Summer Rain
つらつらと書き連ねたものです。恋愛を書くって難しいな~
一学期の終わり、終業式の後、僕は先輩に呼ばれた。
メールの指示通りに、正門の前で待つ。
「や、待たせたね」
しばらく待つと一人の女子生徒がやってきた。
つやのある黒髪を腰までたらし、すらりとした長身で切れ長な目。
容姿端麗を絵に描いたようなその人こそ、僕の待ち人である『先輩』だ。
「いえ、今日はどうしたんですか?」
先輩は誰もが見とれるような微笑を僕に向けると、
「なあに、大したことじゃないさ」
その言葉を聞くと、僕の頭は警鐘を鳴らした。
先輩がこの笑いを、このセリフを僕に言うときはたいてい大したことだ。
そのせいで僕は、女装のまま女子トイレに入るよう指示されたりと、ろくなことにならない。
けれども、惚れた弱みというか先輩には逆らえない。
「で、今日は何をするんですか?」
ため息交じりに問いかける。
先輩は、さっきまでの大人びた笑顔とは裏腹に、子供っぽい無邪気な笑顔をにんまりと、顔いっぱいに広げていった。
「これから海にいこう!」
さすがの僕もその言葉には耳を疑った。
「先輩、今日はあいにくの雨ですけど?」
そう、夏休みの前日だというのに外はどしゃぶり。
そんな日は、まっすぐ家に帰りたい。
「いいから来い」
先輩は僕の腕をつかむと、傘も差さずにどしゃぶりの中に引っ張り出した。
「わ、わかりましたから。とりあえず傘だけだも差させてくださいよ」
こうなった先輩は誰にも止められないから、諦めて先輩に付き合うことにする。
「何を言っているんだ君は。こんなに気持ちがいい雨が降っているんだ。傘なんか差さないでいくぞ!」
まったく、この人は。
でも、こんな人だからこそ、僕は付いていきたいと思った。
この人が見ている景色を見たい思ったんだ。
先輩と雨の中、ずぶ濡れになりながら海を目指す。
歩くこと30分。
僕の目の前には、いつも教室の窓から眺めている海が広がっていた。
「う、み、だー!」
先輩は海に到着するなり、浜辺に駆けて行った。
いつしか雨も上がり、海の上には大きな虹が架かっていた。
先輩は虹の真ん中あたりに立って、こっちを振り向いて叫んだ。
「君にこの景色を見せたかったんだ!」
僕はその言葉に、驚き唖然とした。
だって、僕の心が読まれているみたいだったから。
先輩は、向日葵のように眩しい笑みを浮かべながら、浜辺で波と戯れている。
僕はそんな先輩の笑顔を、子供のような無邪気な表情を、いつまでも見ることができたいいなと思いながら眺めていた。
―――――願わくば、この幸せが永久に続かんことを
もともとは、投稿するつもりで書いたわけではなかったので、あまり良い作品ではなかったかもしれません。『先輩』と『僕』の物語は短編連作として、投稿しようと思っています。次回は……未定です。
でわ