異世界にて目覚めました
体が痛い――しかもなんだか寒い――
昨日もしや部屋の窓を閉め忘れていただろうか。そろそろ冬も近づいて来るこの季節。部屋の換気をしている最中に布団の上で寝落ちなんかしようものなら次の日は間違いなく風邪ひきコースだ。
にしても布団固くないか?しかもなんか眩しいし。それになんだか騒がしい。
「ったくなんだよ朝っぱらからよー…」
重い体をゆっくりと起こし目を開けるとそこには―――
石畳の美しい街が広がっていた。
「――なにこれ…」
はじめまして皆さん。俺の名前は天草輝夜。ニートやってます。
気がついたらよくわからないところの石橋の上でパジャマで寝てました。
これからは心を入れ替えて異世界で仕事探していきたいです!
「ってなるかぁああああああああ!!!」
急に大きな声を出したせいで周りの通行人に驚かれ、ガラの悪い獣人(牛?)に思いっきりにらまれる。
「ひぃ!ま、ま、まじすぅいませぇん…」
男は「チッ」と舌打ちをして人ごみに紛れて行った。
辺りにはカエルのような顔をしたローブ姿の男(?)や背中に大きな剣を背負った大男なんかが当たり前のように歩いている。
どこを見ても俺の知っているスーツや制服のような服装をしている人物はいない。
むしろほかの通行人から俺が変な目で見られる始末だ。
正直言って一秒でも早くここから家に帰りたいんだが…。
「ほんとどうしたらいいって言うんだ…てかなんで俺がこんな目に…。」
着ているパジャマ以外は全く何も持っていないまさに着の身着のままでこんなことになった時点でもうバッドエンドの香りしかしない。
寝るときに枕元で充電してあったであろうスマートフォンなんかも俺が寝てる周囲にはなかったということはもしこれが本当に異世界転移なら俺本人以外は全部むこうに置いてきたことになるんだろうか。
そう考えると惜しい。惜しすぎる!!
というか普通はもっとこう…あるはずだと思うんだ。
可愛らしい女神様や長いヒゲを生やしたじいさんが神々しく出てきて「あなたは勇者に選ばれました」的なことを言われて強い剣やら魔法の才能をもらえるものじゃなかろうか。
そう考えると不安と同時にこの扱いのひどさに怒りが沸いてきた。
「なんでパジャマなの!?せめてジャージにしてくれよ!あと靴もな!」
「はぁ…ほんとどうしてこんなことになってんだか…」
とぶつくさ言いながらも路地裏に退避する。
長らく引きこもっていたこの身に日光とあの目線は辛すぎた。
路地の奥に誰もいないことを確認して日陰に入る。
人目につかないところで腰を下ろすとなんだかどっと疲れが沸いてきた。
「はぁ…ほんとにこれからどうしよう」
上を見上げると腹立たしいほどに雲一つない青い空が広がっていた。
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