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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第十五話 魔王、胃痛の原因とドラゴンブレス直当てサウナ

三つ目の湯に到着。


その間、イカちゃんは見かけがサウナのような扉で仕切られた部屋の様子をみてくると言いながら駆け出した。


気をつけろよ〜!


それはさておき、三つ目は癒やしの湯とは言っていたがもはや期待はしない。


しかも遠くからただならぬオーラを感じていたから特にだ。


湯船に近づいた瞬間、鼻にツンと刺す刺激臭が来た。


普通の温泉の硫黄じゃない。もっとこう……刺す感じ。


変な色の草を煮詰めたみたいな、得体の知れない匂い。


覗き込むと、どす黒い紫が底からゆらゆら。

表面では緑色の光の粒が浮いたり沈んだりしている。

温泉というよりまるで毒のスープだ。


来夢は念のため、湯気にそっと手を近づけた。


指先がピリッ……と痛む。


『や、やば……絶対これ入っちゃダメなやつだ……』


嫌な予感しかしない。


来夢は恐る恐る人差し指を少しだけ湯につけ《味見(鑑定)》を発動した。


『味見──』


ふわっと視界に文字が浮かぶ。


────────

〈鑑定結果:魔瘴湯ましょうゆ

効果:

・刺激成分による胃壁へのダメージ

・継続吸入で胃痛悪化

・長時間接触で生命の危険

────────


『……胃痛……?』


来夢は思わず固まった。


『これが……魔王さんの胃痛の原因……!?』


だって匂いを吸っただけでキュッと胃が縮んだ。

湯気に一瞬触れただけでチリチリする。

魔王が毎晩これに浸かってたら、そりゃあ胃も悲鳴上げるよ。


『癒やしどころか完全に毒なんですけど!?

魔王さん、無自覚で自分に毒盛ってるじゃん……!』


『これ、なんとかして浄化出来ないかな・・・』


「主!我が輩の出番です!我が輩がなんとかしてみせます!どのくらい何とか出来るかと言うと結構自信があるので、たくさんです!」


俺がどうこう言う前に

ヒョドは羽を大きく広げ、両目を閉じた。


「《芽命浄化メメイ・パージ》!!」


優しい緑の光が湯気全体を包み込み、

毒々しい色がスッ……と溶けて消え、

湯の色は一気に落ち着いた森色へと変化した。


掛け流しの湯が常に注がれ続けていたが、

注がれた瞬間に浄化されていくようだ。


さっきまでとは打って変わってとても癒される森色に変化した。


『味見──』


────────

〈鑑定結果:再命の癒湯さいめいのゆゆ

分類:天然温泉

効果:

・精神安定効果(ストレス緩和)

・魔力の自然回復速度が増加

・再命華の微粒子による高位治癒効果


────────

備考:

ヒョドの《芽命浄化》により、

芽命草メメイグサの魔力が再命華さいめいかの形質に跳躍進化。

その花粉に似た治癒因子が湯へ微量混入した結果、

奇跡的に温泉そのものが高位治癒効果を持つようになった。飲んでも効果てき面



ヒョドは誇らしく羽を震わせた。


な!?再命華!?

何度も鑑定したから覚えているぞ!

これ、メメイグサの上位版じゃないか!!

100年に一度しか咲かない花なんだよ!?


『ヒョド〜!!お前すごすぎだろ〜!!』


「ありがたき幸せ!我が輩はすごいのです!」


来夢は再命の癒湯に浸かってみた。


『か〜っ気持ちいいー!』


これが極上の湯というものだろうか。

身も心もほぐれていく感じ。

日頃の悩みなんて1発で消えちゃうね!


昔行った乳白の温泉思い出すなぁ。


これで魔王さんが胃痛に悩まされることはないだろう。

良かった!


だけどーー


長時間接触で生命の危険って書いてあったよな?

大変だ。急いで魔王さんに教えてあげなきゃ。


あ、イカちゃんの様子もみてこよう!


魔王御用達サウナ、その名もドラゴンブレス直当てサウナに入っていた。


竜の口元の魔法陣が光り、

ゴォォォォォォォッ!!!

と灼熱の暴風が吹きつける。 


皮膚が乾くとかそういうレベルじゃない。

下手したら蒸発までのカウントダウンだ。


……え、竜ってこの城では労働者なの!?


