第五話 ヒヨコからなぜか卵が出てきました
「目覚めたか来夢よ」
気付けば家の中のベッドで寝ていた。
チュニが移動してくれたのだろうか?
『チュニ、あれが魔力なのか?』
「そうっちゃ。
初めてでよくあれ程の魔力を感じ取ることができたっちゃね。急に倒れたから心配したっちゃ」
それから来る日も来る日も魔力を感じては倒れてを繰り返した。
座禅中はチュニが魔物を追っ払ってくれていた。
そしてとうとう、魔力を掌に集中することが出来た。
チュニ曰く、これが魔力をコントロール出来ている状態で、もう倒れる心配はないそうだ。
実に6ヶ月も掛かってしまった。
俺の中に魔力が沢山あったせいで時間が掛かったらしい。
実感はないのだが。
「……来夢、この6ヶ月。
おまえは己の内に巡る魔力を、確かに感じ取れるようになったっちゃ。
よくぞここまで辿り着いたものっちゃ。
だが次の段階は“外”っちゃね。
世界に満ちる魔素──風の粒子、地脈のうねり、
生き物が放つ微細な波。
今のおまえなら、確実に触れられるはずっちゃ。
外にアンテナ張ってみるっちゃよ。
……例えるなら、
ワクワクセンサーの進化形──
《マクマクセンサー》っちゃ!!」
マクマクセンサーっちゃ!
マクマクセンサーっちゃ!!
マクマクセンサーっちゃ・・・!!!
また声にエコーかけてヤマビコみたいに響かせたよ。
しかも明らかに左手の指がフレミングの法則なんですけど!!あれでアンテナのつもりなんだろうか。
後、長ったらしい厨二説明をはしょれるスキルがないか密かに探ってみよう。
八百屋神と言い、精霊といい、ネーミングセンス素晴らしいモノがあるね。
ま、とりあえずここは乗ってみて・・・
来夢はチュニと同じく、左手を前に出しフレミングの法則、右手はぐーで胸元に当てたポージングをし、
『マクマクセンサー!』と唱えた。
指先が光り、徐々に光が広がって行く!
チュニはとても満足げだ。
俺はやっぱり恥ずかしい。
すると、田舎者が都会に来た時に感じる、アレを感じた。
『え?なんかお祭りやってる?』
田舎では人が沢山いる=お祭りという認識があるので、初めて都会に出たら、その、人の多さから10人に1人はお祭りかと間違えるだろう。(来夢調べ)
なので、マクマクセンサーに引っかかった魔物が多すぎてお祭りかと錯覚したのだ。
いや、お祭りであってほしい。
センサーの反応は千差万別だった。
針穴のように小さいものもあれば、バランスボールほどの大きさのものもある。
センサーの反応が点のように小さい魔物は弱く、大きい魔物はその大きさに比例して強いのだそうだ。
危険度5段階とは本当のようだ。
面白いくらいに外側から内側へセンサーの大きさが大きくなっていく。
俺の拠点、イェイな家から10km圏内にめちゃくちゃ大きいバランスボールがあるのだが、今は見ないフリをした。
あいつはきっとラスボス級だ。
このセンサーの大きさを目安に喧嘩を売っていい相手と、まだ売れない相手の棲み分けが出来るので、とてもありがたい。
「来夢よ、Pは、お寺の座禅と同じく“毎日”取り組むのが本義っちゃ。
心を澄ませ、魔力の流れを整える。
それこそが全修行の根であり、世界と繋がる“核心の儀式”でもあるっちゃね。
魔力を自在に操れる者のみ、
眠り続ける潜在能力の扉を開くことができるっちゃ!
己の内に潜む力を呼び覚ませ、来夢」
要約:魔力コントロールの座禅を毎日のルーティンとせよ
ステータスオープンの時と同じ字が浮かんだ。
うぉ!厨二説明頭で考えるのはしょれた!
効率厨の俺にはありがたい!
『了解だ!』
ん?待てよ?このPってもしかして!!
『ねぇ、チュニ、これもしかしてPだけでPDCAしてみせた?!
座禅→倒れる→体内魔力チェック→再チャレンジで効率良く出来たってことだよね!?』
いつになく尊敬の眼差しをチュニに向ける来夢。
一瞬キョトンとするも何かを悟ったように話し出すチュニ。
「そ、そうだ、その通りだ。
よくぞ見抜いたっちゃね!来夢。」
前言撤回だ。
これで第一段階の修行をクリアした。
「では次の段階にいくっ・・・」ピヨ
あれ?もしかしてチュニさん語尾変えた?
ウケ狙い?
