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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第二十一話 翡翠影軍出陣と、調律鎚カムロの一撃

黒紡ぎの森、それは、暗く湿気た陰湿な森であったが、魔王のため息がおさまってからは、少し空気が澄み、以前ほどの重苦しさはなくなっていた。


その地面下、女王、アント・エコーは、翡翠影軍エメラルド・シャドウレギオンを集めていた。


翡翠影軍エメラルド・シャドウレギオンとは、影蟻団シャドウアント翠鎧親衛クイーンズ・ガード剛蟻ごうぎの三団を統合した総称。


影蟻団シャドウアントはその名の通り影の組織。斥候せっこう、潜入、刺客、その他の裏方稼業をこなしている。表向きには「存在しない」エリート部隊だ。


エコーの子達三隊長のみ人型特異個体と化しており普段から顔を隠し仕事をしている。


翠鎧親衛クイーンズ・ガードは、女王アリ、エコーに直属する 最上位の護衛部隊。

8名からなる少数精鋭部隊だ。


そして剛蟻ごうぎ

技ではなく力のみで選ばれた怪力集団。


アント・エコーの最強部隊が集められた。

その数およそ五千。


エコーは口を開いた。


「皆の者、我が主より、この森の防衛

 任務を授かった。

 お前達の力が必要だ」


うぉー!!!


上がる歓声は鳴り止まない。


エコーは細い指――を持ち上げる。

途端に、五千の影が音もなく沈黙した。


「これより、この森に何人なんびとたりとも

 入ることは許されぬ。既に入っている者は

 ただちにしめだすべし。誰の仕業とも悟られては

 ならぬ。静かに、そして速やかに排除すべし。

 ただし、殺してはならぬ」


アリ達はしんとなり、一言一言を噛み締めるように

聞いていた。


「では次に――布陣ふじんを告げる。

 森の南側は、影蟻団シャドウアントナンバーワン率いる影蟻団長シャドウマスター軍。

 森の西側は、ナンバーツー率いる影走蟻シャドウランナー軍。

 森の東側は、ナンバースリー率いる影潜蟻インフィルトレイター軍。

 そして森の北側は、我、自ら軍を率い、

 指揮を執る」


さっきよりもまして歓声が上がり、その真上にいた魔獣がビビって逃げていく程のものだった。



「翡翠影軍――出陣しゅつじん


静かに、しかし重く、その号令が落ちた。


地面が生き物のように波打ち、

五千の兵がそれぞれの持ち場へと散っていく。

影となり、根となり、風となって。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『ねぇ、今揺れなかった?』

来夢はびっくりして聞いた。


だがイカちゃんは


「そうかぁ?気のせいだろ?」

いつもより尻尾をフリフリさせてそう答えた。


さて、王都はこっちの方面であってるんだよな?

なんせエコー情報だから間違いはないと思うけど・・・


そう。来夢とイカちゃんは王都へ向かっていた。


魔王さんから預かった人間との和平の親書を届ける為だ。


届けるって言ってもアテがないのですが・・・



なんで、こんなことになってしまったのか。



俺の湖畔ライフが、近付いては遠のき、遠のいては・・・遠のいていく気がする。


そして、森を歩くのは初めてだ。

魔物はいても害はないはずだが、魔獣は本能的に襲って来る世界だ。

気を抜けるはずがない。


しばらく歩くと、大きな岩が道を塞ぐ。


するとイカちゃんが


「おいおい、こんなところで寝ていやがると

 邪魔でしょうがねぇぜ!起きろよ!」


その、不良みたいな絡み方やめてくれないか?

これ、岩だぞ?


「主、コイツやっちゃっていいか?」


『あぁ、まぁ』(通れないし)


イカちゃんは岩の周りをシュンシュンと目にも止まらぬスピードで走り出した。


脈衝走パルスラン

走る軌跡が雷線になり、触れた敵を感電させる。


岩のちょうど真ん中にヒビが入った。

イカちゃんがあれだけやってこれしか入らないとは、相当硬い岩らしい。


『あ、イカちゃん、最後俺がやっていい?』


イカちゃんはゼーゼー言いながら


「おっかしいな。これだけやればもうとっくに

 砕けててもいいのに・・・。だが、感電したから

 動けないはずだぜ」


そういう時もあるさ。感電ってこれ、岩だぞ?

最初から動いてなかったじゃん。

俺は修行中に作ったハンマーを取り出した。


ヒョドの賢者レシピ本で作った変幻自在のハンマー

その名も「調律鎚ちょうりつづちカムロ」


普段は手のひらサイズだけど、俺の意志をハンマーに送ればなんとあらゆる大きさや形に変化する。


しかも俺の持つスキル「ほどよい塩梅」の性質を付与出来ちゃう優れ物。


ハンマーの内部に「緑色の核」が一つ埋まっていて、来夢が触るとキラリと光る。


これ、試してみたかったんだよなぁ。

効果のほどはいかがなものか。


とりあえずハンマーを大きくして、と。

来夢が念じると

ハンマーはみるみる大きくなり、一五〇センチ程の巨大な武器となった。

それとともに、重量もあがっていく。


ずしっと足元が地面にめり込むようだ。


うっ、重てぇ。


来夢は深く息を吸い、足元にそっと力を乗せた。

ハンマー《カムロ》の柄が、じんわりと掌に馴染む。


『……調律破断チューニング・ブレイク



そう言いながら来夢は、飛んだ。

身体がふわりと浮き上がった。

自分でも驚く軽さだ。

重力の束縛が、ほんの少しだけ緩んだような感覚。


頂点めがけて振り下ろす。


コンッ。


———え?


硬い岩に対して、あまりにも軽いノックのような音だった。


だが次の瞬間。


ピキ……ッ。

ピキピキピキピキ——!


表面ではなく、岩の芯だけに走る鋭い音。

内部の一点からヒビが四方へ広がる。


まるで岩の方が自分から割れにいくような、

そんな不思議な伝わり方だった。


来夢が着地するより早く——


パァンッ!!


岩は真っ二つに割れた。

左右へゆっくりと倒れ、

中央には古の金属箱が埋まるように眠っていた。


割られた岩の断面は、

まるでナイフで切ったように滑らか。

魔法でも剣でも出せない生活的精密さがそこにあった。


イカちゃんがぽかんと口を開けた。


「……主……まじで今の、コンッて

 しただけだよな?」


来夢はハンマーを見つめながら呟いた。


『うん……なんか、塩梅が……

 丁度よかったみたい……?』


調律破断チューニング・ブレイクは、

内部の歪みを測り、最も割れやすい一点へ

衝撃を通す技。


カムロの主人である来夢にしか成せえない神業なのだ。

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