明暗が語る
出来過ぎた色彩と明暗が語る、映像商品の描写を目にする度、感嘆と溜息に混ざり、這い上がる気持ち、飲み込めない感情が湧き起こる。
声も無く叫ぶそれは反響して底で波紋のように揺れ、惑う美意識がみずからに反証を求め騒ぐ。
現実世界は、美しくも儚くもない。美しく、儚く見ているなら見たいと感じさせるそれがあるから。
人が映す夢など過度に加工され、ありのままと思い込んだそれでしかない。それに恐れ、底を見ずに歩いて行く先にはじめはある。それに気づいたからぼくは闇に耳を傾けた、それが恐いから、それが嘘に化すのが恐かった、から。
ただ眠りたい、眠りたかった‥
自堕落に湧き起こる気持ちのまま目を閉じ踞るようにただ眠り続けたい‥
夢を見るように閉じられた真っ暗な空間にそれは形作られた、長い時が自らの中を駆け抜けるように過ぎ去っていった。
息が苦しかった、何かに追われるように暗やみを走った。
走れなくなり、歩いていた‥
歩けなくなり、ただ立った。
立てなくなり這った、そして這うことも出来なくなり、動けなくなった。
微かな、重なる呼吸と鼓動が響いていた。
心臓が止まり、息も止まる。
ここは終わりか、自らの心はここで止むか、これは正しいことか、考え、思うと眠れなくなり感覚がまた、目覚めるのを感じ目を開いた。
吐きそうに気分がわるい。
己の愚かさが結実した感覚がこれだとしても、溶けゆき支えを失い落ちる、ここは夜の海のように濃く深い‥
見渡す限り真っ白な薄氷の上を歩いて来た。少しでも厚い氷上を探し、僅かでも寒い、冷たい気体を肌に感じながら。ぼくは地を見ることなく生きて来た。
安心して踏み出せる一歩は等価交換で歯の根も震える焼けているかのような錯覚を抱かせる痛みを要求して来た。
ぼくの時を形に、言葉にすればそうなる。