走るファイヴミニッツ1
『おい、早く来い!』
寝ているところを電話で起こされ、若干イラつきながらも応対する。
「は? どこにだよ? 一体何があったんだよ?」
『学校に決まってんだろ。江川の授業、お前もう四回休んだだろ。今日来なかったらアウトだぞ!』
「……今日は木曜だろ?」
『バカ! 今日は月曜日課だ』
その言葉を聞き、頭が一瞬にして冴え渡る。マズい。この単位を落としてしまったら、また一歩、卒業から遠ざかる。
「すぐ行く!」
『急げよ。後五分がリミットだ』
通話を終える。
既に布団からは飛び出していて、近くに置いてあった服を身につける。携帯電話をポケットに入れ、床に無造作に転がしていたバッグを肩にかける。どうせ中身を出すことなんてない、辞書と教科書とノートは入っているはずだ。鍵もかけず、靴も踵を踏んだまま部屋を後にした。
アパートの階段の部分には屋根がなく、おそらくは昨夜の内に降ったのだろう、雪が積もっている。多少怖いものの、今は一分一秒を争う、一段跳ばしで駈け降りた。
自転車に跨り、全力で漕ぐ。さすがに道路の雪は解けている。目の前の信号は青。運が俺に味方している。俺はそのままスピードに乗った。
右折してくる車に気もつかず。