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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第十一話 魔王へのプレゼントを決めました

魔王はゆっくりと文面に目を落とした。


拝啓

魔王陛下におかれましては、本日も健やかなる日常をお過ごしのことと存じます。


このたび、私どもは危険度5区域にご縁あってお引っ越ししてまいりました。

“近隣トラブル=命の危機” という当区域の特殊な風土を鑑み、円滑なご近所関係の構築を最重要項目としております。


つきましては、ご迷惑にならぬ範囲で近日中にご挨拶へ伺います。

その際、ささやかながら「プレゼント」をお持ちいたしますので、

「人間の土産など興味ないわ!」と燃やさず、とりあえず受け取っていただければ幸いです。


当方は今後も、 『相互不干渉・相互無害・相互穏便』 をモットーに、

安全で快適な黒紡ぎの森ライフを築いていく所存でございます。


何かお気づきの点がございましたら、お気軽に破滅のオーラなどでお知らせください。

分かりやすく配慮いたします。


敬具


来夢


最初の一行を読んだ瞬間──

眉間のしわが、ぴくりとほどけた。


「……引っ越しの……ご挨拶……とな?」


玉座の間に、しん……と沈黙が落ちる。

魔王の黄金の瞳が紙面を追うたび、表情がわずかに揺らいでいく。


困惑。

驚愕。

そして最後に──


「……ぷっ」


小さな噴き出し笑い。


「なんじゃ、この者は……!」


その笑いには、

魔王がどれだけ長く“敵意”と“怨嗟”しか受け取ってこなかったかが滲んでいた。


胃の痛みさえ和らいだのか、魔王は胸に手を当て、少しだけ姿勢を正した。


「ふはーっはーっはー!」


手紙を読み終えてもなお大笑いする魔王。

笑うたびにミシミシと揺れ動く城。

ため息とは違う揺れだ。


重苦しかった空気も一変し、城全体、いや、森全体が明るくなった。


「はー!こんなに笑ったのは100年ぶりかもしれぬ。来夢とかいうやつがお前の主か?中々の手練れであるな」


手紙から感じ取れる魔力からやんわりと伝わる優しさ、と、この懐かしい匂い。

文面は奇怪だが・・・いや、間違いない。


魔王は何かを悟った。



「そう。我が主は手練れなのだ。して、この果たし状受けるつもりか?」


「ぬ?お主は何か勘違いしておるぞ」


そう言いながら手紙をエコーに見せた。


「ふふ、ふふ、ふふふ」


エコーも笑った。


主は決闘ではなく、魔王と仲良くしたかったらしい。流石は私の惚れ込んだ主だ。器が大きい。


「して、返事は?」


「大いに歓迎いたす。気をつけて参れと伝えよ」


「あいわかった」


その夜魔王は何度も手紙を読み返した。


表情が明るくなり、重苦しい空気にならなくなった。


来夢と会えばもしかしたらわしの悩みを解決してくれるかもしれない。


そう感じたのだ。


一夜明け、森の空気が変わったことに魔物達は気付いた。


「まさか!魔王様が・・・!」


家来達は急いで魔王のいる、玉座の間へ向かった。


数十匹の主要な魔物達が一堂に会し、玉座を先頭に整列した。


久しぶりに大臣、四魔将、兵士、侍従達が大集合した。


「お、お主達どうしたのじゃ?」


「魔王様こそ、お顔が晴れてどうなさいましたかな?今まで忙しなく、留守をしておりましたが、森に異変が起き、もしやと思い馳せ参じた次第でございまする」


「うむ。皆、これまでよく尽くしてくれた。

つい先日、我が手元へ一通の書状が届いた。

その文面……もし真であるならば、

人間どもと無益な争いを繰り返す必要が無くなるやもしれぬ──

そんな希望を抱かせる内容であった。」


辺りが一斉にざわつく。


「ま、真でございますか?あの人間どもですぞ!?私は信じられませぬ!」


名誉職である筆頭大臣のシャルバ・ネクルが言った。


「では、この手紙を読んでみよ。人間からの手紙じゃ」


一読するシャルバ。


こ、これは!この手紙に宿る魔力にほんのりと込められた優しさ。と、この匂い。


そしてこの文面。


何より『相互不干渉・相互無害・相互穏便』 をモットーにという言葉たち。


興奮気味にシャルバは言う。

「これは、人間との和平条約ですかな!?しかもこの匂い、相当信用の出来る・・・これは疑いようのない和平条約ですぞ!!!」


筆頭大臣兼四魔将でもあり、魔王に次ぐ権力者であるシャルバは泣いた。


