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ゆりこめ ~呪いのような運命が俺とあの子の百合ラブコメを全力で推奨してくる~  作者: 緑茶わいん
三章 俺と彼女と大天使の試練

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決戦

 閃光のごとき光の原因は、真昼の周囲へ無数に発生した光の矢だった。その数は中央にいる真昼の姿を覆い隠すほどだ。

 そして、光である以上は目くらましの効果もある。

 真昼本人は少しも動かないまま、矢が次々と紗羅たちへ降り注いだ。


「みんな……」


 俺の隣で世羅ちゃんが心配そうに呟く。

 一対多、しかも相手が自分を取り囲んでいる状況なら、あの攻撃は有効だろう。真昼から見れば他に味方はいないのだから、全方位に撃ち込むだけでほぼ確実に敵に当たる。

 まして、あの数では回避や反撃も難しいはず。

 ――何の準備も対策もしていなければ、だけど。


 ……真昼との戦いについて、紗羅たちは俺と世羅ちゃん抜きで詳細な打ち合わせを行っていた。だから具体的な戦略までは知らないが、この程度、あの四人が防げないはずがない。

 そんな俺の予想通り、紗羅たちの反応は迅速だった。


「はいはい、っと」


 気の抜ける声を上げた真夜がついっと手を動かすと、真夜本人、それから凛々子さんの前方に障壁が生まれ、光の矢をことごとく弾いていく。

 そして、紗羅と杏子さんは揃って右手を前に掲げた。

 彼女たちが手から放ったのもやはり光。ただしこちらは一条の太い光線で、真昼の矢を飲み込みながら直進していく。それらはあえなく、真昼の周囲に張られた不可視の障壁により弾かれたが。

 こうして前哨戦は大過なく終わった。


「………」


 真昼は無言のまま、再び周囲に無数の光を生む。ただし今度は矢ではなく弾だ。

 発射された光弾を四人は同じように防ぐ。

 と、変化はそこで起こった。

 命中せず、紗羅たちの攻撃にも巻き込まれなかった光弾が、彼女たちの背後でUターンする。そして背中側から四人の身体へと迫り――不可視の障壁に阻まれた。


「ちゃんとそっちも守ってるっての」


 さすが悪魔。奇策、騙し討ちへの対応については安心感が違う。

 次いで動いたのは凛々子さんだった。

 真昼が更に何かする前に、彼女を見据えて声を上げる。


「『私の大事な家族に、風の加護と勝利の祈りを』」


 その声を聞いた途端、俺の身体がふっと軽くなり、不思議な温かさに包まれた。大気が俺の行動を後押ししてくれているような、絶好調の状態を疑似体験しているような。

 攻撃ではなく、援護の魔法。

 言葉を媒介にする凛々子さんの魔法は、直接真昼に効果を及ぼしにくいから、か。


「さて、じゃあ、そろそろかな」


 ……何がだ?

