表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作品管理  作者: かおるこ
3/6

かおるこ作品

かおるこ作品


『お前の薬草遊びと茶飲み友達など無価値だ』と言われ離縁しました。翌月、全商会が夫との取引を止めました——私は今、隣国王宮の薬草茶室で働いています

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N9463ME



完結済

(全11エピソード)

冬の茶は、すぐに冷める。 けれど、冷えたのは茶ではなく、 あなたの言葉だった。 --- 「薬草遊び」 「茶飲み友達」 「役に立たない女」 笑い声の混じる広間で、 私は静かに離縁状を受け取った。 湯気は細く揺れ、 やがて見えなくなる。 まるで、 あの日の私の居場所のように。 --- あなたは知らなかった。 眠れぬ商人に、 胃を痛めた老侯に、 長旅に疲れた使節に、 どの葉を、 どの温度で、 どの順番で淹れていたかを。 知らなかった。 香りひとつで、 人の怒りが和らぐことを。 一杯の茶で、 止まりかけた交渉が動き出すことを。 --- だからあなたは捨てた。 温室を。 薬草を。 積み重ねた季節を。 「雑草だ」と笑いながら。 乾いた土の匂いだけが、 冬空に残った。 --- 翌月。 港から船が消えた。 商会は扉を閉ざし、 招待状は途絶え、 屋敷から人の気配が消えていく。 静かだった。 恐ろしいほどに。 崩壊とは、 雷のようには来ない。 誰も茶を飲みに来なくなる。 それだけで、世界は終わる。 --- 今、私は隣国の王宮にいる。 朝露を含んだミント。 眠りを守るカモミール。 月明かりに香る銀月花。 私は今日も、 誰かのために茶を淹れる。 戦を避けるために。 涙をこぼさぬために。 人が、人でいられるように。 --- 「本当の茶飲み友達ですね」 そう笑う声に、 私はようやく気づく。 大切なのは、 誰に価値を決められるかではない。 誰の心を、 温められたかだ。 --- 春の庭園。 白い湯気が空へ昇る。 もう、 この茶が冷めることはない。

ジャンル:異世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/16 13:41 読了時間:約48分(23,937文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 210 pt

ブックマーク: 18件 評価人数: 21 人 評価ポイント: 184 pt

『そのドレス、私の私物ですが?』 ~完璧な会計令嬢は、婚約破棄の場で自分の「異常性」を突きつけられ、初めて正気(と恋)を知る~

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N6986ME



完結済

(全11エピソード)

灰色の襟を 喉まで閉じて、 カトレアは今日も 「姉」であることを着ていた。 妹が笑えば譲った。 宝石も、ドレスも、居場所さえ。 家族間の資産移動は非課税―― そんな言葉で、 心の赤字をごまかしながら。 白い夜会場。 本来なら彼女が纏うはずだった 純白のドレスは、 妹の胸元で揺れていた。 婚約破棄。 その言葉を、 彼女は“ざまぁ”の始まりだと思った。 けれど響いたのは断罪ではなく、 ひとりの男の悲鳴だった。 > 「君は、自分を大事にしろ」 その瞬間、 壊れていた帳簿がめくれ落ちる。 尽くすこと。 譲ること。 耐えること。 それは本当に、 愛だったのだろうか。 深く頭を下げた床の向こう、 黒衣の男が笑った。 > 「拾おう。 > 君ほど美しい損益計算は見たことがない」 やがて彼女は知る。 ボルドーワイン色のドレスが、 誰かのためではなく、 “自分の肌”のために作られる歓びを。 深い谷間。 背を流れる黒髪。 絞られた腰。 それは媚びではない。 奪われ続けた人生を、 自分の身体へ取り戻すための戦装束だった。 請求書は積み上がる。 ドレス百二十四着。 宝飾十九点。 未払いの愛情、無断使用の青春。 妹は泣く。 けれどカトレアは、 初めて笑って言った。 > 「これは適正価格です」 数字は冷たい。 嘘をつかない。 だから彼女はようやく知った。 損をし続ける人生は、 美徳ではなく破綻だと。 最後に贈られたのは、 王冠でも、指輪でもない。 純金の算盤。 しゃらり、と鳴る音はまるで、 閉じていた心の鍵が開く音。 そして彼女は、 新しい人生の帳簿へ書き込む。 愛情収益―― 計測不能。

