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こんな夢を観た

こんな夢を観た「ガラスの島」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/09/10

 大海原のど真ん中、友人の桑田孝夫と小舟で揺られている。

「陸はまだかなぁ」わたしは大あくびをした。正確な時間はわからないが、少なくとも半日は漂流している。

「おい、むぅにぃ。何だか変だと思わねえか?」ふいに桑田が言い出した。「ほら、聞いて見ろよ。シャリン、シャリンって、音がするじゃねえか。回りはどこも海だ。船にはおれとお前しかいねえ」

「波の音じゃないの?」わたしは気にもしなかった。

「ばかっ、これのどこが波なんだ。もっと、よく聞いて見ろっ」

 改めて耳を傾けてみると、なるほど、さっきまでのザブン、ザブン、という音ではない。何かが砕けるような、涼やかな響きだった。


 わたしは波間に手を伸ばしてみた。

「痛っ」指先が硬いものに当たって、撥ね返されてしまう。

「どした?」と桑田。

「水に手を入れようとしたんだけど、何だか固いんだよね」

「そんなばかなことがあるか」桑田はそう言うと、自分でも手を突っ込んでみた。「おっ?! 何だこりゃ」

「ねっ? 変でしょ」

「うん……。まるで、ガラスだな。どうなってるんだ」

 波でガラスが砕け、飛沫となって弾ける。その度に、シャリン、シャリン、と音を立てた。

 細かく散ったガラスの欠けらは、雪片が溶けるように、再び海へと還っていく。


「ガラスって、こんなふうにしてできるんだね」わたしは感心した。

「ああ、不思議なもんだな。なあ、むぅにぃ。このガラス、そっと手を置いとくと、すーっと沈んでいくぞ。抜くときも、そっとやらなきゃだめだなっ」

 桑田が海に手を沈めたり、抜いたりして遊んでいる。

「ちょっと、やめなよ桑田。そのまま手を持ってかれちゃうよ」わたしは心配になった。

 もしも、ガラスの海に投げだされたりでもしたら大変だ。初めのうちこそ波の上に浮かんでいられるだろうけれど、そのうちにずぶずぶと沈み始めるに違いない。

 そうなったら、泳ぐこともできず、あとは海の底へ、ゆっくりと落ちていくのだ。

「ああ、そうだな。やめるとするよ」桑田は船縁から体を引いた。「実は今、引き込まれそうになった。ははっ、危ねえ、危ねえ」

 わたしの方がゾーッとした。


 遠くに島影が見えてくる。

「やっと陸か。無人島じゃなけりゃいいがな」手をかざして、仰ぐ桑田。

「やけにキラキラ光ってるよね。あれ全部、宝石とかだったらどうする? 一生、遊んで暮らせるかも」わたしは皮算用を始めた。

「うーん、たぶんだが、そんなたいそうなもんじゃないと思うぞ」桑田は案外、悲観的だった。

「でも、あの輝き方は水晶かもしれないよ」なおも、わたしは言う。

「島に着いてみればわかるさ。おれには、だいたいの見当はついてるんだ」

 船は、導かれるようにして島へ向かって流れ続けた。


 浜辺に打ち寄せられ、わたし達はようやく地に足がつく。

「ああ、そういうことか……」島にたどり着いて、わたしはやっと悟った。

「なっ?」と桑田。

 どこもかしこも、ガラスの山がそびえていた。日の光を受け、四方八方と乱反射し、ダイアモンドのように美しく輝いているのだった。

「ここはガラスが流れ着いてできた島らしいな」桑田が推測をする。

 あちこちに切り出したような跡が見られることから、どうやら石切場ならぬ、ガラス切り場として利用されているらしい。

「ここからガラスが切り出されて、世界中に運ばれていくのかな」わたしは思いめぐらす。

「うん、きっとそうだ。おれ、将来ガラス屋にでもなろうかな。なんせ、原材料がタダなんだもんな」


 河原や砂浜で小石を探していると、たまに角の取れた丸っこいガラスを拾うことがある。

 ああいったものは、ガラスの島から波に乗って、たまたま運ばれてきたものなのかもしれないなぁ、とわたしは思うのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 桑田さんが何気に好きなので、登場していて嬉しいです。 [一言] なぜにわざわざ手を突っ込んでみる!? 危険だけど美しいガラスの世界に魅せられます。 儚い、壊れやすいといったガラスの表面的な…
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