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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第十六話 魔王との初対面、雑巾を渡したら高級布扱いされました

この赤い絨毯の上をどれほど歩いただろうか?


こんなに長い絨毯がこの世にあるのかという位長く感じた。


眷属たちには一言もしゃべるなと言いつけてある。

相手の出方が分からないからだ。


イカちゃん(なっげぇなぁ)

ヒョド(赤い床楽しいなぁ)


!?


声?いや違う。心に直接聞こえてくる。


チュニの声が聞こえてきた。


(これは念話っちゃ。

眷属というのは、ただ従う存在ではなく――

魂の深層で主と結びついた“縁”そのもの。


ゆえに、声を使わずとも心が響き合う。

思念は距離をも越え、伝わるっちゃね)


要約:眷属とは心の結びつきにより、思念での会話可能


青文字先生久々なのにグッジョブ!!

なるほど以心伝心みたいなものだろう。


試しにやってみよう。


(みんな、お利口さんにしててね。イカちゃんは電気ビリビリしちゃダメだよ)


イカちゃん

(心配すんなって〜!)


心配しかない。


ゴブンは立ち止まるとひざまづいた。

来夢も真似してひざまづく。

イカちゃん、ヒョドも座り、チュニは俺の右肩、エコーはイカちゃんの上に座っている。


「魔王陛下、来夢殿をお連れしました」


魔王が言った

「オモテをあげよ」


声は落ち着いて、低い。

抑えた咆哮のようにも聞こえ、不思議な響き。


来夢はゆっくりと顔を上げた。


するとそこには、魔王が座っていた。


玉座の上で背筋を伸ばして座るその姿は、

細い体つきなのに妙な威圧感があった。

頬はこけ、目は落ち窪み、しかし瞳だけが異様に鋭く光っている。


長い黒マントは肩から垂れ、

裾が床に溶けるように広がっている。


痩せているのに、服は魔王らしい威圧のためにか

肩や胸だけがやや大袈裟に装飾されている。

しかし身体自体は華奢にみえる。


普通の服着たら普通の中年おじさんじゃん!


「よくぞ来てくれた。来夢よ」


中年おじさんの割に威圧感がすごく、無駄に緊張してしまう。


「おはちゅにお目にかかります。魔王陛下」


また大事なところで噛んじゃった〜恥ずかしい。


「ふは、ふは、ふはははは!」


魔王が笑うとその他の魔物たちも一斉に笑い出した。


「来夢よ、其方は期待通り面白いやつだの〜」


「見た所、子どもに見えるが、

 お主があの書状の差出人で間違いないか?」


魔王の顔が強張り、ギロっとした目で来夢を見つめた。


「間違いございません。

 私は危険度5区域に最近住み始めまして

 遅ればせながら引っ越しのご挨拶に

 馳せ参じた次第でございます。

 こちらつまらないものですが・・・」


早速粗品を取り出した。

手始めにこれで反応をみてみる。


箱には「ご挨拶 来夢」と丁寧に書いてある。


魔王は目配せをし、ゴブンが箱を開ける。


その場にいる皆に緊張が走った。

皆と言ってもゴブンと、魔王の側近数名だ。


まだ来夢を信じきれていない。

中から何が出てくるのか、それ次第ではやむを得ない事態へと発展してしまう可能性があるので、側近達は非常に警戒していた。


箱を開けるとそこには、タオル・・・


いや違う。


これはしぼり職人で生成した雑巾だ。


「こちらは私が生成した布でござります」


箱を開けた瞬間、魔王はふわりと目を細めた。


淡い光を吸いこんだように白く輝く布。

触れた指先は、ほんのわずかに沈んで返す。

たしかに――シルクでも、綿でもない。もっと柔らかい。


「……これは……?」


魔王は両手でそっと布を持ち上げた。

重さはないのに、手のひらになめらかな感触が宿る。


「なんと滑らか……!

まるで雲の欠片を摘み取ったような……

指が布の上を勝手に進むではないか……!」


いや、魔王さん?

それ、雑巾なんです。


「この繊維……緻密にして均一。

糸の一本たりとも乱れておらぬ……!