ジャンル:異世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/14 03:14 読了時間:約46分(22,513文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 178 pt

ブックマーク: 19件 評価人数: 17 人 評価ポイント: 140 pt


『夫が愛人のもとへ消えた朝、私は泣かずに鍵屋を呼んだ』 〜35年間専業主婦だった私が、誰にも知られず準備していた事とは〜

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N8261ME



完結済

(全10エピソード)

夫が愛人のもとへ消えた朝、 私は泣かなかった。 湯気の消えかけた味噌汁を見つめながら、 ただ静かに、鍵屋へ電話をかけた。 三十五年。 私は、何も知らない妻ではなかった。 帰宅時間のずれも、 香水の匂いも、 減っていく預金も、 見栄だけ大きくなっていく背中も。 全部、知っていた。 だけど私は叫ばなかった。 責めなかった。 取り乱さなかった。 その代わりに、 通帳を整理し、 名義を変え、 記録を残し、 静かに今日を待っていた。 夫は言った。 「俺には若い女がいる」 私は答えた。 「そう」 それだけだった。 夕暮れ。 閉め出された扉の向こうで、 夫は怒鳴り声を上げる。 けれど私は、 もう震えていなかった。 鍵を替えたのは、 家のためじゃない。 人生の鍵を、 取り戻すためだった。 誰かの機嫌で生きる日々を終わらせ、 誰かに怯える夜を終わらせ、 ようやく私は、 私の人生の扉を開けたのだ。 カチリ。 小さな鍵の音は、 長い長い結婚生活の終わりであり、 静かな再出発の音だった。

ジャンル:純文学〔文芸〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/15 14:54 読了時間:約43分(21,360文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 110 pt

ブックマーク: 3件 評価人数: 13 人 評価ポイント: 104 pt


婚約破棄された経理令嬢は、隣国宰相の“唯一の黒字”になる ~私を追放した国は、三ヶ月後に財政破綻しました~

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N6216ME



完結済

(全10エピソード)

灰色のドレスは、雨の匂いがした。 夜会の灯りの中で笑われながら、彼女はただ一人、国の赤字を抱いていた。 誰も知らない。 煌めく宝石の裏で、 舞踏会の音楽の裏で、 王国の呼吸を繋いでいたのが、細い指先だったことを。 「婚約破棄だ」 その声は高らかで、愚かだった。 金杯を鳴らし、貴族たちは笑う。 深く開いたドレス。 零れる真珠。 甘い香水。 浪費の香り。 けれど彼女だけは知っていた。 その輝きが、すべて借金で出来ていることを。 「私が埋めていた赤字、もう隠しませんわよ?」 静かな声だった。 怒鳴りも泣きもしない。 ただ帳簿を閉じるように、 彼女は王国を見限った。 雨が降っていた。 灰色の空。 濡れた石畳。 冷たい夜。 それでも胸は軽かった。 もう誰かの浪費を縫い合わせなくていい。 もう夜明けまで数字に謝らなくていい。 国境で出会った男は、黒を纏っていた。 まるで夜そのものだった。 「関税率の計算式が破綻しています」 その一言で、風向きが変わる。 数字を理解する男。 数字に誠実な女。 それは恋より先に生まれる、危険な共鳴だった。 「……君を国家ごと買いたい」 その言葉に、彼女は初めて知る。 価値とは、 宝石の大きさではなく、 誰かを生かせる力なのだと。 灰色だった人生は、ゆっくりと深い紺へ変わっていく。 ミッドナイトブルーのドレス。 大胆に開いた背中。 知性を隠さない瞳。 かつて地味だと笑われた令嬢は、やがて社交界で最も恐れられる女になる。 「その宝石、担保品ですわ」 笑顔で差押えを告げる夜。 贅沢に溺れた者たちは震え、 数字に愛された女だけが静かに立っている。 国は滅びる。 虚飾は剥がれる。 赤字は必ず回収される。 そして最後に残るのは、たった一つ。 誰にも理解されなかった彼女を、 最初から“価値”として見抜いた男の声。 「君はもう赤字じゃない」 黒衣の宰相は、彼女の指先に口づける。 「私の人生最大の黒字だ」

ジャンル:異世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/13 23:42 読了時間:約45分(22,096文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 84 pt

ブックマーク: 14件 評価人数: 7 人 評価ポイント: 56 pt

『最適化の魔女は、婚約破棄を歓迎する 〜王宮を追われたので古城を改修していたら、国のほうが先に崩壊しました〜』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N0557MF



