第一話
拙い文章になってしまっていないか心配ですが、お手柔らかにお願いいたします
「――おばあちゃん! ――おばあちゃん! ねぇ、聞いてるの?」
「そんなに大きな声を出さなくても、ちゃんと聞こえてるわよ」
「寝る前に、いつものあのお話聞かせてくれない?」
「またあの話かい? よっぽど好きなんだねぇ」
「うん! 私、あのお話が大好きなの! だから、ねぇ、いいでしょ?」
「分かった、分かった、じゃあ早くベッドに入りなさい」
「やったーー!」
「じゃあ、話し始めるよ?」
「うん!」
「むかし、むかし、あるところに――――――
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俺の名前は、織部 優、23歳、しがないサラリーマンである。
日頃から上司に、仕事の嫌味を言われ続けて、気が滅入っていた。
小さい頃は、将来動物園の飼育員になりたいと思っていたのに……
いつからだろう、夢が無くなったのは……
こんな事を考えていても、もっと気分が落ち込むだけだろう。
そうだ! 久しぶりにあの場所へ行ってみよう。
懐かしいなぁ
昔は、家族とよくここに山登りに来ていた。
俺にとっては思い出の場所だ。
ここは全然変わってないな、良かった。
近頃、この山付近に高速道路が出来ると聞いていたのだが、どうやらまだのようだった。
そろそろ暗くなってくる頃だろう、急ぐことにしよう。
そこに着いたころには、辺りは段々暗くなり始めていた。
そことは、山の山頂にある展望台である。
この場所からみる星空が、俺は大好きなのだ。
綺麗な星空を見れば、明日からまた頑張れるような気がしたのだ。
ん? なんだ、先客か……
女性が一人、展望台にある木製のフェンスの近くに立っている。
一人で楽しみたかったのだが……
まぁ、いいだろう。
だれかとこの星空を共有するのも悪くない。
辺りが真っ暗になったので、女性がいた場所から少し離れた所で俺は星空を堪能することにした。
さぁ、そろそろ帰るか。
綺麗な星空に満足した俺は、家に帰ることにした。
そういえば、あの女性はどうしたのだろう。
さきほど女性がいた辺りに近づいた俺は、ふと気になって立ち止まった。
もう帰ったのだろうかと思ったが、まださきほどと同じ場所にその女性はいた。
だが、様子がどうもおかしい。
どうやら、蹲って震えているらしい。
「あの、大丈夫ですか?」
返事は無い。
気分でも悪いのだろうか。
「気分が悪いのでしたら、肩でも貸しましょうか?」
そう言って近づいてみて分かったのだが、どうやらその女性はフェンスの向こう側にいるらしい。
フェンスの向こうは崖になっていたはずだ。
「そんな所にいると危ないですよ。落ちてしまったら大変です。」
すると、急に女性が立ち上がって崖の方に歩き始めた。
先ほどまで暗くてよく見えなかったのだが、女性の足元には靴と手紙の様なものが置いてある。
あ、これってもしかして……
身投げか?
そうだ、絶対にそうだ、足元に靴と手紙まで置いてあるのだ、もしかしなくても身投げだろう。
最悪だ。
気分転換に思い出の場所に来ているのだ。
なのに、こんなものを見せられてはたまったもんじゃない。
見せられるこっちの身にもなってみろってもんだ。
そんなことをかんがえている内にも、女性は歩を進めていく。
「くそっ!」
絶対に止めなきゃ
急いでフェンスを跨っていたところで女性をみると、女性は崖から足を出しているところだった。
フェンスに跨ったまま女性の腕を力強く引っ張った。
力強く引っ張りすぎた俺はバランスを崩してしまい、女性と入れ替わるように、崖に身体が投げ出されてしまった。
あ、やべ……
バキッッ
痛い、体が思うように動かない、足も折れてしまっている様だ。
生暖かい、血だ。
あんな高い所から落ちたんだ、血ぐらい出るだろう。
俺、死ぬのかなぁ……
不思議と怖くはなかった。
つまんない人生だったなぁ……
もし生まれ変われるなら、楽しかったって思える人生にしたいなぁ……
俺の意識は沈んでいった。