首を横に振るチュニ。
視線を下にやるとヒヨコが倒れ込んでいた。
羽が濡れて、呼吸は浅い。
脇腹には魔物に噛まれたような跡がある。
『大変だ!い、急いで回復させないと!!チュニ、俺回復魔法使えるの!?』
「えーっとえーっとひなたぼっこスキルがあるので自己回復は自動で行えるけど、人や動物を治癒することは出来ぬっちゃね」
『なんとか傷を塞ぐこと出来ない?血が止まらないよ!』
「えーっとえーっと」
偉い慌てっぷりだ。
絵に描いたように目がクルクル回ってる。
一生懸命考えてくれてるのは分かるけど、こめかみに人差し指置いてくるくるしないの!一休さんか!
「はっ!胸の奥がほのかに熱くなる方向に、治癒の薬草は生えておる。
感じ取ってみよ、来夢。
自然界の鼓動が、おまえに語りかけておる」
最後まで聞き終わる前に優秀な青文字先生が現れ
要約:マクマクセンサーで薬草を感じ取れ。
青文字先生ありがとう!!
すぐさまマクマクセンサーを張ると一番近くで3メートル程の所に薬草が生えていた。
味見鑑定すると、薬草の名は芽命草というそうだ。
効果:中程度の傷口に塗ると傷口が完全に塞がる。
上位版:再命華。どんな傷、病気、呪いでも一瞬で治す。稀にしかみられない花。100年に一度咲く珍しい花
ちぎってすり潰すようなイメージをすると、イメージ通りにすり潰され、傷口に塗ることが出来た。
すると、傷口が光り、みるみる内に傷口が塞いでいき、完全に治った。
異世界の薬草すごいな!
こんなに効果があるなんて。
ピヨー!ピピヨ!ピヨぉ!
か、かわえぇ!!!!
フワモフのヒヨコだぁ。
まさかの癒やし発見。
厨二精霊では全く癒されなかったからな。
可愛いけどなんかなぁ。
「ありがとうって言ってるっちゃ。おかげで助かりましたって」
『え!?チュニ、言葉分かるの?』
「はっはっはっ!我に分からぬものなどないっちゃね」
へ、へぇ。神様の御使いなだけあるなぁ。
ピ、ピヨ!ピヨっぴっ!
「もう少し安静にしたいからそれまで住まわせてって言っちょっちゃ。」
『全然大丈夫だよ!いつまでもいてくれ!』
そんなことでヒヨコに見守られながら魔導成長螺旋〈PDCA〉大戦略のDCAの部分が開始された。
実行→評価→改善
これは要するに色んな方法で敵を倒しまくれということだった。とても脳筋だよチュニさん。
だがその理論は理に適ってるように思えた。
生前毎日やっていたシューティングゲームの中では猛者は敵プレイヤーがいないような過疎地に降りることはなかった。
ひたすら激戦区に降りて自分なりに扱いやすい武器や立ち回りを見出していたのだ。
俺は命大事に派だったから、過疎地でのんびりしていたが・・・.
場数を踏んで強くなる。
ゲームの中で(は)イケメン君なゲームヲタク君達だった。
だが俺は今超激戦区に降り立っている。弱気なことは言ってられない。
俺なりの立ち回りを見出さなければならないのだ。
弱いモンスター相手にまずはスキル、しぼり職人を極めることにした。
オークの中でも10体に一体くらい、他のオークとは体格の違うやつがあらわれた。群れを率いる小隊長のようだ。
俺のマクマクセンサーがちょっと強いぞと言っている。
しぼり職人で雑巾から作った普通の魔昌石をぶつけたら魔昌石が粉々になった。
それならばと、少し魔力を増やし強度を増し、飛ぶ速度も速くしてみた。
出来た!これは魔力コントロールの特訓のおかげだろう。
キャラコンならぬ、マリコンと呼ぶことにしよう。
小隊長も倒せるようになった所で日が暮れ出した。
今夜もオーク飯なのだが、今夜のは一味違うぞ。
家から南に1km程歩いた所にちょっとした丘がある。
マリコンの練習をしてた頃、魔力が暴発してその丘の壁が段々とえぐれてきていた。
壁には色んな色の石が埋まっていた。
白、灰、赤、青、黒など
味見スキルで鑑定するとそれぞれ強度が違ったり、魔力を帯びた石もあった。
その中でも赤い石は金属より硬く、熱にも強いものだったので、それに錬金術で鉄板焼きのイメージを付与し、天然の石焼きプレートを作ったのだ!
このプレートを使って一度やってみたかったやつをやってみる。
まず土に穴を掘って枝をくべ、指先で火を起こす。
後は石焼きプレートを被せて、と。
直火調理の完成だ!