完結済

(全11エピソード)

灰をかぶった古城には、 誰の足音もなかった。 割れた窓から風が入り、 錆びた配管の奥で、 長く忘れられていた水が 細く、泣くように鳴っていた。 かつて彼女は、 白亜の王宮にいた。 金箔の天井、 薔薇を浮かべた浴槽、 夜ごと煌めくシャンデリア。 けれどその美しさは、 誰にも知られぬ指先ひとつで、 静かに支えられていた。 流れすぎる水を抑え、 歪んだ帳簿を整え、 ひび割れた国を、 毎夜、見えない場所から縫い合わせる。 誰も感謝はしなかった。 ただ王太子だけが、 眩しい笑顔の聖女を抱き寄せて言った。 ――お前は冷たい女だ、と。 だから彼女は微笑んだ。 それは敗北ではなく、 長すぎた緊張から解き放たれる者の、 静かな息だった。 「承知いたしました」 その言葉とともに、 王宮から“最適化”は消えた。 翌朝。 止まっていたのは、 まず噴水だった。 次に浴場。 次に厨房。 次に地下水路。 やがて王宮は、 香水と汚水の入り混じる悪臭に沈む。 誰も知らなかったのだ。 美しいものほど、 見えない場所を清潔に保たねば、 容易く腐ることを。 一方で古城には、 新しい水音が満ちていた。 白いタイル。 柔らかな湯気。 ミントと石鹸の香り。 完璧な勾配を流れる水は、 もう誰の怒声にも怯えない。 彼女はようやく眠る。 壊れる音を探しながらではなく、 静かな夜の中で。 そして知るのだ。 最適化とは、 何かを削り続けることではない。 本当に大切なものが、 きちんと息をできるよう、 余白を整えることなのだと。

ジャンル:異世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 07:18 読了時間:約51分(25,014文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 66 pt

ブックマーク: 8件 評価人数: 5 人 評価ポイント: 50 pt


『君を愛することはない、と言われても私はあなたを愛します』 〜わたしのざまぁは、あなたに幸せを感じる心を育てること〜

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N0494MF



完結済

(全12エピソード)

君は言った。 「愛することはない」と。 その声は冬だった。 凍てついた湖のように、 誰も寄せつけぬ孤独の色をしていた。 けれど私は知っていたのです。 本当に冷たい人は、 そんな苦しそうな目をしないことを。 だから私は、 あなたを愛しました。 捨てられた野菜を煮込み、 割れた器にスープを注ぎ、 誰にも見つからぬよう、 小さな灯りを守るように。 あなたはそれを拒みました。 床に散った温かな雫は、 まるで私の心みたいで。 それでも―― 悲しくはありませんでした。 だって私は願っていたのです。 いつかあなたが、 「美味しい」と笑える日を。 誰かと食卓を囲む幸せを。 春の匂いを。 焼きたてのパンの温もりを。 誰かを愛して、 愛される喜びを。 あなたに知ってほしかった。 だから私の“ざまぁ”は、 傷つけることではありません。 奪うことでも、 泣かせることでもない。 幸せを知らなかったあなたが、 ようやく幸福を見つけたその瞬間―― どれほど自分が愚かだったのか、 涙を流してしまうこと。 それが、 私の望んだ“ざまぁ”。 そして今日もあなたは、 湯気の向こうで微笑むのです。 「美味しい」 たったその一言が、 この世界のどんな宝石より、 私を幸せにするのです。

ジャンル:異世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 05:06 読了時間:約55分(27,181文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 50 pt

ブックマーク: 7件 評価人数: 4 人 評価ポイント: 36 pt


『わたくしを後回しにする夫など、こちらからお断りです』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N9378ME



完結済

(全11エピソード)

