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やっつけ転生〜絶景スポット探してたのに、なぜか救世主ポジにされて困ってます〜  作者: アサゴ


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第一話 忙しい神様にやっつけで転生させられました

俺の名前は有野来夢ありの らいむ

三十四歳、某お寺の一人息子で、修行に励む毎日。


境内の朝はいつも冷んやりしている。

夜露が石畳に染み込み、掃き掃除を始めると、竹箒の音がしんとした境内に小さく響く。


修行といっても派手なことは何ひとつない。

落ち葉を掃き、本堂の床を雑巾で磨き、草を刈り、壊れた蛇口を直す。

日常の勤行ごんぎょうをこなし、気づけば夕方。

ふと見上げると、山の向こうに陽が沈んでいる。

そんな毎日が続いている。


刺激があるわけじゃないが、退屈すぎるわけでもない。

けれど、生まれた瞬間から住職になることが決まっていた人生だ。

“選んだ”んじゃなく、“選ばれていた”人生。

そのレールの上を歩き続けることに、不満がないと言えば嘘になる。


それでも、どんな仕事だって真面目に続けていけば食べてはいける。

平々凡々な人生で構わない。

そう思っていた――つい、この瞬間まで。


「明日も掃き掃除だから早く寝るか」


いつもより少し早めに布団を敷いた。


眠気はすぐにやってきて、俺は静かな闇の中へ落ちていった。



・・・うん。寝たんだ。

俺は確かに寝たよな?


まぶたを開けると、世界が黄色いモヤに包まれていた。

部屋のようでいて、壁らしい壁も見えない。

足元もふわふわしていて、立っているのか浮いているのかよく分からない。


『夢?だよな?』


返事が返ってきたのは、俺の背後でもなく、頭の内側でもない。


『夢じゃないぞ?お前は死んだんじゃ』


『!? だ、だれ?死んだ?

 俺さっきまでピンピンして動いてたんですけど!?』


『・・・と、思っておったろ?

 気持ちよく寝ながら死んでいたぞ。

 俗に言う突然死というものじゃ。

 まぁ、そんなことはどうでもよい』


『どうでもよくあるかーい!!

 大体誰なんですか!あなたは!』


黄色いモヤだけが、俺の叫びにゆらりと揺れた。

その奥で、何かが忙しそうに紙をめくる気配だけが響いていた。


近寄ると、何やら山積みの書類に囲まれて変なおじさんが座っている。


変なおじさんと言っても、天然?のスキンヘッドに生やしっぱなしで逆立ちしてる白い眉毛、味噌汁飲んでたら3回くらいはお椀にインしてしまいそうな白く長い髭。


服装は真っ白なワンピース?あ、あれ?

頭の上には・・・うっすら輪っかがある・・・!?

これはもしや・・・?


体には、胴体以上に立派な羽が2つ生えて・・・

後ろには大人1人分ほどの長い杖・・・


!!!!!

『あの、つかぬことをお伺いしますが、もしかして、神様でございますか?』


老人は忙しく作業してた手を止めた。


神様『左様。やっと気づいたか馬鹿者が!』


『ひぇ!』


咄嗟に土下座してしまった。


無理もない、由緒正しきお寺のお家柄、神様とは途方もなく尊いお方であると理解しているのだ。


こんなこと言うと全ヲタクを敵に回しそうだが、その辺のヲタクが『尊い』と口にする尊さとはまた種類の違うものだ。


『無礼な物言いをお許しください。

それで、私はなぜこのような場所にいるのでしょうか?』


神様は、俺の前でまるで空気を折りたたむような仕草をして、どっかりと腰を下ろした。


『うむ。若者にしては熱心に朝昼と祈りを捧げてくれた。

お前はお願い事ではなく、ただただ“ありがとう”と感謝を述べておった。

これ、実に感心なポイントじゃ。

このご時世中々おらん逸材じゃて。』


黄色いモヤがぽふぽふ揺れて、まるで相槌を打っているようだった。


『だがな…残念なことに、人より早くぽっくり死んでしまったようなのでな?

お前を異世界に転生して差し上げようと考えてな?』


異世界。

その単語を聞いた瞬間、胸のどこかで古いページがパラッとめくれた。


(そうだ、この流れ…このパティーンは…!)

子どもの頃に聞いた異世界転生の物語。

死んだ魂が神様に導かれ、チートだの祝福だのをもらって第二の人生を歩むアレだ。


神様が急にだみ声を張り上げた。


『だがソーリー。今のわしは忙しいんじゃ。

毎日100万件のお願い事書類に目を通さんといかん。生活分野だけでじゃぞ?』


黄色いモヤの奥で、紙束らしきものがドサァッと崩れ落ちる気配がした。


『やれ、財布が戻ってきますよーにーとか、

明日晴れますよーにーとか、

隣人の生活音が大きすぎてうるさいでーすとか。』


ひとつひとつ読み上げるたび、紙の山が呻き声のようにミシミシ沈む。


『もはやクレームとお願い事の区別もついとらん。

多すぎて、もうどうでも……ワッタッファ!!』


突然の神様の大きな叫び声に合わせてモヤがビクッと震えた。


『ごほごほん。頭痛が痛くて敵わんわい…』


頭痛が痛いという重ね言葉の破壊力がすごくて笑いそうになった。

本当に神様なのか?


