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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第二十四話 ゴブリン達と、炎祭(ほむらまつり)の夜

焚き火が、ぱち、ぱち、と乾いた音を立てた。

日が落ちると同時に、ゴブリンたちの宴が自然と始まった。


輪の中心には、でっかい丸太を井桁に組んだキャンプファイヤー。

立ちのぼる火柱が揺れて、橙の光が集落全体をゆらゆら照らす。

さっきまで粗末に見えた小屋も、この灯りの中だと不思議と温かく見えた。


火の周りには、すでに十数匹のゴブリンが集まっている。

誰かが太鼓を叩き始め、誰かが手を叩き、

それに合わせて適当なリズムで踊り出す。

豪快で雑だけど、楽しさだけは一級品だ。


「きゅーせーしゅさまー!肉焼げだっぺよー!!」


呼ばれて振り返ると、

大きな獣肉を串に刺して、ケバブみたいに豪快に回し焼きしているゴブリンがいた。

肉汁がじゅわっとしたたり、火に落ちるたびに香ばしい煙が立ち上る。


魔王の宴で出てきた見るのも嫌なゲテモノ

とは違い、これは……普通に、めちゃくちゃ美味しそうだ。


「オラのじいちゃん直伝なんだっぺ!

 塩と森ん中の香草すりこんで寝かせだやづだ!」


手渡された肉は、表面がパリッと焼けてー見た目は、悪くない。ーー悪くないぞぉ!


噛めばじゅわっと肉汁が溢れ、香草の香りがふわっと鼻を抜ける。


(……うまっ!!?)


その横では、背の低いゴブリンたちが木の実を両手いっぱいに抱えて走ってくる。

赤、紫、黄、青……色とりどりの木の実が葉っぱの皿に盛られていく。

どれもこれも天然のジャムみたいに甘い香りがした。


「これはオラ達が採ってきたやづっぺ!

 好きなだけ食べるっぺ!」


来夢がひとつ摘んで口に入れると、

酸味と甘さが絶妙で思わず目を細めた。


イカちゃんが嬉しそうに尻尾を振り、豪快に肉にかぶりついてる様子をみると、ほどよい塩梅の味補正がなくてもこれは美味しそうだ。


魔王の宴より、よっぽど家庭的で、あったかくて、

そして……最高に美味い。


ゴブリンたちの素朴な歓声と火の音が重なり、

夜は楽しげに深まっていった。

しばらくすると、体格のいいゴブリンが話しかけて来た。


「名乗るのが遅ぐなったっぺ!おらぁ、

 つたないながらにこの集落のおさやっでる

 っぺ。今日は楽しんでぐれっ」


『うん!料理も美味いし、もう既に

 楽しんでるよ!ありがとう』


「こちらごそありがとうだっぺ!

 こんなに楽しそうなみんなをみるのは

 いつぶりだっぺか・・・」


長は感慨深い顔をしている。

木々の間から夜風が吹き抜け、火の粉がふわっと舞い上がった。

宴は最高潮に達し、ゴブリンたちのテンションは天井知らずだった。


火の勢いがさらに強まり、ゴブリンたちの体が赤く照らされていた。

酒代わりの木の実ジュースを一気に飲み干した長ゴブリンが、

突然バンッと丸太テーブルを叩いた。


「きゅーせーしゅさまよ!!

 おめぇ、そんな火をパッと出せるなら、

 きっと力も強ぇんだべ!?」


来夢は口の中の肉を飲み込みながら首をかしげる。


「いや、力はそんな……普通というか……」


おいおい、長ゴブリン、お前飲み過ぎじゃないか?

気が大きくなってるぞ!


すると長ゴブリンは、なぜか笑顔で自分の上腕二頭筋をムキッと見せつけてきた。

皮膚が張り裂けそうなくらい盛り上がっている。


「オラ、昔はすんげぇ戦士だったべ!

 森に出た暴れクマーを、

 ひとりで殴って寝かせたごどもある!!」


『え?暴れクマーって危険度5にいたやつ

 だよね……?』


危険度5まで来れたってこと?