夜のグラスに沈んだ 琥珀色のシャンパンは、 最後まであなたを待っていた。 けれど―― 来なかったのは、あなたではなく。 最初から、 わたくしを選ぶ気などなかった“心”の方でしたのね。 --- 「君なら大丈夫だろう」 その言葉で、 何度、わたくしは後回しにされたでしょう。 記念日も。 痛みも。 沈黙も。 崩れそうだった夜さえも。 あなたはいつも、 誰かの涙に酔い、 誰かの弱さに酔い、 “支えてくれる女”の孤独には気づかなかった。 --- 漆黒のドレスは、喪服でした。 終わった愛を弔うための。 背中を大きく開けたのは、 もうあなたに守られる必要などないと、 世界へ示すため。 わたくしはようやく、 あなたの妻をやめるのです。 --- 宝石とは不思議なもの。 本物は、 闇の中ほど美しく光る。 安物ほど、 光に縋りつき、 自らを飾り立てなければ輝けない。 だからあなたは、 あの子を選んだのでしょう。 軽くて、 甘くて、 何も知らない花を。 --- けれど。 誰が会社を守っていたのか。 誰が信用を繋いでいたのか。 誰があなたを“成功者”に見せていたのか。 失ってから、 ようやく知ったのでしょう? 玉座に立っていたつもりで、 あなたはずっと、 わたくしの手のひらの上にいたのだと。 --- さようなら。 もう、 あなたを待つことはありません。 冷えたスープも。 既読のつかない夜も。 空席のままの隣も。 すべて、 今日で終わり。 --- 夜明け色のドレスが揺れる。 新しい人生の色。 誰かのためではなく、 わたくし自身のために纏う、 最初の一着。 香るカサブランカ。 鳴り響くヒール。 まっすぐ前を見る横顔。 ――ええ。 わたくしを後回しにする男など、 こちらからお断りですわ。

ジャンル:現実世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/16 08:47 読了時間:約45分(22,432文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 42 pt

ブックマーク: 6件 評価人数: 4 人 評価ポイント: 40 pt


『情は無用、契約は絶対です。 ~乳兄妹を優先した婚約者へ、違約金二億円をご請求いたします~』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N7777ME



完結済

(全13エピソード)

『情は無用、契約は絶対です』 「妹みたいなものなんだ」 その一言で あなたは何度 私との約束を後回しにしたのでしょう 結納の日 誕生日の夜 祖母の形見が壊された瞬間さえ あなたはいつも “情”を選びました だから私は 静かに帳簿を開いたのです 失った時間 踏みにじられた信用 毀損された資産 積み上がる損害 涙ではなく 数字で 悲鳴ではなく 条文で 私はあなたを裁くことにした 「家族だから仕方ない」 ええ そうかもしれませんね ですが―― 契約とは 感情が壊れた時のために存在するものです あなたがサインした名前は 愛の証明ではありません 責任の証明です 甘えは免責にならない 情は違約金を消さない あなたが守った“妹”は 最後にあなたを捨て あなたが軽んじた“婚約者”は 最後まで契約を履行した それだけのこと もう 許す必要はありません 私は回収し終えました あなたへの期待も 愛情も 未来も すべて だからどうか安心してください あなたを憎む感情すら もう残っておりませんので

ジャンル:現実世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/14 21:39 読了時間:約51分(25,240文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 28 pt

ブックマーク: 4件 評価人数: 2 人 評価ポイント: 20 pt

『砂塵のドレスと魔法の導水路 ~追放されたインフラ魔導士、最果ての砂漠で至高のランウェイを築く~』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N8190ME



完結済

(全12エピソード)

砂に埋もれた国だった。 風は熱を運び、 人は希望を失い、 空でさえ乾ききっていた。 誰も彼女を覚えていない。 帝国の地下で、 破れた水路を縫い、 崩れる壁を繕っていた少女を。 「戦えぬ魔導士に価値はない」 その言葉ひとつで、 彼女は国ごと捨てられた。 けれど―― 彼女の指先は、 誰かを傷つけるためではなく、 誰かを生かすためにあった。 砂漠の夜。 冷え切った子供の肩へ、 温度を編み込んだ布をかける。 灼熱の昼。 働く女たちの肌を守るように、 砂を弾く衣を仕立てる。 水なき大地には導水路を。 絶望した街には灯りを。 そして人々には、 「自分は美しく生きていいのだ」と思える服を。 彼女が縫っていたのは、 ドレスではない。 明日だった。 やがて砂の国に、 色彩が戻る。 青いターバンが風を受け、 黄金のベールが陽光を踊らせ、 星空を映すドレスが夜を照らす。 滅びを待つだけだった王国は、 いつしか世界で最も眩しい国になった。 追放された魔導士はもう、 誰かの裏方ではない。 人を守るための美しさを知る、 国家の設計者。 砂塵の彼方、 今日も彼女は針を持つ。 誰も取り残さない未来を、 この世界へ縫い付けるために。

