第二話 厨二精霊チュニと生活無限スキルの正体
「目覚めよ…刻は満ちちょ。
眠りの牢獄から解き放たれるっちゃ、今すぐに。」
うっすらと目を開いたらパタパタとなにか飛んでいたので、また目を瞑った。
体は手のひらサイズで可愛らしい顔に尖った耳。
とんぼみたいな羽がはえ、羽ばたきを保って空中に浮いている。
可愛らしい声色とは裏腹に、言ってることが方言混じりの厨二病そのものだ。
「起きろっちゃ!選ばれし者よ!
このまま眠り続ければ、運命の扉は閉ざされてしまうちゃねッ!」
と、言いながら得意げな顔でこっちを見ながら手で扉を開くようなジェスチャーをしてみせる。
・・・・絶対この人精霊さんだよね?
起きた方がいいのかな。
変な毒とか飛ばしてこないよね?
し、自然に起きてみるか!
『あ、おはようございますぅ!
初めまちて来夢と申しまつ。あの、あなたは?』
噛んでしまった。
滑舌はいい方だったんだけど。
そもそもなんか若返ってる気がするし、口が上手く回らなかった。
手は前よりふにふにしてて、体つきが子どものようだ。
いや、子どもになってる。
髪の毛も生えている。
うそじゃ〜ん!!!!
「……聞こえているっちゃね。
私は精霊─チュニ─天上の御座に座す神より遣わされた“御使い”。
この世界で君を導くために、姿を現した存在っちゃ。」
どうでもいいけど、言い回しが毎回厨二病なんだよな。可愛い声して。
あの八百屋神の御使いか?あの書類山積みのデスクが御座なんだろうか?
『あの、ナビゲー・・・導くとは・・・?そしてここはどこなんでしょうか?』
「ここはニュワドっちゃ──
あなたが新たな形を得て、世界に呼び戻された場所っちゃね。
天上の主が、急ぎのままに君へ祝福──“スキル”を授けたっちゃ!
ただあの方、どうにも忙しくてね。
スキルの解説を丸投げされたっちゃ。
『説明してる暇ないから、あと頼んだ』っちゃって。
まったく…あの方の後始末はいつも私の役目なんだっちゃ。
だから私が、君の力の真価を一つずつ紐解いてやるっちゃん。喜べっちゃ!」
上司が忙しいと下の人はもっと大変っていうよね。
どこの世界も大変なんだな。
この精霊さん、出張させられちゃったのね。
それにしても愚痴なのか説明なのか分からない口ぶりだ。
そして厨二病が邪魔して分かりづらい・・・
ニュワド?ニュウワード、ニューワード、ニューワールド!?
新しい世界、、神様、名付けも適当だな。
そして世界の名前じゃなくて、この状況を聞きたい。
目の前にはログハウスを中心に360°森林が広がっている。木々からはお寺や神社の木のようなマイナスイオンは・・・出ておらず、どちらかというと薄気味悪くて不気味だし、怖い。
って俺、スキル貰えてたの?!
期待してなかっただけにびっくりした。
『スキルってどんなスキルですか?』
「ステータスオープンと唱えてみるっちゃ。
その言葉は、君の内に眠る力を世界に示す“開示の呪文”やっちゃね〜。」
えぇっと、ステータスオープンと言えばステータスが見れるってことね?厨二病確定だなこの精霊
『ステータちゅオープン』
名前 有野来夢 10歳
職業
レベル1
HP 100
MP 100
攻撃力 32
防御力 50
固有スキル 生活♾️
加護 精霊チュニの加護
『?????
噛んでもオープンしてくれた。
あの・・・せいかつむげんとはなんですか?』
と、その瞬間草むらからなにかが飛び出してきた!!
・・・スライムのようだ。
「ちょうど良い。このスライムで試してみるっちゃね。
両手を前に出し、『しぼり職人!』と唱えるっちゃ。
何よりも形が大事っちゃね。形というものは力の通り道を決める儀式みたいなもんっちゃね。
両足を広げて、大地を踏みしめるように膝を折る。
それから腰を落とす……そう、その型が魔力を呼ぶっちゃよ」
戸惑いながらも言いなりになり
来夢は割り切って唱えた。
『し、しぼり職人!!』
なんだよしぼり職人ってだっさ〜!!
しかもこの間抜けな姿、は、はずっっっ////
ディフェンスしながら雑巾絞ってますけど〜!?
よく見たら精霊少しニヤけてるし!
この格好、本当に必要なのか!?
それこそ厨二病風の魔法詠唱とかやる場面じゃないの!?
