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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第二十五話 ゴブリン達に火おこしを教えてみた。

夜更けとなり、宴が終わった。


案内された寝床で、来夢はあるモノを作っていた。


イカちゃんは不思議そうに聞いた。

「主〜なに作ってんだ?

 疲れたから早く寝ようぜぇ」


『ふふっ。これがあれば

 きっと助かると思うんだ』


来夢は嬉しそうに返事をした。



次の日の朝、ちょうど朝日が登りきった頃ーー


来夢は、夜、火おこししていたゴブリンを起こした。


『起きて!起きて〜!』


ゴブリンは寝ぼけながら

「きゅーせーしゅさまー、もう朝だっぺか〜?」


完全に寝ぼけ声だ。


『朝だよ!火おこし隊をみんな起こしてくれる?』


「……承知したっぺ!」


返事だけは妙に気合いが入っている。

次の瞬間、バンッ!と扉が開き、

そのゴブリンは全力で隣の小屋へ駆け出していった。


「おい起きるっぺ!きゅーせーしゅさま

 が呼んでるっぺ!!」


「へ?今なんつったっぺ?」


「火おこし隊、緊急召集だっぺよ!!」


そのあと、そこそこ待たされて、

ようやく眠たそうなゴブリンがぞろぞろと5匹集まってきた。


髪はボサボサ、目は半分しか開いてない。

ひとりはまだ葉っぱ布団を肩に巻いている。


『よし!みんな起きたね。

 今日は君たちに──火おこしの極意を

 伝授しようと思う』


その瞬間だった。


ゴブリン全員の動きがピタッと止まった。


まばたきも忘れたみたいに固まり、

次第に目がカッと見開かれていく。


「……ご、極意……?」

「火おこしの……極意……だっぺ……?」

「お、おら……今、眠気ぜんぶ

 吹っ飛んだっぺ……」


葉っぱ布団を巻いたままのゴブリンが

震える声で言った。


「きゅーせーしゅさま……

 それ……弟子入りレベルのやつっぺか……?」


なんか知らんが全員めちゃくちゃ覚醒した。

俺は現代知識を伝授するだけだから弟子という程でもないのだけど。


『そ、そうだ。火おこしは奥が深いんだ』


「やっだっぺ」


泣きそうになりながらゴブリンは言った。


「前は火おこし大将と呼ばれる程の火おこしの

 達人がいたっぺ。だけど、数日前魔獣に

 襲われで・・・・・・それがらおら達が頑張ってるん

 だげども、中々上手ぐいっでねぇだよ。

 ごのままでは、冬が越せるが心配で心配で・・・

 夜しがまともに寝れねぇんだっぺよ!」


辺りが静まり返った。


来夢は驚いて目をパチクリとさせた。

ヨルシカマトモニネレナイ?


イカちゃんが間髪入れずに

「ばーろ!夜しか寝れねぇのは当たり前なんだよ!

 昼寝なんかいらねぇ!そんな暇あったら

 もっと働け!」


イカちゃん、ごもっともすぎて震える。


「そ、そうだっぺか・・・昼も寝るもんだど

 思っでだっぺよ・・・」


・・・・・・??ゴブリンって昼寝の習性があるのかな?

まぁいいか。



場所を移動し、来夢は地面の露を指で弾きながら、火おこし隊の前にしゃがみ込んだ。


『いい? これは朝露って言ってね、

 空気中の水分が冷えて

 葉っぱや石の表面につくんだ。

 でも──木の根元や倒木の裏側には

 つかないんだよ』


来夢がそう言って指さすと、薄い光の中で根元だけが乾いて見えた。


ゴブリンたちの動きがピタッと止まる。


「……あ、あれ?根元、濡れでねぇっぺ?」


「お、おら今まで……葉っぱばっか見でだ……」


ぽけーっと開いた口が、中々閉じられない。


すると突然、三匹がパッと飛び出した。


「根元見る!!」


「倒木の下も見るっぺ!!」


「露ないか調べっぺ!!」


慌てて駆け寄った三匹が、乾いた樹皮をつまんで固まる。


「か、乾いでる……カラッカラだっぺぇぇ!!」


「きゅーせーしゅさま……

 おめぇ……火の神の使いか何か

 だっぺか……!?」


いえ、ただの生活知識です!


そう言う間もなく、別のゴブリンがバタバタ走って来夢の前に膝から崩れ落ちた。


「師匠!!おら弟子入りしたいっぺぇ!!