ジャンル:異世界〔恋愛〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/15 03:54 読了時間:約51分(25,313文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 26 pt

ブックマーク: 3件 評価人数: 2 人 評価ポイント: 20 pt


『財産目当ての同居のはずが、義母の溺愛が強すぎて計画が進みません!』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N0613MF



完結済

(全11エピソード)

静かな計算で この家の門をくぐった 庭の薔薇の値段も 床柱の木目も 古い通帳の残高も 全部、 数字でしか見ていなかった 「愛なんて曖昧」 「最後に残るのは財産」 そう信じていたのに   朝、味噌汁を作れば あなたは泣きそうな顔で笑った 「玲奈ちゃんが来てから、 毎日が嬉しいの」 その一言が、 やけに胸に残った   奪うつもりだった 主導権も 信頼も 遺産も なのに気づけば私は お揃いのカーディガンを着せられて スーパーを歩き 薔薇の剪定を褒められて 高級入浴剤を渡され 熱を出した夜には 眠らず看病されていた   どうしてそんなに優しいのですか 私は、 そんなふうに 大事にされるような人間じゃないのに   震える声で告白した夜 「財産目当てだったんです」 そう吐き出した私の手を あなたは静かに握って 「知ってたわよ」 と笑った   「でもね、 本当に悪い子は」 「あんなふうに、 誰かのために頑張れないのよ」   その瞬間 負けた、と思った 打算も 計算も ひねくれた誇りも 全部 あなたの愛情に 負けてしまった   今日もまた 「玲奈ちゃん、 お揃い買っちゃった!」 と笑う声がする 私は呆れたふりをして その服を受け取る   財産なんかより、 ずっと厄介なものを 私はこの家で 手に入れてしまったのだ。

ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 09:36 読了時間:約46分(22,633文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 24 pt

ブックマーク: 2件 評価人数: 2 人 評価ポイント: 20 pt


『“映える女”に婚約者を奪われました。でも、その男の成功、全部わたしの企画です』 SNSの数字しか信じない二人に、“本当の価値”を教えてあげる。

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N9704ME



完結済

(全11エピソード)

夕暮れのスーパーで、 値引きシールの貼られた小松菜を選ぶ。 誰にも褒められない指先で、 豆腐を切り、 味噌を溶き、 明日のために米を研ぐ。 それを彼は、 「地味だ」と笑った。 画面の向こうでは、 光るネイル、 高級ホテル、 薄いグラスの泡。 “映え”だけを食べて生きる人たち。 フォロワー三十万人。 数字は拍手の代わり。 中身のない言葉でも、 綺麗に加工すれば「成功者」になれた。 わたしの企画。 わたしの時間。 わたしの努力。 わたしの静かな夜。 全部、 あなたの「才能」になっていた。 でもね。 本当に人を支えるのは、 映る料理じゃない。 安い鶏むね肉でも、 炊きたてのご飯でも、 疲れた夜の味噌汁でも、 ちゃんと誰かを生かせる。 生活は、嘘をつかない。 あなたは最後まで、 「見せること」しか知らなかった。 冷蔵庫を空っぽにしたまま、 人生まで空っぽにした。 炎上の光に焼かれて、 拍手は罵声へ変わる。 フォロワーが減る音。 ブランドが離れる音。 虚像が崩れる音。 その全部を聞きながら、 わたしは静かに帰宅する。 鍋の蓋を開ける。 湯気が立つ。 ただそれだけで、 少し泣きそうになる。 “本当の価値”は、 誰かに見せるためじゃなく、 明日もちゃんと、 生きていくためにあるのだから。

ジャンル:純文学〔文芸〕

キーワード: 承認欲求

最終更新日:2026/05/16 19:30 読了時間:約50分(24,915文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 12 pt

ブックマーク: 1件 評価人数: 1 人 評価ポイント: 10 pt

『実家なら5万ですむのに ~なので別居のまま戸籍だけ入れましたw~』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N1090MF



完結済

(全11エピソード)

