、いたずらなど色々あるだろう。
「あぁ神様!!ありがとうございます!!」
とりあえず家に居ても第三者は居ないため意味はないので外に出ることにする。
当たり前だが服は着ない。外はまだ寒いがなんとかなるだろう。もしこれが自分の勘違いで、透明人間になんてなっておらず、道行く女子高生に通報されたら全力で逃げよう。そう決心し、家から外に出る。
家の外はいつもと変わらない日常だった。平日の朝。学校に行く女子小学生、女子中学生、チャリに乗った女子高生、駅まで小走りするOL、いつも通りである。まぁここに全裸のおっさんはいるが。
どうやら周りの人間にも姿は見えていないらしい。なので、挨拶をすることにした。中学、高校と進むにつれて挨拶を蔑ろにしてしまう傾向がある。やはり挨拶をするなら女子小学生に限るだろう。
適当に、学校に向かって歩いているであろう女子小学生2人組を見つけ、後ろから声をかける。
「あいちゃん。まいちゃん。おはよう!」
最近の小学生は名札をつけていないが、手提げかばんにはしっかりと名前が書いてあった。
「おはー・・・?」
「よう・・・?」
2人はお互いに言葉を紡ぎ、おはようと挨拶を返してくれた。しかしキョロキョロと周りを探しており、誰に挨拶を返したのか、自分達でも分かっていないようである。そしてコソコソと2人で話しているかと思っていると走って行ってしまった。
私は確信した。本当に透明人間になったのだと。
そしてまた考える。何をしようか。
まだ朝であるため温泉や銀行などはまだ開いていない。開いているのはコンビニぐらいであろう。そう思い、コンビニに向かうが自動ドアは開かない。
(なるほど、最近は透明人間に対する防犯もされてるのか)
と感心せずにはいられない。
そうすると他に思いつくのは性的ないたずらである。
これは個人の性癖であり、非常に恥ずかしいのだが、痴漢モノが好きである。
次の行き先は電車に決まった。
改札を通ろうとすると改札のフラップドアが閉じてしまった。
(透明人間でも乗車賃は支払わないといけないのか)
だがしかしお金は一銭も持ち合わせていない。心苦しいと思いつつもそのまま改札を抜けて電車を待つ。時間的にはすでに満員電車のピークは過ぎており、ホームに人はまばらであった。
3分ほど待つと各駅停車の電車が駅に到着した。外から中を物色し、制服を着た女の子を探す。
「電車が閉まります。駆け込み乗車はご遠慮ください。」
アナウンスが鳴り、少し急いで電車に乗る。
その車両ではイスは全て埋まり、各ドアの両端に2.3人の人が立って居た。その中には女子高生らしき子もケータイを弄りながら立っているのが分かった。
さて、痴漢モノの定番といえばお尻を触って徐々にエスカレートして行くものであろう。などと今まで見たAVを思い出し、女子高生に近づく。女子高生はドアの方を向き立っているため長い黒髪しか見えない。手を伸ばし触ろうとする。
やっぱり痴漢をするなら可愛い子にしたいものだと思い、先に顔を覗き込む。普通である。好みの顔ではない。こんな女子高生に痴漢童貞を捧げても良いものなのだろうか...
別に誰にも見られていないのだし、誰かに「お前の趣味悪いな」と言われる心配もないのだが、自分の中の何かが許してくれない。
周りを見れば他にも女子高生はいる。
(ならもう少し物色するか)
そう思い、納得のいく女の子を探した。だが、厳選を重ねるにつれ時間が経ち、気付けば女子高生どころか全裸のおっさん以外いなくなってしまった。
可愛い子が居なかっただけだ。また夕方にチャレンジしようと考え直す。
電車も終点が近くなり、あてもなく降りることにした。そこは人があまり居ない少し田舎風の土地であった。さらに店などは減り、民家が目立つ。適当に散策していると公園があった。滑り台、ブランコ、砂場、水道程度しか無い小さな公園である。
(最後に公園で遊んだのはいつだったかな...)
