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チョビーと愉快な仲間たち

「どういうことだ!貴様何をした!」

「別に何も。それよりさっきの言葉に嘘偽りはないんだろう?さっさと謝罪したらどうだ」

「この、ガキがぁ!」



先程まで余裕が顔ににじみ出たような舐めきった態度だったのに見る見るうちに真っ赤になっていく。ちょび髭のおっさんの赤面なんぞなんの需要もない。



「反応は間違いなくこの小娘からなんだな!」

「は、はい!そのはずなんですが…」



反応…やはり何らかの発信機と同じ役割を成す魔術か。ちょび髭の甲冑、略してチョビーの質問に答えた騎士は片手にコンパスのような物を持って何度もヨモギとコンパスのような物を見比べている。

それを見てハッとした。



魔術だけでなく魔道具という可能性もあるのか。場合によってはその両方の組み合わせも…。これはなかなか面倒だな。



もし体内に埋め込まれているようなタイプであれば摘出手術のような大掛かりなことをしなければならないだろう。そうでないことを今は祈るしかない。

当事者のヨモギは何が起こったのかわからないが、当面の危機が去ったので少し顔色がましになっていた。



「くっ、こ、こ奴らは珍妙な魔術を使うぞ!全員で捕縛しろ!抵抗するようなら殺して構わん!!」



やっぱりそう来るか。向こうは恐らく上の命令でここにやってきたはず。逃げた奴隷一人を魔道具をつかって捕まえることもできない。しかも相手はまだ小さな子供。そんな簡単な任務すら失敗するような奴は俺ならいらない。変わりはいくらでもいるだろう。そうなれば、何が何でもヨモギと俺を罪人として連れて行きたいだろう。

数人が馬から降りてこちらに向かって走ってこようとする。だが遅い。

イメージを構築する。

俺から見て敵は一直線に並んでいる。ご丁寧に巻き込みたくない町の住人は退かしてくれた。これなら制圧は簡単だ。

かがんでヨモギとつないでいない方の手を地面に触れさせる。

その瞬間そこからまっすぐ奴らに向かっていくように地面を氷が這っていった。

次々と地面は凍っていく。それは当然地面についていた兵士や馬の足もろとも氷漬けだ。



「ヒィ!?なんだこれ!あっ足が動かねぇ!」

「いてぇ!足がぁ!」



馬も必死に体を動かそうとしてチョビーをはじめとした馬に乗っていた兵士たちが地面に振り落とされる。



「ぐあっ!?な、なんだこれは!?き、貴様の仕業か!卑怯者め!」



氷につるつると滑り、足を取られながらも必死にこちらに向かって剣を振り回してくるチョビー。

ひどく哀れだ。



まぁ、まだ終わらないんだけどね?



これまでわざと脱いでいたローブの胸の部分を強調するように掲げる。



「アニアス家の、紋章を、なぜ、貴様が」



事態を理解できていないチョビーが途切れ途切れに言葉を吐く。



「俺はアニアス家に仕えるものだ。そしてこちらにあらせられるはアニアス家現当主のご息女、アイセア・アニアス様だ。数々の無礼な発言、忘れたとは言わせない」

「な、なにを、貴様は何を言っている!そ、それはっ、貴様がアニアス家に仕えている者から奪ったのだろう!!この大罪人めが!この私自ら殺してくれるわ!!」



唾を飛ばしながら歪んだ必死な形相で喚き散らすチョビー。



「あなたがどう思おうと関係ありません。私への言葉以外にも、いろいろとお父様にはご報告させていただきますわ」



ここでアイセアからの追撃。どうやら今回の彼らの振舞にはアイセアもかなりご立腹のようだ。



馬鹿な、馬鹿な、という単語を小さく何度も何度もパクパクと繰り返す様子はさながら酸素を求める金魚のようだ。









その後に報告を受けてやってきた屋敷の兵士たちに連行され、チョビーたちが連れて行かれる。



「ふぅ、何とかなってよかった」



いろいろと危ない橋を渡った気がするが、何はともあれみんな無事に終わってよかった。



「急に喧嘩売りだしたときはどうなるかと思ったのよさ」

「私はカグヤさんならきっと何とかしてくださると信じていました」



さっきまで静かすぎるほどに黙っていたルーが急に元気になってしゃべりだす。そしてその俺への過度な期待はいったいどこから来るんだアイセア。



「で、でも私の耳としっぽはどこに行ってしまったですか?いつの間にか跡形もなくなくなっちゃってたです」



俺とつないでいない方の手で耳があったであろう頭としっぽがあったであろうおしりのあたりを交互にさすっている。

ヨモギは俺の手を先程からずっと握ったままだ。自分から握った手前離してくれとは言いずらい。

正直言ってさっきは勢いに任せて手を握ったが、今になって落ち着いてくるとだんだん恥ずかしくなってきた。



あの時は完全にあいつらのせいで頭に血が上ってたからな…。ほんと、慣れないことをするもんじゃないよなぁ。



でもケモミミ美少女(今はついてないけど)の柔らかい小さな手を握れる機会なんてそうそうないので恥ずかしさは多少我慢して役得と考えることにした。



「あの時のあれは…まぁ、魔術だよ」

「それはわかっているです。魔力を感じましたですから」

「え?もしかしてヨモギって―――」

「はいです!魔術を使えます。といってもまだまだ"兄さん"みたいなすごいのはできないですけど…」

「そ、そうなの?」



予想外にいい拾い物をしてしまった。魔術を使える者は少ない。おそらく王都にいたヨモギの所有者かその関係者がわざわざこんな遠いところまであんなちゃんとした遠征部隊を組んでやってきたのはそういうことだったのだろう。魔術で多少抵抗されてもいいように、ということだ。そうでなければこんな子供一人にあんな人数はいらない。

それにしてもなんだか気になるところがあった。

ヨモギの兄の話だよな。なんで兄さんの時だけ俺の顔を見つめて少し顔を赤らめるんだ?



まさか、まさかね。



もしやと思い、本人に確認を取る。



「も、もしかしてだけど、兄さんって――」

「はい!カグヤ兄さん!お願いです、私に魔術を教えてください!」



ズキュゥゥゥウン!!!!!!!!!



自分の名前で「兄さん」と言われた瞬間俺のハートが何かに撃ち抜かれる音がした。



「よし、妹よ。俺は厳しいぞ」

「はい!カグヤ兄さん!」




妹ができました。





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