実家なら 五万円ですむのに 炊きたてのご飯も 勝手に補充される麦茶も なにも言わなくても置かれる絆創膏も ぜんぶ込みで 五万円ですむのに なのに私は 役所に紙を出して 別々の住所のまま 同じ名字になった おはようも おやすみも LINEで済む 会うのは週末だけ なのに不思議と 他人より近くて 家族というには まだ少し遠い 結婚って もっと劇的なものだと思ってた 指輪とか 同棲とか 永遠とか でも実際は Googleカレンダーを共有して 終電を気にして コンビニの新作アイスを送り合うくらいだ 実家なら 五万円ですむのに 熱を出した夜 「今から行く」の一言で 少し泣きそうになった 損とか 得とか そういう計算だけじゃ 測れないものがあると まだ認めたくないけど たぶん私は あなたと帰る場所を 作りたかったんだと思う

ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 18:00 読了時間:約50分(24,972文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 10 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 1 人 評価ポイント: 10 pt


『エデンの残響 〜反逆のエバと、身代わりのリリス〜』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N1898MF



完結済

(全11エピソード)

『エデンの残響』 楽園は、静かだった。 あまりにも静かで、 心の軋む音さえ聞こえた。 雪が降る。 世界の終わりみたいに、 白く、冷たく、果てしなく。 エバは去った。 怒りと涙を抱いたまま、 神に背を向け、 凍える荒野へ堕ちていった。 アダムは残った。 従うために。 愛した女を失ってでも、 神を信じるために。 だが夜毎、 彼の胸を裂いたのは罪ではない。 「なぜ、彼女だけが追放されたのか」 その問いだった。

ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/18 07:26 読了時間:約40分(19,908文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 2 pt

ブックマーク: 1件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt


『理不尽にクビになった中年、深夜ダンジョンで100円ミントを育てる 〜最弱スキル【雑草魂】で作った“眠れる結界”が、壊れかけたS級探索者たちの最後の避難所でした〜』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N1851MF



完結済

(全11エピソード)

静かな雨だった。 世界は今日も、 強い者だけを讃えていた。 ダンジョンを裂く剣。 空を焦がす魔法。 英雄たちの勝利。 誰もが拍手を送るその裏で、 眠れない夜を抱えた人間が、 静かに壊れていく。 草壁茂、四十五歳。 会社に尽くし、 数字を守り、 誰かが無茶をしないよう、 ただ必死に支えてきた男。 だが最後に返ってきたのは、 「お前はもう要らない」 その一言だった。 雨に濡れた帰り道。 見切り品の棚で、 百円のミントが揺れていた。 枯れかけた、小さな葉。 まるで自分みたいだと、 彼は思った。 だから、買った。 世界でたったひとつ、 まだ自分が見捨てたくなかった命を。 深夜二時。 誰もいない初心者ダンジョン。 冷えた石床。 遠くで響く魔物の唸り声。 その片隅で、 男は小さなプランターに土を入れる。 剣ではない。 魔法でもない。 ただ、土。 ただ、水。 ただ、小さな緑。 けれど。 ミントは香った。 張り詰めた瘴気を、 凍りついた心を、 静かにほどいていくように。 疲れ切った探索者たちは、 やがてその場所へ辿り着く。 眠れなかった少女。 壊れかけた英雄。 戦うことしか知らなかった人たち。 彼らは剣を置き、 ただ湯気を見つめる。 「……落ち着く」 その一言だけを残して。 世界を救う力なんて、 なくていい。 誰かを安心させる香りが、 たったひとつあればいい。 踏まれても、 傷ついても、 それでも青く香る雑草のように。 深夜ダンジョンの隅で、 今日も小さな聖域が息をする。 「お疲れ様でした」 その言葉だけが、 壊れそうな誰かを、 そっと明日へ繋いでいた。

ジャンル:ローファンタジー〔ファンタジー〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/18 03:55 読了時間:約48分(23,690文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 2件 評価人数: 2 人 評価ポイント: 20 pt

『バッドエンド確定の荒廃ギルドに事務員として転生したので、まずは『書類の進捗管理』から始めます 〜激情型冒険者たちの喧嘩を1秒で静め、感情の泥沼から組織を救い出す最強の一般人〜』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N1405MF



完結済

(全11エピソード)

