表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/31

第二十二話 ゴブリン達に救世主扱いされました

パカッと割れた岩の中心に、

ぽつんと空洞が生まれた。


そこだけは最初から物が入る前提で造られていたような、不自然なほどきれいな円柱状のスペースだ。


粉塵がふわりと舞い上がる。

断面はつるりとしていて、岩とは思えないほど滑らか。まるで職人が砥石で一万回磨きあげた位に綺麗だ。


味見かんていーー


個体名:オルドロック

厄災級魔獣で、10年に一度目を覚ます。

目を覚ますと、凶暴かつ獰猛どうもう

ひたすら腹を空かせており、辺り一帯を

食い荒らす。肉食。

寝ている間は、岩と見分けが全くつかない。

その胴体は、ミスリル以上に固く一定基準の武器でしか割れない。

備考:稀に割れた胴体から宝箱が出て来る。


『イ、イカちゃん!これ、厄災級の魔獣

 だったってよ!』


「おう!魔獣の匂いしかしなかったぜ!」


そ、そうなのか。イカちゃん分かってたのか、

すごいな。どんな鼻してんだよ。


それにしてもこの胴体、殆ど鉱物だ。

何かの素材に使えるかもしれないから

持っておこう。

来夢は無限収納にしまった。


「この箱、なんっか古くせぇ匂いがすんな」

とイカちゃんが呟く。


確かに、どことなく古臭い。


だが、古びているのに、どこか上品な作りだ。

黒い木材のような素材に、金色の金具が四角く留められている。

金具には細かな模様が彫られており、長い年月を経ているように感じるが錆びてはいない。


まさに古の宝箱と呼ぶのがふさわしい

佇まいだった。


さて、宝箱を開けてみるか。


来夢は宝箱に手を伸ばし、ゆっくりと持ち上げた。

が、びくともしない。鍵が掛かっているようだ。


『これ、鍵が掛かってるよイカちゃん』


「そんなの主のハンマーでこじ開けちゃえば

 いいじゃねぇか」


頭いいな。


『確かに!カムロ頼む!』


来夢は、諦め半分で念じた。

すると調律鎚カムロは、みるみるうちに鍵の形へと変化したのだ。


もしかしていけちゃうの!?


来夢は恐る恐る宝箱に鍵を差し込んだーー

引っかかることなく、するりと入った。


ゆっくりと回す。

固唾かたずを飲んで見守るイカちゃん。


ーーガチャ。


あいたーー!!

来夢とイカちゃんは、同時にパッと顔を見合わせてにやりと笑った。


宝箱の中には――


目を開けていられないほどまばゆい金貨の山。

光が跳ね返って、思わず来夢は手で目元をかざした。


そして、その横には皿のような、不思議な板状の物体が一つ。

色は落ち着いたグレー。

表面には、ぐるりと古い紋様が彫り込まれている。


食パンでも乗せたくなる形をしてる。


『パン食べたくなったな〜。

 王都に行ったら探してみよう』


「パン!?美味そうだな」


イカちゃんはよだれを垂らしながら言った。


使者として王都に行くんだし、お土産に宝箱これ渡しちゃおっかな。


俺、人なのに魔族側の人間なんだよな。

変なとこに生まれたせいで。

だから一応の誠意を見せなくちゃ。


生まれ故郷が黒紡ぎの森の危険度5なんです〜

って言っても


虚言癖か!


大概にしろ!


とか言われて誰も信じてくれ無さそう。





森の中を何日歩いただろう?

魔獣と出会っては闘い、夜になったら狩った魔獣を食べてスキルを取り込む。


そんな日が続いた。


は〜今はどこ歩いてるんだろ?

危険度いくつですかなここは!

段々と魔獣が弱くなってきているのを感じてはいるが・・・。


せめて位置情報だけでも知りたい。

エコー先生がいたら一発で分かるんだけど。


そんなことを考えながら歩いていると、

ひらけた場所に出た。


その瞬間、空気がふっと変わった。

そこには――小さな集落があった。


土を踏み固めて作られた道が一本、ゆるく曲がりながら奥へ伸びている。

その両脇には、木の皮と泥をこねて固めたような粗末な小屋が十数軒並んでいた。


屋根はところどころ穴が空き、

壁もひび割れ、強い風が吹いたら揺れそうだ。


集落の中央には焚き火の跡があり、

数匹のゴブリンが必死に火を起こしていた。


「チチッ……うおぉっ!? 消えだ!」


「もっど乾いだ葉っぱさ持っでごーい!」


火はついては消え、ついては消え……

どう見ても火おこしを長い時間繰り返してそうな

不器用さだった。


ゴブリンたちの動きはどれも不安定で、

慣れているはずの日常動作でも「よいしょ」「あだっ」「うげぇっ」と小さな悲鳴が飛び交う。


住民は全部で二十ほど。

背丈は人間の子どもほどだが、

肌の色も筋肉の付き方も個体差が激しい。


武器と呼べないような丸太を杖代わりに持つ者、

ぼろぼろの毛布をまとって震えている者、

子どものゴブリンは泥だらけになって

追いかけっこしている。


質素で、荒れていて、

けれどどこか――家族の匂いのする暮らし。


たまに焚き火の煙が風に押されて集落全体を

包むたび、ゴブリンたちは一斉に「むせっ……!」「く、苦しいべ!」と涙目になって

咳き込んでいた。


火おこしひとつで大騒ぎ。

けれどその必死さと一生懸命さが、来夢には妙に愛らしく映った。


ここ、通っちゃってもいいよね?

まさか何も知らずに襲って来ないよね?


来夢は静かにそ〜っと中央まで歩いてみた。


するとーー


「だ、誰だべか!?」


「に、人間か!?」


敵対心というよりも、恐怖を感じているような

言い方だった。


『あ、どうも〜。人間やってます、来夢と

 言います〜』


他のゴブリン達がわらわらと集まってきた。


その中でも、ひときわ体格のいいゴブリンが

火おこし用の丸太を放り出して、

がばっと振り返った。


くりっとした黄色い目が大きく見開かれ、

口は信じられないほど縦に開く。


「あ、あなだは……きゅーせーしゅさま

 ではねぇか!?」


その声は森の木々になぜか反響するほど大きく、

次の瞬間、集落がざわっと揺れた。


「な、なに!?きゅーせーしゅさまだってか!?」

「ま、まさか本物が目の前に……!」

「ひょえぇぇ……どうすんだべどうすんだべ!」


ゴブリンたちは一斉に騒ぎ始め、

さっきまで火おこしに集中していた連中ですら

すっ飛んできて来夢を囲んだ。


イカちゃんはというと、ニヤニヤが止まらない。


(来夢〜、やったなぁ。救世主だってよぉ〜?)


誇らしげに胸を張り、

もっと言ってやれとでも言いたげに尾を揺らしている。


対して来夢はというと――

完全に困った子どものような顔をしていた。


『え、えっと……あの……ちが……』


声を出そうとして、出ない。


救世主扱いには慣れっこのイカちゃん、

やっぱり慣れていない来夢。


ゴブリンたちの期待に満ちた瞳が何十も向けられ、

来夢は胸の奥がぎゅっと縮むのを感じた。


(いやいやいや!ここでも救世主扱い

 されてますけど!!)


心の中でそう叫びながらも、

どうにか笑顔を作るしかなかった。


神様、助けてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