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異世界に来たが、どうやら俺の武器は炊飯器らしい  作者: みっトン
第二章 炊飯器でダンジョン攻略するのは間違っているだろうか
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第二章3 『バトル脳』

「波動檄!」


火煉檄(カレンゲキ)ッ!」


 リューシャと青年の間に強い衝撃が発生し、酒場に轟音が響き渡る。

 その轟音を掻き消すように、二人は叫んだ。


 リューシャの体が橙色に光り、強力な破壊力を持って青年とぶつかる。

 一方青年も火の魔法、波動を混合させた気を体に纏い、迎撃。



「リューシャさん!」



 リョウも助太刀しようと、炊飯器を召喚。

 だが、攻撃には踏み出せない。



「駄目だ、リューシャさんにも当たっちまう!」



 炊き込みは全体攻撃、狙った相手だけにダメージを与えることは出来ない。

 二人が密着している今、この技を使えばリューシャも無事では済まないだろう。

 おそらく、セティアの魔法も。



「かと言って殴り合いじゃ足手まといにしかなんねーし……」



 リョウは修行したと言っても、一般人の域を出ない。

 少なくとも肉弾戦では。

 ここは、見守るしかない。



「名前教えてくれよ! オッサンつッたら怒るからよ!」


「まずは自分から名前を言うのが礼儀というもんじゃろうがぁ!」



 会話をしながら激しい殴打が二人の間で巻き起こる。

 だが両者一歩も譲らない。

 既に、リョウが知らない次元の戦いだった。



「タイト! 言ッたぜ! 次はオッサンの番!」


「ワシはリューシャ――では、行くぞい!」



 リューシャは更に拳の速度を早める。

 タイトと名乗った青年は一瞬それにたじろぐが、すぐに順応。



「やッぱオッサンつえーな!? やべ、またオッサンッて言ッちまった!」


「どうやらキツイお仕置きが必要なようじゃのう!!――剛双・波動拳!」



 リューシャの両腕に波動が凝縮され、莫大なエネルギーを蓄積。

 それを一気に、タイトの胸部目掛け殴り付けた。

 だが、それは失敗に終わる。



「ッぶねー! 今死んでた! ぜッてー死んでた!」



 タイトは体を球のように丸め、後ろに回転し一撃を回避。

 だが、リューシャは追撃を緩めない。



「おおおおおおお!」



 未だ波動を纏った拳。

 それを当てる為、タイトに迫る。



「ッしゃあ! 本気ィ!! 爆! 烈! 拳!」



 タイトの体から紅蓮の炎が溢れだし、タイトの拳に集中。

 その拳を以って、リューシャを迎え撃った。



「フゥン!」


「おらァ!!」



 二人の拳が触れた瞬間、拳を起点に爆発に近い衝撃が発生。



「アクリル!」



 セティアがすかさず水の防御魔法を唱え、爆風を防御。

 爆風が納まるまで、セティアとリョウはただリューシャの無事を信じるのみ。

 セティアが祈るような声で、リューシャの無事を案ずる。



「リューシャさん……」


「大丈夫、リューシャさん滅茶苦茶強いから」



 リョウは道中、修行を通してリューシャの強さを間近で見てきた。

 リョウが神器を覚醒させた時は流石に勝ったが、それ以外は全敗。

 炊飯器の攻撃をも耐え切るリューシャが、易々と敗れるはずが無い。



「……っ! 見えた!」



 爆風が納まり、二人の影が(アラワ)になる。

 両者とも健在――かに思えた。

 


「――次はマックスでやろーな! オッサン!」


「っぐ……ゴハッ」



 リューシャが倒れ込む。

 それは、リューシャの敗北を意味。



「てめぇ……」


「もやし! もしかしてお前がつえー奴!?」



 タイトは尚も快活な声で喋る。

 リューシャがやられた事も有り、リョウはそれが挑発にしか感じ取れない。



「オラクル!」



 炊飯器を召喚し、投擲。



「スゲーな! どッから出したんだよ!?」



 だが戦い慣れしているであろうタイトは、軽々と回避。



「俺に勝ったら教えてやんよ」


「お! 言ッたな!?――炎刃(エンジン)!」



 タイトの右手に火の刀が生成される。

 