俺の中にあった竜=勇ましくて高貴で、人知超えた存在のイメージ、一瞬で吹き飛んだんですけど!!


いや、でも竜をここまで手なづけるって……

魔王の力、支配力、どれだけヤバいんだろう。


来夢は思わず叫ぶ。


『イカちゃん!?大丈夫!?死なないでね!?』


しかし当の本人は──


「ばーろ!誰が死ぬかってんでぃ!

かーーッ!!沁みるぜぇぇぇ!!

電気走る感じがたまらねぇ!!

ここまで極限の温風、久々だ!!」


完全にトんでた。


背中からビリビリと雷気があふれ、

熱風 × 雷 の相乗効果でさらになんか発光してる。


『いや、待って!?それ本当に大丈夫なやつ!?

普通なら豚の丸焼き状態ですけど!?』


「はぁぁ……最高だ……

この、皮膚が追いつけねぇ温度差!!

汗が蒸発する前に蒸発していくこの感じィィ!!

かーーーテンション上がるぜ!」


脳筋が極まるとこうなる。

イカちゃんはこれまでにないくらい整っていた。


『……あれ?なんか、熱くなくなってきたぞ?

 ていうか雷のビリビリが逆に気持ちいいんだけど……?』


来夢はこの湯めぐりで、毒耐性と、雷火耐性スキルを密かにゲットしていた。


脱衣所に行くとヒョドがイカちゃんにミッカチョジュースをあげていた。


「ドラゴンブレス上がりのミッカチョジュースしみるぜ〜!!ありがとな!ヒョド!」

ヒョドは嬉しそうに一緒に飲んでいた。



着替えを済ませ、出口で待つゴブンと合流した。


「来夢さま、いかがだったでしょうか?」


ニコニコ笑顔が余計に辛い。


『魔王陛下は湯に浸かりながらも日々鍛錬されているのですね』


「???」


とりあえず当たり障りなく濁した。




さて、いよいよ魔王さんとのご対面だ。


その前に無限収納を開いて持ってきた荷物の再確認をした。


お引っ越しのご挨拶の粗品と

ヒョド特製贈り物三点セット(芽命草ポタージュ・森の根菜癒やしたっぷりスープ・やさしさ入りおかゆ)100人前。


あとはーー


今朝採れたばかりのミッカチョ!!

木箱を高級風に錬金して詰め込んできた。


ひのきの高級木箱をイメージしたらすぐ出来た。

50個びっしりと綺麗に詰め込んだ。


何度も頭の中で予行練習をしながらご挨拶のイメージをする。


案内された廊下の突き当たりにそれが現れた瞬間、来夢は思わず足を止めた。


廊下はさっきまで質素な木目だったのに、最後の十歩だけ急に豪奢になっている。

壁の燭台には青白い炎がゆらゆらと灯っていた。


そして、正面。


黄金が……ドーン。



扉は、ただの金色じゃない。

光を反射するだけの表面ではなく、金の紋様がゆっくりと蠢いている。


中央には巨大な魔紋が彫り込まれ、

周囲には魔王樹の蔦を模した文様が絡みつき、

その隙間に宝石のような魔石が10数個、埋め込まれている。


魔石ひとつひとつが違う色で輝いて、

まるで星座のようにうごめくのが分かる。


取っ手は、手をかけるには明らかにデカすぎる。

まるで大人の肩幅くらいある金属製の獣の爪のような形状で、虹色の光を薄く反射させている。


さらには──


扉の前の空気がふわっと重くなる。


圧、だ。


入ってもないのに玉座の間の格が伝わってくる。


そして扉の上部。


黒い石板に、荘厳な古文字でこう彫られていた。


魔王玉座殿まおうぎょくざでん


ただの部屋名のはずなのに、

まるで「ここから先は、覚悟して入れ」

と言われているかのような迫力があった。


来夢、心の声。


ちょっと待って……

緊張してきた。

ゲームで装備整えてラスボスの部屋の前に来た時みたいだ。


セーブポイントないんですよねぇこのゲーム・・・



引っ越しの挨拶に来ただけなのに場違い感 MAX

な空気が何よりも居心地悪かった。



扉がゆっくりと開き、ゴブンの後に下を向きピッタリついて歩いて行く来夢であった。


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