生前、外でキャンプをする際禁止区域が多くて出来なかったけど、まさか異世界で出来るとは!
ソロキャン万歳!!
わーいわーい!!これはテンション上がるぞ!!
オークロースをしっかりと焼く。
チュニのゴクリと唾を飲む音が聞こえてきた。
焼いてる間に氷の魔昌石で作った冷蔵庫からミッカチョジュースを取り出した!
ミッカチョという果実をしぼり職人で絞ったのだ。見かけはみかんのような果実で、丘の上に沢山実がなっていたのでとってきたのだ。危険度4では果物が採れないとの情報があったので、危険度5であるこの区域もとれないだろうと思っていたのだが、結界により魔物が弱体化してる関係でとれるらしい。
ミッカチョジュースをぐいっと飲む!
かーっ!!美味い!!ひえっひえで最高だ!!
味は生前コタツで食べてたみかんよりみかんなのだが!
そしてロースをいただきまーす!
うぉぉ!
普通のオーク肉より美味しくて脳がバグった。
まず柔らかさが規格外だった。
普通のオークなら“筋肉の主張が強すぎる系モンスター肉”なのに、今回の肉はふわっ、とろっ。オーク本人に「君、本当に鍛えてた?」って問い詰めたくなるレベル。倒す時はあんなに硬かったのに!
筋肉のイリュージョンや!
味もいい意味でおかしい。
旨味がじゅわっと押し寄せてきて、思わず「お前、豚の真似してる牛か?それとも和牛の親戚か?」と肉にツッコミを入れそうになった。
オーク肉の仕上がりがテレビでみた和牛のそれと同じだった!
脂が口の中で消えていく瞬間なんて、もはや魔法だ。
そして後味。なぜか爽やか。オーク肉を食べて爽やかって何?森の妖精でも背負ってた?
最後には「あれ…これもうオークじゃなくて別の生き物では…?」と、身元確認したくなる美味しさだった。
食べるのに夢中で、またスキル取得に気付かずにいた。
スキル:陣圧
自分を中心に“圧”が広がり、半径5m以内では敵の動きが鈍化
素早い敵に効果ありそう!
さてさてヒヨコさんはどうしているかというと、お昼の間にせっせと自分が食べる芽命草を採ってきていた。
芽命草は傷口を塞いであげた時のもの。
相当お気に召したようで美味しそうに食べていた。
翌朝ーー
ニワトリのように倍以上大きくなったヒヨコが、リズムカルに口ずさみながらクルクルと回って、まるで舞を踊っていた。
昨日までヒヨコでしたよね?
いや、色もヒヨコのまんま黄緑だけど、見かけがニワトリっぽいんだよね。
はて?と考えていると急にうずくまりだした。
あ、あれ?様子がおかしい。
「……来夢。
どうやら助けてもらった礼として“卵”を献じるつもりらしいっちゃね」
『うぉぉ!それはありがたいけど、結構苦しそうにしてるよ?大丈夫?ヒヨコ!』
ヒヨコはまるで世界の呼吸に合わせるように震え、ぽとり、ぽとりと四つの卵を産み落とした。
卵だ〜!!!!
いや、思ってた以上の卵なんですけど!!!
彩が鮮やかでめっちゃきれい!!
宝石みたい!!
どれも淡い光を宿していて、触れれば体温ではなく、かすかな“脈動”を返してくる。
まるで卵そのものが「生き急いでいる」ようだった。
ニワトリヒヨコの体が薄く消えていく・・・次の瞬間、赤い鳥が空へ舞い上がった。
羽ばたきは力強く、残した風の軌跡が妙に神聖だ。羽ばたく度に、魔力の粒がきらりと降り注ぐ。
来夢は、あまりにも美しい光景に息を呑んだ。
その鳥は意思を持ったように円を描き、まっすぐ来夢の胸元へ飛んでくる。
逃げようと思ったが、なぜか足は動かない。
ただ、温かさだけが迫ってくるのを感じた。
そして——
鳥は光となって来夢の体内へ吸い込まれていった。
胸の奥がじんわり熱くなる。
苦しみではない。
来夢は思わず呟く。
『ヒヨコが、俺の中に・・・』
入っていったんですけど〜!!
しかももはやヒヨコではなくてなんか赤い鳥だったよ!?
表向きは冷静だが心の中では予想外の出来事のオンパレードすぎて心が追いついていなかった。
今の鳥はなんだったんだろうか。
まぁ、異世界だからなぁ。
こんなことは日常茶飯事なんだろう。
そう考えることにした。
じゃないと身が持たない。
気付けば左手首に赤い腕輪をはめていた。