血のついた剣が 受付台に投げられる 怒号 怒鳴り声 割れた酒瓶 誰かの泣き声 迷宮帰りの夜は だいたい地獄だ 「誰のせいで失敗した」 「回復が遅い」 「先に逃げたのはお前だろ」 感情が腐って 床にこびりついている だから彼は 静かに紙を置く 討伐報告書 経費申請書 被害届 始末書 「提出期限を過ぎています」 その一言で 大男が黙る 剣より先に 沈黙が落ちる 彼は強くない 魔法もない 剣技もない 英雄の血筋もない ただ知っているのだ 壊れる組織の匂いを 終電のない夜を 謝罪会議の白い光を 誰かが机で泣く音を 知っている だから 怒鳴らない 責めない 代わりに 静かに仕分ける 未対応 対応中 保留 廃棄 感情さえ タスクに変えてしまう 「喧嘩は十五分までにしてください」 「続きは定例会議でお願いします」 「泣く場合は、先に水分補給を」 冒険者たちは戸惑う なぜだ この男は 誰より冷たいのに 誰より こちらを壊さない 荒れ果てたギルドに 少しずつ増えていく 整理された棚 期限を守る習慣 朝の挨拶 休憩時間 そして 誰かが誰かに 「無理するな」と言う声 それはきっと 奇跡なんかじゃない ただ 人間が人間を潰さないための 小さな技術だ 迷宮より深い場所で 本当に人を殺すのは 魔物じゃない 積み重なった疲労と 言えなかった痛みと 「助けて」の消失だ だから今日も 最強の一般人は 書類をめくる 世界を救うためではなく 明日も誰かが ちゃんと働いて ちゃんと眠れるように。

ジャンル:ローファンタジー〔ファンタジー〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/18 01:58 読了時間:約46分(22,952文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt

作品管理

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N1341MF



連載中

(全2エピソード)

作品管理とトレンド分析

ジャンル:その他〔その他〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 20:03 読了時間:約7分(3,447文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt

『お前の全財産、いただくから。 ~完璧な乗っ取り計画は、超ド級の天然社長に全部狂わされた~』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N0814MF



完結済

(全11エピソード)

夜の帳簿に、 静かに灯る電卓の光。 男は数字を愛していた。 いや―― 数字しか、信じていなかった。 人は裏切る。 善意は赤字になる。 優しさは、いつか食い潰される。 そうやって、 幾つもの会社を解体し、 幾つもの笑顔を、 「合理化」の四文字で消してきた。 一条響。 彼は完璧だった。 冷静で、正確で、隙がない。 だから確信した。 古びた園芸会社。 無借金。 潤沢な現金。 土地資産。 温い経営。 ――カモだ、と。 若き女社長は、 花の香りをまとって笑っていた。 「響さん、すごいですねぇ」 契約書もろくに読まない。 利益率も気にしない。 会議中に花壇の話を始める。 愚かだ。 脆い。 騙しやすい。 はずだった。 彼が切ろうとした慈善事業は、 地域の希望になった。 彼が作った架空会社は、 世界市場で黒字を叩き出した。 彼が仕掛けた資金流出は、 社員の未来を育てる制度へ変わった。 悪意は、 彼女の手に触れるたび、 なぜか誰かの幸福へ変換されていく。 まるで。 花が、 どんな土でも咲いてしまうように。 冬。 オフィスの窓辺に、 白い薔薇が咲いていた。 「寒くないように、置いておきました」 その言葉が、 彼には理解できなかった。 なぜ自分を信じる。 なぜ笑う。 なぜ疑わない。 俺は、 お前の財産を奪うために来たのに。 夜の帳簿を開く。 積み上がった利益。 増え続ける資産。 守られていく社員。 そして気づく。 奪うはずだった男が、 いつの間にか、 この会社を守っていることに。 「……俺の負けだ」 絞り出した告白に、 彼女は小さく笑った。 「はい。知ってました」 そして差し出されたのは、 告発状でも、手錠でもない。 彼名義の、 未来だった。 合法的に。 完璧に。 逃げ道すらなく。 「これで響さん、もう一生、 うちの人ですね」 世界で一番ずるい、 優しい買収だった。 数字は嘘をつかない。 けれど。 数字では測れないものに、 人生を狂わされることがある。 例えば、 誰かが淹れてくれる 夕方のほうじ茶とか。 例えば、 冬薔薇の匂いとか。 例えば―― 「おかえりなさい、響さん」 その一言、とか。

ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 13:29 読了時間:約48分(23,826文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt

『時間よ止まれ 〜Do It! YAZAWA〜』

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N0109MF



完結済

(全13エピソード)