 真夜の声に首を傾げた刹那、今まで動かなかった真昼が地面へと降りた。

 ヒールの高い靴で器用に地を蹴り、向かう先は凛々子さん。高速でしつつ、その手には光の剣が収束していく。


「『我が身体は武器であり鎧』」


 狙われた凛々子さんもまた、そんな真昼の行動を予期していたのだろう。相手の行動を見る前から次なる呪文を唱えていた。

 凛々子さんの肌、水着で覆われていない部分が黒く硬質化する。彼女は変化した両腕をクロスさせ、真昼の振り下ろした剣を受け止めた。


「っ!」


 しかし、それでも衝撃が大きかったのか、凛々子さんは数歩分後退する。

 ……凛々子さんだって見た目通りの筋力じゃないだろうに、片手でそれを圧倒するのか。

 真昼は受け止められた剣を引くと再び振る。横薙ぎ、切り上げ、袈裟懸け――立て続けに攻撃が加えられるたび、凛々子さんの表情から余裕がなくなっていく。


「凛々子さんっ」

「凛々子っ!」


 紗羅が視線で攻撃を加えるも障壁で無効化される。慌てた杏子さんが光の剣を手にするが、そこへ三度、無数の光が生まれた。

 流星のごとく降り注ぐ光弾は全方位、紗羅たちだけでなく凛々子さんと、そして、


「こっちにも……!」


 世羅ちゃんが両手を前に突き出し、俺たちへ向かってくる流れ弾をブロックした。紗羅たちへの攻撃も真夜が防いだものの、それで動きは止まってしまう。

 今回は位置関係的に真昼へビームを放つこともできず――。


「『止まってください』『そこで止まって』……!」


 凛々子さんが繰り返し紡いだ言葉も真昼には届かない。ひときわ強く振り下ろされた剣が、防御する腕と重なり、そして切り裂いた。

 衝撃で弾かれたことで腕が落ちることはなかったが、代わりに胸の中央へと大きな裂傷が走る。


「まずは一人」


 尻もちをついた凛々子さんが真昼を見上げる。そんな彼女を、真昼は無感情な瞳で見下ろすと、くるりと身を翻した。

 見逃した……わけではない。

 真昼が振り返った先には、一秒足らずで間合いを詰めてきた杏子さんと紗羅がいた。彼女たちの繰り出した剣を光の剣が迎撃する。

 結果は互角。いったん紗羅たちが距離を取ると、そこへまたも光弾の追い打ち。


「大盤振る舞いにも程があるだろ……っ」


 思わず女言葉も忘れて愚痴がこぼれた。

 剣と光弾による波状攻撃。結局のところ真昼がやっているのはそれだけだ。なのに、パワーと弾数、連射性だけで紗羅たち四人を圧している。

 一筋縄ではいかないと思っていた。

 だけど、単に力押しだけでこうも抵抗されるとは思わなかった。


 身体から魔力が抜けていく。紗羅が三人分の防壁を作り、光弾を防いでいく。

 ――真夜は?

 見れば、彼女は何故か棒立ちしたまま事の成り行きを見守っていた。まだ大した仕事もしていない癖に何をやっているのか。

 と。


「杏子さんっ……!」


 光弾が尽きたタイミングで、真昼が杏子さんへと肉薄する。光剣と光剣がぶつかって鍔迫り合いの状態へ。

 でも、杏子さんは一方的に圧されていない。拮抗しているなら、なんとか。

 ――いや。

 真昼が片手で剣を握っているのに対し、杏子さんは剣を両手で支えている。それに気づいた途端、背筋がぞくりとした。

 空いた真昼の手に、もう一本、光の剣が生まれた。


 舞うようにして二本の剣が振るわれる。これまでの攻撃ですら小手調べだったとでもいうように。慣性を利用しつつ、人間離れした筋力と身体能力をもって、止まることなく攻撃が続く。

 遠くから傍観しているのでなければ、とても目では追えなかっただろう。


「く……っ」


 杏子さんは完全に防戦一方になっていた。手にした剣で必死に防御しているものの、少しずつ身体を切り裂かれて赤い血を滲ませている。

 その間も紗羅は視線による攻撃を続けているが、それも全く通じていない。凛々子さんは自身の傷を治癒している最中。真夜は……。


「何やってんだよ、お前!」


 ふわり、と。

 俺と世羅ちゃんの傍まで移動してきた彼女を怒鳴りつける。


「そうです。あのままじゃお母さんたちが……!」


 世羅ちゃんも一緒になって抗議するも、女悪魔はどこ吹く風だった。悠然とした笑みを浮かべたまま、他人事のように戦いを見つめている。


「あら。共闘するとは言ったけど、お守りをするつもりはないわよ。私の援護がなきゃ戦えないようなら、むしろ居るだけ邪魔だし」


 ……そりゃ、そうかもしれないけど。

 ぎりっ、と歯に力を籠める。筋力まで女の子並になっていなければ、一本や二本折れていたかもしれない。


「あ……っ」


 世羅ちゃんの悲鳴にはっと顔を上げれば、杏子さんの身体が真昼によって大きく切り裂かれるところだった。

 肩口から斜めに、バツの字を描くように深い裂傷が走る。

 白い羽毛が何本も宙に舞い、杏子さんは吹き飛ばされて仰向けに倒れた。乳房、脇腹までが斬られて、グロテスクな紅いラインを見せている。


「これで、二人」

「杏子様……っ」


 倒れた杏子さんを見た凛々子さんがよろよろと立ち上がり、彼女の方へと向かい始める。真昼はそれをちらりと眺めると、倒れた杏子さんに歩み寄り――。


「駄目っ!」


 紗羅の悲鳴が庭に響いた。

 ひときわ強烈な『支配』が飛び、同時に黒い剣が投擲される。するとさすがに危険を感じたのか、真昼は振り返って剣を振るった。

 一本が視線を切断し、もう一本が剣を砕く。


「……さて。だいたい予想通りの展開だけど。お嬢ちゃんはどこまで頑張れるかしら」


 真昼が地を蹴る。

 そして、正なる天使と、性なる天使が交錯した。

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