「それと俺の武器、交換してくれね?」


「もやしが持ッたら火傷すんぞ!? らァ!」



 タイトが炎刃を振り下ろすと、炎の斬撃が発生。

 焼き切ろうとばかりにリョウへ襲い掛かる。



「オラクル!」



 だがリョウも炊飯器で対抗。

 斬撃に向かって炊飯器を投げた。


――炎の斬撃と、神器もとい炊飯器のぶつかり合い。

 傍から見れば勝つのは間違いなく斬撃。

 だがこの炊飯器、ただの炊飯器では無い。神器である。



「もやし、つえーな!?」


「どーも、ここらで引き返してくれね?」



 炊飯器は斬撃を打ち破り、勢いを保ったままタイトを襲った。

 だが、タイトはそれを回避。

 予想外の一撃を喰らわせるつもりだったが、それは失敗に終わった。



「俺はつえー奴と戦いてーの! だからここに来たんだ!」


「ん? じゃあ俺らの事知らない感じ?」



 リョウはてっきりタイトはゴロツキ達の仲間と思っていたが、それは尚早の判断だった。



「ん? つえー事以外知らねェけど?」


「だったらマジで引き返してくんね? あんまここ居んのマズいんだわ」



 であればリョウに戦う理由は無い。

 元はリューシャが奇襲をして始まった戦いだ。敵討ちをする必要も無いだろう。

 だが――



「俺はよ、つえー奴と戦いたいから、ここに来たんだ」


「ん? ああ」


「だからそれは無理! オッサンだけじゃ満足できねェ! もッとつえー奴と戦いてェ! つえー奴が目の前に居んなら、俺は戦いてェんだ!」


「……戦闘狂タイプかよ……」



 タイトはあくまで戦いに来た。

 そこには邪の気持ち、善の気持ちなど存在しない。

 自分が戦いたいから、戦うのだ。



「もやし! 本気で来いよ!」


「当たり前だろ、じゃねーと勝てねぇよ」


「リョウさん……」


「セティアちゃんはリューシャさんの手当てを頼む、それ邪魔する奴じゃねぇのは間違いない」



 気付けば、タイトはリューシャからかなり距離を取っていた。

 それはリョウが全力で戦える為の配慮だろう。

 だが、それに感謝する必要はない。



「こねェならこッちから行くぜ! 大炎刃(ダイエンジン)!」



 炎の剣が肥大化し、更に力を増大させる。

 そしてリョウに接近、炎の大剣で焼き切る為に。

 

 

「オラクル!」



 リョウも迎撃の為炊飯器を召喚。

 米、土の魔法石を入れ、投擲。



「レイズ!」


「うォ!?」



 雨の如く降り注ぐ岩々が、タイトの進行を防ぐ。

 


「オラオラオラオラァ!」



 それは気休め。

 炎の大剣を振り回し、小岩を薙ぎ払うように吹き飛ばしていく。



――だが、一瞬の隙さえあれば十分。



「うおおおおおおお!!!!!」



 暗唱で炊飯器を召喚。

 そして神器へと覚醒させる為、爆発的な勢いでマナを流し込む。



火煉斬(カレンザン)!!」



 タイトがリョウの間近に迫り、切りかかろうと――



「ん、だ、と!?」


「条件付きの、チート武器だ」



 タイトの剣撃は、神器へと覚醒した炊飯器によって防がれた。

 その(オビタダ)しい魔力を感じ取ったのか、流石のタイトも顔をしかめる。



「一瞬で終わらせっぞ」



 大角へと変形した神器を一振り。



「おわッ!?」



 タイトを炎剣ごと薙ぎ払い。

 そして――



「バースト!」



 魔力の蒸気を、タイト目掛けて噴射した。

 その蒸気は、魔法石に込められた魔力とは比較することも出来ない圧倒的な魔力。

 リューシャ曰く、上級魔法を凌駕する魔力が凝縮されているとのこと。

 


「剛・火炎弾!」


 火炎の大玉を、蒸気にを掻き消そうと放たれる。

 タイトの苦し紛れの迎撃。

 だが、魔力の蒸気はそれを何事も無かったように消し去り、



「があああああ!」



 タイトを呑み込んだ。

 文字通り、リョウは一瞬でケリを付けた。

 だが、

 


「さて……マジでこっから出ねーと」



 覚醒は今有る全てのマナを消費する。

 調整は不可。

 それ故、覚醒終了後は完全に無防備になるのだ。



「セティアちゃん! 早く逃げよう! リューシャさんは大丈夫!?」


「いえ、まだ歩ける状態では……!」


「……ワシを置いて逃げるのも手じゃぞ」


「却下で。つかそれ俺に言います?」



 リューシャを置いて逃げる訳には行かないが、ゴロツキ達が戻ってくるのも時間の問題だ。

 一体どうやってリューシャを運ぼうか考えていた所――



「もやしィ……やるじャねェか……!」



スランプ中ですが、頑張ります。

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