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就職

前回とは違い、巨大な扉がある応接間ではなく、今回は本人がデスクワークをしている寝室に赴く。

ここに来た理由は一つ。朝の話の答えを告げるだためだ。

俺はここに来るまでに俺の懸念に対する仮説を立てようとした。

しかしそれには情報が圧倒的に足りていなかったのでこの世界の情勢についてあのあと図書室に行って少し調べ物をしたのだ。収穫は予想していたよりもはるかに多かった。それにその数注力の副産物のおかげか別の収穫もあったしな。

まずは俺はこの世界の力の平均がわかっていなかった。

それを考えるにあたってまずこの世界の世界情勢を知る必要がある。今いる大陸、エウロ大陸は世界最大の大陸であり、主に人間と魔族が収めている土地に二分されている。境界線はこの大陸を物理的に二分している巨大な山脈だ。

この世界、いや、人間には大きく分けて二つの戦力がある。国に所属する騎士たち、ギルドに所属する冒険者たちだ。基本的に冒険者たちはモンスターを相手にする仕事が多い。それに対して騎士たちは魔族との戦闘を前提に訓練している。ここで重要になってくるのはこの世界の仕組みだ。この世界はモンスターなどの敵を倒すことで経験値を得てレベルが上がる。それとは別に魔力や腕力は向上させるすべがあると思われるが今はとりあえず置いておこう。確かに訓練も強くなるための手段として間違ってはいない。この世界の強くなる仕組みは俺が元いた世界とゲームの世界をごちゃまぜにして2で割ったような印象を覚える。体を鍛え、素振りをしてもきっと強くはなれる。しかしモンターを倒してレベルを上げたほうが間違いなく効率がいいだろう。

例えば全く同じ能力を持った二人の人間がいたとする。一人は街の外へモンスターを狩りに。一人は城の敷地内で訓練する。二人共同じ時間頑張ったとしてもレベルがあがるであろう街の外に出た方が強くなるはずだ。事実俺もこの間の盗賊を倒して大幅にレベルが上がって以来筋力や魔力の能力の上昇を感じていた。おそらくステータスカードに表示されているステータスとは違うステータスが存在しているはずだ。

それはこの間フィーナが俺より細い腕で俺より重い荷物を持ち上げていたので間違いないと思う。

…多分。



フィーナは無表情なせいか考えていることも読めないし、魔術もどこまで出来るのかわからないからレベルがいくらかもわからない。聞けば教えてくれるかもしれないが、この世界でレベルは個人情報、必要もないのに気安く聞いてしまっていいものかと少し不安になってしまう。



いかんいかん、長年の暗黒生活で悪い方向にばかり考えてしまう癖がついてしまっている。

そうすると住民の依頼で盗賊を討伐するのは基本的に国に使えている兵士の仕事ではあるが、たまに盗賊を倒している少し上の位の騎士ならまだしも訓練ばかりの兵士はろくに戦えないことになっている。



こんなんでもしほんとに魔族が攻めてきたら戦えるんだろうか?主戦力は冒険者で国の兵士たちの大半は脇のほうで生まれたてのこじかのごとく涙目でプルプル震えているなんてことになってしまいそうだ。



例外もないこともないようだが、そのせいで今の力のバランスはこんな感じになっている。


下位の兵士<E/D冒険者<上位の兵<王都の騎士<S/A/B/C冒険者<聖騎士



王都の騎士は定期的に魔族との国境線である山脈に定期的に訪れ、小競り合いを起こしているらしい。

なぜお偉いさんがわざわざ行くのかはわからないが、魔族もおそらくそれなりの力の者が国境を警備しているんだろう。

アイセアは国側の人間だ。国の兵士に襲われることはない。それなら俺の魔術を駆使すれば守りきれないことはそうそう起こらないだろう。



いろいろ考えたが要するに俺は自分が失敗するのが怖くて調べただけだ。流石にこれ以上は少しかっこ悪い。そろそろ覚悟を決めよう。



「カグヤです」

「来たか。うむ、入れ」



扉越しに返事をもらいガチャリと扉を開ける。中に入ると正しく書斎といった様子で、そこら中に様々な資料が並べられており、壁には大量の本が並んでいる。街に行った時にこの世界の技術レベルでは紙はもちろん、本が高価なものであることは既に知っている。それがこれだけあるというのはさすがはあれだけの都市を運営している領主ということだろうか。



「ん?そんなに本が気になるか?だがそれらはほとんどが年の運営の記録などの記録書だ。お前が面白がれるような魔術関連は図書室の方が多いと思うが」

「そうでしたか、それは是非見てみたいですね」

「ふん、では答えを聞こうか。お前がここに来たということは答えが朝に依頼したアイセアの家庭教師と護衛の仕事の答えが決まったからだろう?」

「はい、ぜひ受けさせていただこうかと」

「ふ、そうか。それは良かった」



普段から少し険しげな表情が少し緩む。おそらくあの表情は意識してああなっているのではなく素なんだろうけど。



「私はお前が受けると信じていたがな」

「失礼を承知で言いますが、どうしてそこまで信用してもらえるんですか?俺がアイセアを助けたとはいえ俺のことを信用しすぎなのでは」

「ふむ、そうか。お前にはまだ説明していなかったな。お前を私が信用したというのには二つ理由がある。一つはアイセアがお前を認めていたからだ。もう一つは―――」



そこまで言いかけるとコンコンとノックの音が響く。



「入れ」

「失礼します。イグニス様、お時間です」

「そうか、カグヤ、この話はまた今度近いうちに話そう」

「わ、わかりました」



メイドは俺に一例すると部屋を出て行くイグニスについていった。





結局何が理由でここまで信頼してくれているのかは分からずじまいか。そっちも気になるが、その他にもいま気になっているものがある。ローブの内側に手をいれ、ズボンのポケットからステータスカードを取り出す。身分証がわりになる上、正しく今興味を惹かれているもうひとつのものがこれなので普段から持ち歩いているようにしている。このカードの書き方はどこかおかしい気がする。これを作ったのがどんな人かはわからないが、書き方があやふやすぎる。例えば俺の魔術、創造者クリエイター




・創造者

この魔術は術者の魔力を消費し、ありとあらゆる物を作り出すことが出来る。

魔力の消費量は精密さや大きさに比例して大きくなる。

また、作り出す物は術者がその構造について深く理解していなくてはならない。




余りにも規定がアバウトすぎる。

ありとあらゆるとはどこまでを指す?理解していなくてはいけない、どこまでだ?

俺はこれらの記述はわざとあやふやにされているのではないかと考えている。例えば『アイスボール』の件だってそうだ。魔術を『インプット』したらそれに反応して創造者としてではなく普通に魔術として『アイスボール』を使える様になった。こういった抜け道、バグのようなものがほかにも存在しているのではないかと考えている。今考えている抜け道を使えばちょっとした金稼ぎもできるだろう。

やりたいこともやれることもまだまだあると思うと自然と頬がゆるんだ。



「明日もいい一日になる」



そう呟いて意識を手放した。





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