「そうだべ!!オラは若ぇ頃、森一番の力自慢

 だったんだぁ!!」


後ろで他のゴブリンたちが

「ほんとだべ!」「あの頃は強ぇかったべ!」

と拍手している。


おさゴブリンは胸を張ったまま、来夢にずいっと丸太を差し出した。


「勝負すっぺ!!!腕の力、見せっこすっだ!!」


『えええ!?い、今!?ここで!?』


「いま!!ここでだっぺ!!」


周囲のゴブリンたちが一斉に


「うでず〜〜〜もう〜〜〜〜!!!」

「勝負だぁ〜!!」

「きゅーせーしゅさま、がんばれぇ〜!!」


と騒ぎ立てる。


来夢は座ったまま、心の中でうめいた。


くそ……このノリ、断れないじゃん……!


丸太テーブルの上に腕を組んだ瞬間、

長ゴブリンは凍るような目つきでにやりと笑った。


「おらぁ、手加減はせんぞ……?」


いいぜ!やってやろうじゃんか!


『望むところよ!』

この間ゲットしたスキル、質量跳躍を試す時が来たようだ。とりあえず10倍にしとくか?


ゴブリンたちが一斉に囲み、円になり、

キャンプファイヤーの炎がゆらゆら揺れて、

二人の腕を鮮やかに照らす。


「いっせーのー……」


「「……!!!」」


おさゴブリンは、力を入れるが来夢の腕はビクともしない。


「くっ・・・!くっぅ。う、動かないっぺよ!

 びくともしないっぺ!」


え、ちゃんと押してる?

10倍は流石にやりすぎたかな?

少し落とすか。


9倍にしても、5倍にしてもまだまだ余裕がある。

少しずつ加減していき、スキル解除してようやく

腕から伝わる重みを感じた。


!?やっと張り合い出たけど、めちゃくちゃ軽い!

まるで年少くらいの子と対決してるみたいだ。


おさ、本当に暴れクマー倒したのか?

上司が酒の席でよくする昔自慢したんじゃないの!?


こういう時って、大体誇張してたりするんだよな。


俺も寺同士の付き合いでよく聞かされたんだよねぇ。

昔悪霊を1000人退散させたんだぁとか言って。


どうやって数えたんだよ。

盛り過ぎてて逆に清々しかったな、あの住職の人。


仕方ない。苦戦した感じでさっさと終わらせよう。


来夢はあたかも押す力に抵抗してますと言わんばかりにグググっとおさゴブリンの腕を丸太に近づけていき、そのまま押し倒した。


審判を買って出たゴブリンが言った。

「この勝負、きゅーせーしゅさまの勝ち

 だっぺー!」


「きゅー!せー!しゅ!さま!!

 きゅー!せー!しゅ!さま!!」


この救世主コールにどう反応したらいいのか分からないまま笑っていたら、長ゴブリンが言った。


「流石はきゅーせーしゅさまだっぺ!

 おらの負けだっぺ」


『いやぁ、おさも中々強かったよ!』


すると、ゴブリン達は、太鼓と手拍子で音楽を奏で始めた。

キャンプファイヤーの周りを回りながら

みんなが一斉に歌いだした。


はっ! よっ!

仲間の武勇を 盛って語れ!

はっ! よっ!

ほんとかどうかは 

風まかせ!どんと来い!


はっ!

オチが決まれば 酒がうめぇ!

どんどこ! よっ!

嘘も真実まことも 祭りの具材!


はっ! よっさ(しゃ)こい!

生き残れたら それで十分!

輪になれ輪になれ 火の粉が舞うぞ!

胸どん叩いて 声をあげろ!


今日も生きてる——ありがてぇぇぇ!!


(太鼓ドドン! ドドドドン!)


♪ 武勇盛り盛り炎祭ほむらまつり


来夢とイカちゃんは、不器用ながらも輪に加わり、

肩を寄せながらゴブリン節に合わせて踊った。


笑い声と太鼓の響きがキャンプファイヤーの

炎に溶けていく。


夜は穏やかで、温かかった。


ふと空を見上げると、雲間から覗いた月が

どこか楽しそうに微笑んでいるように見えた。


それは楽しい楽しいひとときであった。

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