大人になると公園で遊ぶ姿を見られるのは恥ずかしいだろう。しかし私は遊んでいても透明人間なので、恥ずかしさを感じることはない。そう思い、砂場でデカイ山を作り、滑り台を何度も往復し、ブランコを立ち漕ぎする。何故か少し気恥ずかしさを覚えた。
律儀に水道で手を洗い、ブランコに座り休憩する。また計画でも練り直そうと考え込んでいると、公園の前を杖をついた少女が歩いている。反対の手には菊の花を持っているのが見えた。杖は黄色の点字ブロックの上を左右に動かしている。どうやら目が見えないらしい。
意味もなく目でその子の事を追いかけてしまう。すると間も無くして横断歩道の前に差し掛かる。田舎で車通りも少ないせいであろう。そこは押しボタン式の信号機であり、その事に彼女は気づいていないようであった。私も横断歩道まで歩き、視覚障害者用の押しボタンを押した。すぐに信号は青になり、押しボタン式独特の信号機の音が鳴る。どうやらその事に気付いた少女はこちらの方を向き、
「ありがとうございます」
とお辞儀をする。私の姿は見えていないのであろうが、つい、同じようにお辞儀を返して小さな声で
「いえいえ」
と返してしまう。
周りから見ると少女は誰もいないところにお辞儀をしてお礼を言っている変な人だと思われてしまうだろう。
しかしそれを見ているのは私だけであり、つまり少女も透明人間と対して変わりはない。
人が見ているか見ていないか、それだけで人は簡単に透明になれるのだ。そう思うとわざわざ透明人間になったのだからと犯罪をしに外に出た自分がバカらしくなって帰ろうと決めた。
そのとき
ドサッーー
軽いが確かな質量のある物が落ちる音がする。
横断歩道を渡っている少女が花束を落としてしまったのだ。そのまま横断歩道でしゃがみ込み、花束を探す少女。助けに行こうか悩んでいると、信号は赤に変わり、大型のトラックが走っているのが見える。盲目の少女はしゃがみ込んでいるため、トラックの運転手からは死角になっているらしく、減速する気配はない。
私は必死に訴えた。手を振り、声を出し、人が居ると。けれども透明人間の手は見えず、声も届かない。
(あぁ、透明人間になんてなるんじゃなかった)
走り、手を伸ばし少女を掴む。
もしかするとお尻に触れてしまったかもしれない。
それでも力いっぱい歩道へと少女を押し出す。
鈍い音が鳴り響く。
菊の花が空に舞う。
「あぁ神様は......にいたのか・・・」
そうつぶやき、誰の目にも止まらない私は、世界の背景に溶けて消えた。
こんにちわ。ロリコン美少女紳士の初投稿です。
コンビニの自動ドアは光の反射を感知するらしいですね。多分透明人間では開かないのではないのかと思います。改札は赤外線らしいので透明人間でも反応するのではないかと思います。。。
読んでくれた方がいらっしゃいましたらありがとうございます。
ぜひまた違う作品もupしたら読んでください。お願いします。
作品に対する蛇足的説明です。
透明人間になったらやりたいことは沢山ありますが、それを実行できるかと言われたら私は出来ないと思います。
人間が犯罪を犯さない一つの理由として、他の人に見られる、知られたら嫌だという世間体があるからです。では透明人間の場合はどうでしょうか。誰にも見られることなく犯罪を犯せますか?いいえ、私は私に見られています。
つまり私は神様なのだと思います。私が偉いとかそういうことではありません。
私の中に神様が存在していて私のことを見てくれています。
なので悪いことをすると自己嫌悪という天罰が下るでしょう。いい事をするといい気分というご褒美をくれます。心=神様と言ってもいいかもしれません。
ということを物語を通して伝えてみたかったのですが、いかがだったでしょうか。後書きを読んだ後、流し読みでもいいので本編をもう一度読んでみると違うものがみえるかもしれませんね。