この世界に、これほどの高級布が存在したのか……?」


そうだろそうだろ。

俺も触ってみてびっくりしたんだから。

触り心地がマイクロファイバーっぽいんだよね。

百均にあるやつ。


家で汚れた所サッと拭くのに便利なんだよねぇ。


魔王はさらに頬にすり寄せた。


「(すりすりしながら)なんと優しい肌触り……

この布、寝具にしたらさぞかし眠りが深くなるじだろう……

人間の世界の王侯貴族は、このような布を使っておるのか……?」


(使ってない!!庶民の台所にあるやつ!!

スリスリしないで!それ、雑巾だから!)


「は、はは」

来夢は苦笑いをした。


しかし魔王の目は本気だった。


「来夢よ……

 これは、もはや布ではない。

 心を癒し、魂を包む……

 至福の織布しふくのおりぬのだ」


名前まで付けちゃったよこの人。


雑巾なのに。

マイクロファイバーの雑巾なのに。

この世界では高級布に昇格してしまった。


ま、喜んでくれたからいっか。


「実はまだありまして」


と、来夢は無限収納から、高級な木箱に入ったミッカチョと、贈り物三点セットを取り出した。


贈り物三点セットのヒョド特製スープ達は100人前あるので、錬金術で100人前入りそうな大きい鉄鍋を用意して温めて持ってきた。


保存上手スキルのおかげであったかいままだから

最高だ。


「これは、食べ物であるか?」


魔王はミッカチョを指差しながら言った。


あれ?ミッカチョってこの世界で当たり前の食べ物ではないのかな・・・


「はい。こちらはこのように皮を剥いて

 食べるものです」


来夢は手に取り、皮を剥いてゴブンに渡した。


ゴブンが一つ毒味をし、魔王に渡した。


「人間の食べ物など、興味ないわ!」


辺りがざわついたが、来夢はちゃんとその言葉の意味を理解し、ニコッと笑った。


それは手紙に来夢が書いたセリフだったからだ。


もしかしてちょっと冗談通じる人なのか?


魔王は冗談を言ったのではない。試したのだ。

来夢の反応を見るに、どうやらこれが書状にあった「プレゼント」で間違いないらしい。


それが分かると同時に安堵した。


だがしかしこちらサイドの眷属達には冗談が通じていなかった。


イカちゃんとヒョドが今にも先頭体制に入ろうとしていたのを念話で止めた。


(君たち!今のは魔王さんの冗談だからね!

 魔王ジョークだよ!)


2人とも驚いた様子だった。


魔王は恐る恐るミッカチョを食べた。


初めて食べる甘酸っぱい果物に黄金の瞳がわずかに見開かれた。


「…………む?」


甘みが舌に落ちる。

すぐに優しい酸味がふわりと追ってくる。

果汁が頬の内側をつたって、喉へすべり落ちた。


「……な、なんじゃ……これは……?」


来夢はごくりと息をのむ。


魔王の喉が、コクッと無意識に動いた。


「もうひとつ……」


来夢が慌てて皮を剥いてゴブンへ渡す。


魔王はそれを受け取り、今度はためらいなく噛んだ。


「……う、うまい。うますぎる……!

 甘みが……酸味が……儚い。

 わしの胃の奥まで、柔らかくしみこんでい 

 く……!」


魔王さん、意外と丁寧に食レポしてくれる。


「これは……どれほど食べても飽きぬ……!

 いや、飽きる前に無くなる。

 もっとだ。もっと寄越せ!」


ゴブン「ま、魔王陛下!?落ち着いてくだされ……!」


だが魔王はすでに三つ目に手を伸ばしていた。


四つ目。

五つ目。


来夢はさえぎるように言った。

「ま、魔王陛下、こちらあまりたくさん食べますと 

 お腹を壊しますのでそのへんにしておいて

 は・・・」


「そうか? 生き返った……。

 実に美味であった。

 来夢よ……これは……命の果実か何かか……?」


『いや、ミッカチョという果物で私の家の近くに

 実がなっていたのをもいで来たのです』


「危険度5には果物がならないはず・・・

誠にこれがなっていたのか?」


「は、はい。

 私の家に結界が張ってありまして、

 それにより魔物が弱体化した関係で

 この果物がなったらしいのです」


「なんと!?噂には聞いておった。

 近寄ると魔力が吸い取られる場所が

 最近出来たと。お前のお家であったか・・・

 ふむ。良い頃合いじゃ。本題へ移るとしよう」


んんん?本題?


まだヒョド特製スープ達が残ってるし、俺はもう用事終わってるんですけど?


あの異常なまでの大歓迎、

やっぱりなんかの意図があったんだ。


か、帰りてぇ〜。

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