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第四話

 門番に話しかけてみたのだが、どうやら言葉は通じるようだった。


「それが、身分を証明出来る物を持っていなくて……」


「分かりました、それではお金をお支払いいただきます」


 困った、俺はお金を持っていない。

 それどころか何一つ持っていないのだ。


「すいません、お金も持っていなくって……」


「そうですか…………その魔物はあなたのですか?」


 魔物? あぁ、この猫のことか。

 というか、この世界には魔物がいるのか。


「はい、まぁ、そんな感じです」


「もしかして、冒険者になろうと思っていませんか?」


 どうしようか、ここで、いえ違いますって答えてもなぁ。

 ここは話を合わせておこう。


「はい、そのつもりです」


「それでしたらお金のお支払いは、後日で結構です」


 なんと! お金を払うのは後日でいいのか!

 でも、どうしてだろう?

 一応理由を聞いておこう。


「えっと、どうして後日でいいんですか?」


「冒険者になりに、冒険者ギルドに行かれるんですよね?」


「はい」


 おっと、冒険者ギルドまであるのか。

 いよいよファンタジーの世界じゃないか


「冒険者ギルドで初めて登録した時に、2万ゴールド貰えるんですよ。 ですので、そのお金から支払って頂きます」


 なるほど、そういうことか。


「ちなみに、いくらなんですか?」


「あぁ、言い忘れていましたね、すいません。 一人分の5千ゴールドと、魔物一匹分の1万ゴールドで、合わせて1万5千ゴールドです」


「分かりました、ありがとうございます。 それと、冒険者ギルドの場所はどこでしょう?」


「この大通りを真っ直ぐ進んでいただくと、噴水の在る広場に出るのですが、それを右に進んだ先の突き当たりに在ります」


「なるほど、ありがとうございます」


「すいません、これも言い忘れていたのですが、料金を十日間お支払い頂けない場合は、犯罪者になってしまうので忘れないで下さいね」


「はい、分かりました」


「サラノーラの街へようこそ、それでは、お気を付けて」


 絶対に払おう。

 そう決意して、俺はギルドへ向かった。


 ギルドに向かっているのだが……

 

 なぜか、とても見られる。

 服装か?

 でもそんなに変な服装はしていない。


「にゃ~~~~」


 あ、分かった、完全にこいつだ。

 あの門番は何も言わなかったが、魔物を連れていることは、よほど珍しいことなのだろう。

 他に魔物を連れて歩いている人は、一人もいなかった。

 欠伸なんてしやがって。

 まったくのんきなやつだ。


 そういえば、冒険者という言葉を聞いて浮かれていたのだが、ここは本当に異世界なんだと驚かされることがあった。

 なぜなら、頭から耳が出ている人を見かけるからだ、頭から耳が出ているというか、頭に耳が生えている。

 動物の耳が。

 犬みたいな耳の人も居れば、ウサギのような耳の人も居る。

 尻尾も生えている様だ。

 耳と尻尾が生えていることを除けば、いたって普通の人間だ。

 それに……こちらの方がビックリしたのだが。

 人間サイズの動物が、立って歩いている。

 犬、猫、鳥、熊、ウサギ。

 俺の横で、のんきそうにしている猫なんかよりデカイ。

 獣人。

 そんな言葉が頭に浮かんだ。


「異世界……最高……」


 どれだけ俺得なんだろう。


 触りたい……

 あの耳を触りたい……

 もふもふしたい……

 そんなことを考えていると。


「にゃあ!」


 ばしっ!!


「いてっ! なにすんだよ!」


 猫パンチをされた。


「にゃあ」


 まるで、早くギルドに行こうと急かしているみたいだ。


「分かったよ、さっさと向かえばいいんだろう?」


「んにゃあ」


 もう少し獣人達を眺めていたかったが、それは後にしよう。

 俺は早足でギルドへ向かった。


 噴水の在る広場を右に曲がり、突き当たりに着くとそこには、三階建てのレンガで出来た建物があった。

 他の建物と比べても、この辺りでは一番大きな建物だと思う。

 玄関の上には、二つの剣が交差している看板が掛かっている。

 おそらく、ここが冒険者ギルドなのだろう。


 ギルドの中に入ってみると、他の冒険者達が談笑している光景が目に入ってきた。

 しかし、俺達の姿が冒険者達の目に入ると、皆静まり返ってひそひそと何かを喋り始めた。

 魔物を連れているのがそんなに珍しいのだろうか。

 皆が俺達を見ている。

 嫌な感じだ。

 どうやら、歓迎されている様ではないらしい。

 

 トラブルはごめんだ。

 そう思った俺は、さっさと用事を済ませるためにギルドの受付に向かった。

 

 ギルドの受付には、優しそうな雰囲気を漂わせているお姉さんが居た。

 近づいてみると、なんだか良い匂いがした。

 ライトグリーンの腰までありそうな長髪、クリッとした丸い瞳、そして……

 デカイ。

 思わず目が釘付けになってしまった。

 あんなに大きいのは初めて見た。

 いまにも服から零れ落ちそうではないか。

 お姉さんの胸を凝視していると。


「冒険者ギルドへようこそ! 何かご用でしょうか?」


 そう言って優しく聞いてくれた。


 慣れているのだろう、嫌悪感は感じられなかった。

 男なら絶対に見てしまう。

 仕方ないのだ。

 目が勝手にそこに向かってしまうのだ。

 目を逸らすことは難しいだろう。

 きっと、このギルドにいる冒険者達もそうだと思う。

 幾つもの修羅場を潜り抜けてきた猛者達ですら容易い事ではないはずだ。


 しかし、あまり見詰め過ぎるとこの女性に失礼かもしれない。

 なんとか目を逸らすことに成功した俺は。


「えっと、冒険者になりたいのですが」


「分かりました、それではまず初めに、冒険者登録をして頂きますので、この用紙に必要事項をお書き下さい」


 よし、なんとか第一関門は突破できた。

 冒険者になるのがこんなに大変だとは知らなかった。

 ただ胸から視線を逸らしただけだけど……

 

 どれ、用紙に必要事項を書いてみよう。

 必要事項はこうだ。


 名前

 年齢

 出身

 冒険者になる目的

 

 この四つだった。


 名前は、織部 優と書くとして。

 ん? 待てよ? 苗字が有るのは貴族だけ、とか無いよな?

 もしそうだとしたら、驚かせてしまう事にならないか?

 まぁ、気にしていても仕方ないか。

 年齢は23歳で大丈夫だろう。

 少し、冒険者になるには遅い気もするが。

 冒険者になる目的は、生活に必要なお金を稼ぐため、と書いておけば問題ないだろう。

 さて。一番の問題は出身だ。

 出身か……

 まさか、異世界なんて書く訳にはいかないよな。

 ニホンと書いておくことにした。


「書けました」


「はい、それでは確認いたしますね。 名前は、織部 優様でよろしいですね?」


「はい」


「出身もあまり聞いたことがない地名ですね……」


「とても遠い所から来まして。 聞いたことがある方が不思議なくらいの田舎なんです」


 聞いたことなんてある訳ないよな、だって、異世界にある国の名前だもの。


「そうですか……分かりました、これで大丈夫でしょう。 それでは次に、こちらの水晶でステータスを調べさせて頂くので、この水晶玉の上に手を置いて下さい」


 おお、次はステータスか。

 ここまでチートアイテムとか全く無かったし、もしかしたら、俺のステータスが異常に高い事もあるかもしれない。

 楽しみだ。

 俺は水晶玉に手を置いた。


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