 火を!火を一瞬で起こしてぇぇぇ!!」


後ろでも、


「弟子入り!弟子入り!!」


「火の極意教えてくれっぺ!!」



来夢は苦笑しながら、乾いた木の皮を一枚つまみ上げる。


『落ち着こうね。まずは乾いてるものを選ぶこと。

 火は順番を守れば、誰でもちゃんと起こせる。

 焦らないで一歩ずつ覚えていこう』


その瞬間──


火おこし隊の全員が、葉っぱみたいにピョコンと立ち上がり、


「「「はい師匠ぉぉぉ!!!」」」


朝の静けさをぶち破る大声が、森にこだました。


……いや、ほんとに師匠ってほどじゃないんだけどな〜。


でも、こうやって素直に喜ばれるの、

ちょっと嬉しい。


さっきまで半分寝ぼけていたのに、ゴブリン達の

火おこし熱がすごい伝わってくる。


それから、火おこし隊のゴブリン達に燃えそうな枝葉、薪を拾ってきてと伝えた。


しばらくすると、焚きつけ候補を両手いっぱいに抱えて、ゴブリンたちがぞろぞろ戻ってきた。


「拾ってきたっぺー!!」

「これ燃えるっぺかー!?」

「こっちのはどうだっぺ!?」


来夢の前には、色も形も湿り方もバラバラな枝葉が山のように積みあがる。


来夢は一つずつ手に取って確認していった。


まずは──濡れ葉。わずかだけど濡れてる。


しっとりと光っていて、触ると指がぺたっと貼りつく。

握ると「じゅっ」と水気が滲み、火に近づけたら確実に白煙だけが上がるタイプ。


『これはダメ。湿ってると火が嫌がるんだよ』


「火が嫌がる……火にも気持ちが

 あるっぺか……?」


次に──青々とした生木。


葉っぱはつやつや元気いっぱい。

枝を折ると「パキッ」ではなく「ベキッ」としなるような音がして、断面が水を含んで光る。


『これも燃えにくい。生きてる木は

 水分抱えてるからね』


「生きてるから火が嫌がるんだっぺ……」


最後に──苔だらけの丸太の欠片。


持つとズシリと重く、湿気がこびりついて手が緑に染まる。

火にかざす前に、湿気で消火しそうなほど水っぽい。


『これもダメ。燃える前に火の気力が

 なくなっちゃう』


火おこし隊は、自分たちが持ってきた使えない薪の山を踏んだり蹴ったり叩きつけたり…八つ当たりをしだした。


「お、おらたち……こんなに間違って

 たっぺか……!」


「火の世界……!深いっぺ……!」


「師匠、火って……難しいっぺ……!!」


「いっづも拭き取っで使っでだもんだがら…」


来夢は微笑んで言った。


『大丈夫。誰だって最初はそうだよ。

 火はね、乾いた仲間から順に呼んであげれば

 ちゃんと応えてくれるから』


その優しい声に、ゴブリンたちはパッと顔を上げ、八つ当たりをやめた。


「「「師匠ぉぉぉ!!!」」」


……師匠って言われると、ほんと照れる。


でも、みんなのやる気が可愛いから、まあいっか。


その中でも一匹だけ、ちゃんと燃える焚き付け候補を持ってきたゴブリンがいた。

しかもこの短時間でみんなの倍程の量がある。


『これ、誰が持って来たの?』


火おこし隊の中では一番幼そうに見えるゴブリンが言った。


「お、おらだっぺ。これもダメだっぺか?」


『いや。すごいよ!正解だ!!』


そして来夢はその枝や薪を他のゴブリン達に見せた。



『まず最初に使うこの細くて軽い枝。

 火は小さな種火から育てるもんだからね。


 次に使うのが、この白っぽい木。

 これはね、の民が火喰ひぐい木

 って呼ぶくらい、

 火を見つけると一気に燃え広がる性質が

 あるんだ』


「火喰い木!?そんな木あるんか!!」

ゴブリンたちはびびりつつ、目を輝かせた。


『最後にこの太い薪をくべる。

 これは魔物の巣の床材に使われることもあるくらい丈夫で、

 火が棲みつくって言われるほど長く燃えるんだ』


「ひ、火が……す、すみつぐ!?」

「薪ん中に火の精霊が住むってことか……!?」


みんなで盛り上がる中、幼いゴブリンだけが照れくさそうに呟いた。


「へへ……合ってだっぺか……よがったぁ……」


来夢は優しく笑った。


『君、センスあるよ。

 火おこし隊のエースだね』


「え、えーす!?なんだっぺそれ…」


焚き火の前で、ゴブリンたちは一斉に拍手を始めた。恐らく意味は分かってない。


「おめぇ、よくこれ拾っできたな!?

 一番わけぇのに、たいしだもんだべ!」


一番幼いゴブリンは嬉しそうに笑った。

「おら、父ちゃんが拾うの手伝ってたから・・・」


「そうが…大将が…」


「惜しい人を亡ぐしだっぺ」


なるほど。大将の息子さんだったのか。


流石は火おこし大将の子だ…。


『エースって大将って意味なんだよ。今日から君を

 火おこし隊の大将に任命する!』


「お、おらが…大将…」


「おめでとうっぺ!」

「うらやましいけど、おめぇには勝てねぇっぺよ」


(父ちゃんの分までおら、頑張るよ)


 幼いゴブリンは、涙ぐんでいた。




それから俺は、みんなに、大将のと同じモノを拾って来るように伝えた。


しばらく待つとゴブリン達が様々な枝葉や薪を拾って来た。

どれも焚き付け候補として、申し分のないものだ。


ようやく、スタートラインに立てた。

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