神様は再び紙の山に埋まりながら、くどくどと愚痴を垂れ流し続ける。


『はぁ…もう生活の悩みは尽きん。

財布、天気、近所トラブル、人間関係、

最近はスマホの画面割れまでお願い事に入っとるんじゃ。そんなの修理屋に行けばいいのに。

ワシの仕事じゃないわい!』


黄色いモヤが左右に割れて、後ろの書類が滝のように流れ落ちていく。


俺は突っ込むべきか黙るべきか迷ったが、

この神様、放っておくと永遠に喋り続けそうだ。


神様というお立場の方でも大変な世の中なんだなぁ。

途中愚痴が入ってた気がするが・・・


声、震えてるし、辛いんだなきっと。


天界も結構ブラックなようだ。


それはそうだ。

ここは天界と言っても、現代社会の天界だ。

確かに下界がブラック濃いめなのに上界がホワイトなんて有り得ないもんね。繋がっているはずだから。


『というわけで、お前にかまってやれる時間がもうわずかしかない。ア リトルじゃ。

取り急ぎスキルだけ授けたいのだが、何か欲しいスキルはあるか?』


なるほど、転生させてあげたいけど時間がないってことだろう。



・・・・・・今までの愚痴タイムいらなかったのでは?



まぁいいか。

取り急ぎのスキル・・・これは慎重に考えたいところだが。


しかし、スキルと言ってもこれから行くところがどの時代でどの世界かも分からない。


そして何より俺にはとんでもない力なんて不相応だ。


使いこなせる自信がないからだ。

使う機会もあってほしくない。


ここで俺が無茶言っても神様の過労が増しかねない。

神様を過労死させてしまったら地獄の果てでも呪われるかもしれない。


ましてや、お願い事で忙しい神様にあれもこれもとお願い事をするのはとーっても忍びない。


よし。ここは一度死んだ身。一か八かだ。


『あの、普通に生活出来れば充分なのでそうゆう処遇だけいただければ・・・』


『ふふ。よかろう。

お前の願いはかいわれ大根みたいに自己主張ないのぅ』


やば。もっとわがまま言って良かったか?


『元々徳の高い人物じゃから其方を選んだのじゃ。

ふむ。気に入った!

普通に生活出来るように、のぅ?ふぉふぉ。

あい分かった。早速取り掛かろう』


神様は黒い神に赤いインクを細く小さく垂らしながら考えこんだ様子だ。


・・・10分は悩んでいる。

ここは天国っぽいのに地獄の10分だ。

家に帰りたい。帰る家ないけど。


「っすぅ〜。あれとそれと、いや、これも必要か?

後これと、この後でこれも必要じゃし・・・

一旦これいれてみて、いや、アレと被るか・・・

あー!意外とめんどうな願いじゃわい!」


黄色いモヤがまた、ビクッとする。

え、めんどうって嘘だろ?所詮かいわれ大根な願いだよ?

アレコレしか言ってないけど、歳とると咄嗟に名前出ないのは分かるな〜。

あれ取って〜とかね、どれだよ!って。


チャンネル取って〜っていやそれリモコンだよ!って。

やっと名前思い出しても間違えちゃうってね!


神様は間違えないだろうけど!!(不安)

フラグになりませんように。


「他の仕事が一向に捗らんわい!

まとめて全部これで良いか!

えぇーい!持ってけ泥棒!!」


ん?投げやり?

こっちの仕事、やっつけてませんか?


「・・・・・・こほん。

とまぁ、少しだけオマケをサービスしてやったでの。」


え、ど、どれ?オマケ?

何のことか分からなくて困惑していると、神様が言った。


「ん?オマケとサービスは一緒かの?

ふぁっふぁっふぁっ、ふぁ〜↑↑!!!」


急に引き笑いをしだした。

いや、そうじゃない。


「ちょっとツボったわい!グッジョブじゃ!』


ツボった拍子に赤字で色々書いていた文字のようなものがぐちゃっと潰れた。


一体何にツボったのだろう。


それにしても、オマケって八百屋か!

確かに子どもに向けるような満面の笑みが八百屋のおっちゃんぽいけど!


もしかしてお願い事100万件じゃなくて1万件だったんじゃないか?!


100万円のおつりね〜みたいな軽いノリで言ってたんじゃないの!?


それに、所々英語混ぜてくるのは発作か!?

たまに英語使わないといけない病か!?


だ、大丈夫かな〜めちゃくちゃ混乱しててこっちが大混乱・・・

最後なんて面倒になってすんごく適当だったよね〜?

色々全部書いてた紙の赤字、ぐちゃってたからね?!


はーっ・・・はーっ・・・はーっ・・・

ツッコミどころがありすぎてどっと疲れた。


物凄く不安だ。


って心の中で色々考えてるうちに

俺の身体がどんどん透明になっていく。


ぶつぶつと言いながら黒い紙が真っ赤に染まるまで手を動かし続けていた八百屋神(勝手にあだ名つけた)


俺が消える直前には、真っ赤になった黒い紙をモヤに食べさせながら手を振って見送ってくれていた。


それに気付いた俺はとりあえず深々とお辞儀し、感謝を示した。


頭を垂れながら、それ食べさせていいんですか?泣

と最後まで頭を悩ませた。


考えるのはよそう。

俺はポジティブ人間なのだ。

何はともあれ、今まで選べなかった人生だけど異世界では選べるということだよね!

意外とワクワクしてきた。

何にも縛られず自由に、楽しく!


「慌てて行かせてしまったが忘れもんはないかの〜?」


慌てんぼうで心配性な神様をよそに、俺は黄色い光にどんどん吸い込まれていき

未知なる異世界へと旅立つこととなった。


そこで待ってるのは

俺のワクワクとは裏腹の場所だということも知らずに・・・


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