ざわざわする一同。

「いや、まさか・・・」

「だがシャルバ様が泣いておられる!」

「あぁ。間違いない!人間からの和平の申し込みだ!」


盛大に盛り上がる一同。

ある者は歓喜のあまり泣き崩れ、ある者は舞い踊る。


魔王は言う。


「もはやこれ以上の言葉は不用じゃな」


「静まれ!皆の者!よく聞け!これより来夢殿御一行を盛大にもてなす準備を執り行う。これに成功すればこの魔領、いやこの世に平和が訪れる。心してかかるように」


「はっ!」


一同解散後、シャルバをこっそり呼び出した魔王。


「シャルバよ。この書状にある「プレゼント」とやらはなんじゃ?」


「はて、私の方が聞きたいと思っておったところでございまする。ですが、文面からして、害は無さそうかと・・・」


うむ・・・

安心させておいて呪いの魔法がかけてあるモノとか・・・まさかな?・・・ささやかなプレゼント・・・

もしわしの思ってるモノとは違う方に事が走ったらと考えるだけでまた胃がキリキリしてきた。

もう後戻りは出来ないのだ。






その頃来夢は・・・・


エコーから良い返事を聞き、破滅のオーラも出ていないことに気付いていた。

むしろ、今までの森の中の薄暗く淀んだ空気がなくなった。

(いつもならイェイな家の周りだけ結界により明るかったが今は森全体が明るいようだ)

これは完璧にご近所同士仲良くしましょうの合図だよな!


やったぜ!


そうと決まれば早速プレゼントの用意だ。


格上の人にプレゼントって一番困るよな。

魔王さんって大体の物は持ってそう(手に入れてそう)だし。


通貨があるか分からないけど、金目の物をって考えた時に雑巾で出来た魔昌石をって思ったけど、

賄賂みたいでいやなんだよね。


これは政治じゃない。

ただのご近所付き合いだから。

とりあえず第一関門は突破してるし、心のこもった物の方が一番誠意が伝わる。


プレゼント・・プレゼント・・・魔王さんって何が好きなんだろう。


俺は魔王のことを何も知らない。それが大問題だ。

相手のことを知らずににプレゼントを贈るなんて、そんな高度な技聞いたことがないよな。


魔王事情をチュニに聞いたら


「知らんっちゃ。

興味も、関わる意志もないっちゃね」


指で銃を作り言葉と共にパンっと発したので、俺は撃たれたフリをしてみせた。


相変わらず子どもっぽいやつだ。


冷たいやつめ。

そうだ、エコーなら一度会ってるし、

何か分かるかもしれない。


『エコーいる?』


「ここに」


どこからともなく現れるエコー。


『魔王さんって見た感じどんな人だった?』


「一言で申しますと『日々の業務負担により、目はうつろで精神的限界を迎えた個体』 にございます」


んんん?


日々の業務負担=神様みたいなデスクワーク?

目がうつろで精神的限界=業務過多で寝不足?疲労?ブラックの極み?


この世界、もしかして地球と似てる〜!!???

そもそもエコーがシゴデキすぎるのも気になる!

ビジネスマンぽいし!

なんなら秘書になれる程の優秀さ。

精神的限界とは・・・?


『あのさ、魔王さん、疲れてたの?』


「重苦しい空気で元気がなく、ため息で城が揺れておりました」


ええええええええ!?

何それ何それ!?

城が揺れるってため息深すぎない?


いや!深くても揺れないでしょ普通!


『魔王さん、なんでそんなに疲れているか分かる?』


「はっ・・・どうやら板挟みになっている模様。

腹を抑えており、それが原因かと。詳しくは当日お話があると推測します」


分かっちゃった・・・


魔王さん、あんた、中間管理職じゃん!!!


板挟みってそうゆうことでしょ!?


腹を抑えてたってのは、上からの圧と下からの圧で押しつぶされそうで胃がキリキリ痛いってことなんじゃないの!?


誰!?魔物の世界で魔王より偉い人って誰!?

俺、知らないよ?!!


はぁ〜なんだか俺もため息でちゃったわ。


自分がゲームとか漫画で見る魔王と現実の魔王は少し違うのかもしれないなぁ。


それにしても有益だなぁエコーさんは。

これからは困った時のエコー先生と呼ぼうかな。


『ありがとうエコー助かったよ』


またご褒美にレアな卵の殻をあげたら、ニッコリとしていた。


魔王へのプレゼントが決まった!


胃に優しくて元気になる食べ物を渡そう!

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