第六話ーLet's本業ー
ちょっとだけ謎を。
雑用生活開始から半月後...
大分体力も付き、この生活にも慣れてきた俺に、ついに本業の話が舞い降りてきた。
「お、お化けになる...?どういう事ですか?」
「そのままの意味ですよ。石崎さん。貴方が脅かす役をやるって事です。特殊メイクをして。」
「つ、つまり俺が脅かす役をやるって事ですか...?特殊メイクをして。」
「はい。でも、それと全く同じ事さっき言いましたよね。確認取るの早くないですか?どんだけ心配性なんですか貴方。」
テンパり過ぎてオウム返ししてしまったようだ。でも、どうやれば良いのだろうか。と、考え込んでいると、柿原さんが、
「大丈夫ですよ。心配しなくても。
今日は北嶋も居ますし。何か分からない事があったら彼に聞いて下さい。」
柿原さんはにこやかに呟いたが、俺は唖然としていた。
「な...?なんで考えている事分かるんですか!?すごくないですか?...そういえば、篠宮もそうですよね!ねぇ、なんでです?」
そういえば、そうだ。最初にここへきた時もそうだった。篠宮は、確かにあの時「待ってた」と言っていた。何故だ?未来が見えるのだろうか。
「あ〜、それはですね〜...」
柿原さんが説明をしようとした瞬間、ドアが勢い良く開き、俺と同じぐらいの身長の男性が出てきた。そしてその人は俺を見るなり、ものすごいアツい眼差しでこっちにかけ寄ってきた。
「な...‼え!?何何何何!?ちょ、あの、近い!!柿原さーん‼タスケテー!!」
助けを乞うが、柿原さんはニコニコしながら俺の様子を見ているだけである。その間に俺は、アツい眼差しの人に軽々と持ち上げられ、連行されてしまった。
「...ありがとう。北嶋。おかげで彼に告げなくて済みましたよ。」
誰もいなくなり静かになった控え室で柿原は一人呟いた。その表情は、心なしか悲しみが滲み出ている様な気がした。