頭の中でぐるぐるツッコミを入れていると空中に5枚の雑巾が現れ、絞られていき、勝手にきつく絞られていった。
雑巾はみるみるうちに先が鋭利に尖った棒となり、
空中で静止してた。
も、もしかしてこうかな。
直感で右手首をくいっと曲げてみる。
一斉に棒がスライムに突き刺さり、串刺しとなった。
「ふふん。これが生活無限のスキルっちゃ」ドヤ顔で精霊が言った。
そんなこと言われても、雑巾が固くなって突き刺さってスライムやっつけちゃって・・・ヤバいスキルだ。
ヤバいという表現は漠然としてて極力使いたくはないのだが、俺の語彙力レパートリーの前ではその一言が最も有効的だった。
もっとヤバいのがふと鋭利な棒を見ると、エメナルドグリーンに輝き、宝石のように綺麗だった。
『えぇ!?これ、雑巾でしたよね?!なんでこんなに綺麗な宝石みたいになったんですか!?』
「ふふふん。
生活無限なんて日常スキルに見えるけど、
実際は“錬金術”そのものなんだっちゃ
君の魔力が雑巾を魔昌石へ跳躍進化させたっちゃね」ドヤァ
・・・・・??
なぜ雑巾が宝石に進化したのかは、考えてもキリがないので異世界だからと納得するようにした。
だけどこの力チートじゃないか?
・・・・
俺は生前毎日2時間だけ大好きなサバイバルのシューティングゲームをする時間を確保していた。
敵の動きが早く、素人では中々敵に弾が当たらない。
初心者の部屋にも『初心者狩り』と呼ばれる猛者が毎試合出没して、負けまくって悔しくて泣く人もいた。
ガチでやってる人は1日に何時間も戦場に凸ってるからキャラクターコントロールが上手い。
弾が当たらず負け続ける、を繰り返すと一部の人は『チート』に手を出す。
『チート』を使う『チーター』と呼ばれる人たちは上位勢の縄張を荒らしに荒らしまくっていた。
だって目を瞑ってても全弾弾が命中しちゃって瞬殺出来るように設定されているのだから。
チートに手を染める人は、勝てないけどゲームをしたい。
負けて悔しいからチートを使ってでも上位に入って優越感に浸りたい。
そんな気持ちがあるのだと動画のインタビューで知った。
そんな人たちを俺は『闇堕ち君』と呼んでいた。
戦場では闇堕ち君にだけは出会いたくなかった。
だって反則されて負けた方は面白くない。
そういう経緯で闇堕ちゾンビは増えて行くのだろう。
ゲームの中でもスポーツマンシップを大事にしてほしいものだ。
そんな俺でもこの世界では闇堕ち君になってしまうんだろうか。
「ふむ。闇堕ちではないっちゃ。
この世界はゲームとは違う弱肉強食の世界。
一度死んだらそこでゲームオーバー。
このスキルはお前を手助けするものっちゃね。
無敵というわけではない。
スキルを生かすも殺すもお前次第っちゃ。
神様はお前にもう早死にしてほしくないっちゃ」
心読める系の精霊さんでしたか。
もう別に驚かないけど。
そっか。身を守る為の大事なスキル。
これはリアルなゲームの中。
生死をかけた戦いが待っている世界なんだ。
少しでも長く生き抜く為に、俺はスキルを磨くっきゃない!
とりあえずこの魔昌石とかいうやつ、持っとくか。
こんだけ綺麗なんだ。
もしかしたら売れる物かもしれない。
カバンを持っていたので、そこに収納したが、中が空洞になっていて、精霊曰く、どうやらこれには物が無限に入るらしい。
無限収納というスキルなんだとか。
慌てていたにしては用意周到である。
忙しいのに手抜かりのないいい神様だ。
ありがたや。
俺は無意識にそっと手を合わせた。
「ステータスの生活む♾️を押してみるっちゃ」
ポチっ
生活♾️の文字が光消えていき、内訳のように各スキルが浮かび上がってきた。
スキル
味見
あわせ調味
いただきます
お裾分け
片付けの極意
しぼり職人
染み込みの手
日向ぼっこ
保存上手
ほどよい塩梅
芽吹の指先
無限収納
????
普通スキルってさ!
ぱっと見で頷ける程分かりやすいモノだよね?
なんだこの抽象的な言い回しは!!
多くて良く分からないし!
「お前今、なんだこれ、わけわからんって思ったっちゃ?」
うっ、図星だ。
だけどここは丁寧に・・・
『実は・・そうです。
ですが、俺は神様に普通に生活出来れば充分なのでそうゆう処遇だけいただければ・・・とだけ言ったのでこんなに頂けてむしろありがたく思います。
もっと分かりやすければ活かせると思うのですが、今のところは何をしたらいいか分かりません』
「はっはっは!
そうだ、それでいいっちゃ。
素直に受け入れる心が、力を開く鍵となるっちゃね。
そのために──私はここへ降りたったっちゃ。
我が名はチュニ。
神々を渡り歩く、啓示の精霊だっちゃ。
来夢よ、これより当分の間お前に同行し、お前を導くっちゃね」
は、はぁ。褒められた?んだよな?
この精霊さんもずっと一緒にいるってことか。
つ、疲れそう。
でももしかして、名前は厨二病のチュニかな?
覚えやすい名前で良かった!
こうして僕たちの旅が始まった。