『時間よ止まれ 〜Do It! YAZAWA〜』 夜のドームに 白いライトが降る 五万人のざわめきは 遠い波の音みたいだ マイクを握るその手は いくつもの別れを知っている 広島の風 焦げた野音の匂い 裏切りで眠れなかった夜 誰にも見せなかった涙 それでも男は立っている “成り上がり”なんて 簡単な言葉じゃない 孤独を飲み込み 悔しさを燃やし 倒れそうな日々を ロックンロールで殴り返しただけだ 「A DAY」が流れる 暗い闇の果てに 見えた小さな光 あの日の少年は まだ胸の中で ギターを抱いている 「時間よ止まれ」 誰もが願う 愛した瞬間 戻れない夏 汗と煙草と グラスの氷 けれど時間は止まらない 人は老いる 仲間は去る 声も傷つく それでも ステージに立つ理由がある タオルが宙を舞う 歓声が 人生を突き抜ける 70を超えてなお あの男は叫ぶ 「Do It!」 止まるな 終わるな まだ行けるだろう 東京ドームの光の中 白いスーツが揺れる 少年は まだ死んでいない “時間よ止まれ” そう歌いながら 本当は誰よりも知っている 止まらないから 人生は美しいと そして今夜も 矢沢永吉は ロックンロールのど真ん中で 未来へ歩いていく。

ジャンル:純文学〔文芸〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 02:00 読了時間:約53分(26,317文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt

母と息子は藪の中

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N9250ME



連載中

(全6エピソード)

母と息子の藪の中 五月の生温かい風が アスファルトの埃を巻き上げる 財布の底は冷え切り 還付されない四万円のタクシー代が 僕たちの行く手を阻んでいた 四十一時間半の果てしない道 線維筋痛症の母はなきべそをかき 「もういいよ」と崩れ落ちる 糖尿病、識字障害、アディクション 病気と発達障害をすべて背負った小さな背中 アスペルガーの僕の脚も、もう棒のようだ いつもなら 「よかったね、今日も来られたね」と 満面の笑みで分け合うはずの帰り道 けれど今日の白い扉の向こう 母の悲鳴が静寂を切り裂く 「ちゃんと私の話、聞いていただけています?」 パソコンの画面しか見ない医師の目 誰にも届かない母の孤独 境界性の嵐が、愛着の飢えが 診察室の床で激しくのたうち回る 強度行動障害の僕の脳内で パニックの引き金がカチリと鳴った それでも、僕は暴れなかった 世界で二人きりの、僕たちの藪の中 ここで手を離せば、本当に居場所がなくなるから 汗ばんで酸っぱい匂いのする肩を抱き 「お母さん、僕が全部聞くから」と 囁く 病院中の冷たい視線の針を浴びながら 僕たちはまた、錆びついた自転車にまたがる お尻の痛みも、終わらない困窮も すべてをペダルに乗せて漕ぎ出す夕暮れ 「生きてていいよって、誰かに言ってほしかっただけなの」 涙の乾いた顔で微笑む母に 「分かっているよ」と 僕は風の中で応える 先も見えない、誰も分かってくれない藪の中 それでも二人の影は、夕日に向かって 確かに進んでいく

ジャンル:純文学〔文芸〕

キーワード: 注意欠陥多動性障害

最終更新日:2026/05/16 03:30 読了時間:約33分(16,322文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt

季節の織り糸

作者:かおるこ/作品情報/Nコード:N8167ME



連載中

(全5エピソード)

季節の織り糸 春は まだ冷たい風の中に ひとすじの若葉色を織り込んでいく 名も知らぬ花が 道ばたで小さく笑うたび 眠っていた心の糸がほどける 夏は 陽だまりの匂いを抱えながら 青空へ白い雲を縫いつける 蝉の声は激しくても 夕暮れには 誰かを想う静けさが残る 秋は 金色の光を指先にまとい 落葉を一枚ずつ時間へ返していく 遠ざかる鳥の影に 言えなかった言葉まで揺れて 胸の奥で淡く熟していく 冬は 透明な夜を深く編みながら 吐く息を星に変える 凍えた手を重ねれば ぬくもりだけが 次の春へ続く糸になる そして季節は 見えないはたの音を響かせ 今日という布を 静かに織り続けている

ジャンル:純文学〔文芸〕

キーワード:

最終更新日:2026/05/17 19:34 読了時間:約25分(12,228文字)

週別ユニークユーザ: 100未満  レビュー数: 0件

総合ポイント: 0 pt

ブックマーク: 0件 評価人数: 0 人 評価ポイント: 0 pt



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