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リライフ  作者: おじぃ


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8/12

ツチウラサクラ8

 ステンレスの車体にオレンジ色と黄緑色の帯を纏ったモダンな電車は、工業地帯の南端にある始発駅、新時原しんときはらを発車して南へと走り出しました。


 電車は、飛行機が離陸する時ように一気に加速し、新幹線のような速さで地球では見たことのないモノレールに似た特殊なレールの上を滑走しながら雲をみるみる追い抜いて行きます。


 程なくして、景色はただずっと緑色の平野へと姿を変え、やがてビル群に突入した。間抜協会まぬけきょうかいという大都市を目指します。


 ビル群の入口にある次の駅、新ドミノタウンに間もなく停車しようと電車が速度を落とし始め、駅に到着する旨の自動放送が終わった時、トノサマフンガさんは、あっ、そうそうと話を切り出し、私をフンガ星へ連れてくれた理由を教えてくれました。


「う~んとね、簡潔に言うと、キミは人間界の神様と、ボクチャンたちフンガから選ばれた、優れたハートの持ち主だからフンガ星に来て、第二の人生を送る事を許されたんだよ~ん」


 さらりと神様の存在を前提として話をされたら、通常なら動揺するところです。しかし今現在、地球外生物という奇想天外な相手であるトノサマフンガさんとコミュニケーションを取っているという現実を踏まえ、その存在はごく自然に受け入れられました。


「そうでしたか。しかしながら、私は自身が優れたハートの持ち主などとはとても思えません。もし本当にそうであれば、あのような間違いなどしなかったはずです」


 私がもっとしっかりしていれば、あのような結果にはならなかった。いっそ、断ち切ってしまえば良かったのかも知れません。


「いや、むしろボクチャンたちはキミのそういう所を評価したんだよ~ん」


「え?」


 何故愚かな私をこのような場所に連れて来たのでしょう? いえ、愚かだからこそ人間界の神様に見捨てられ、フンガ星で彼らに支配されながら奴隷のように扱われるのでしょうか。


『優れたハート』というのは、彼らが気弱な私の意に反する事を指示しても抵抗せず、従順で扱い易そうな人間と判定されたのでしょうか。


「キミがどういう理由で力尽きてしまったかはボクチャンも知ってる。そりゃ未練いっぱいだと思うよ。だからこそ、キミはフンガ星で生きる選択をして良かったと思うよ~ん♪♪」


「それは、どういう事でしょうか」


「いや別に疑問を抱くような事じゃないよ~ん。単純に、例え星は違っても、生きてれば未練を晴らすチャンスが来るかもしんないじゃん♪♪ 


 ……特に、君が抱えてるような未練はね。


 フンガ星への招待の流れについて、重ねてもう少し詳しく説明すると、人間界の神様と、ボクチャンたちフンガ星各国の担当者が、優れたハートを持った地球人を選抜してフンガ星へ招待するというのが最重要事項で、さっき説明した通りだよ~ん。んで、日本人が対象者の場合、人間界の神様とフンガ星の日本国王であるボクチャンとで話し合って選抜する。


 選抜が終わると、宇宙施設会社に選ばれた人間たちのプロフィールと、人間界の神様が指定した彼らの死亡予定時刻が記載されたリストが送られて、宇宙船の乗組員たちが対象者を死亡寸前に治療や蘇生により救命する。


 救命に成功した場合、本人の回復を待って、フンガ星でのセカンドライフを検討してもらうシステムだよ~ん。


 死亡寸前に迎えに行くのは、万一対象者に自殺されたら困るから、自らの身動きが不能になるまで放置するためなんだな~。


 自殺を試みて負傷等をした人は、人間界の神様との協定で、フンガ星移住の対象外になるよ~ん。


 残念ながら、迎えに行くまでに対象者の命が尽きてしまった場合は、ご冥福をお祈りする事になっちゃうけどね」


 なるほど。しかしこれでは私を地球から50億光年も離れたフンガ星へ連れて来るメリットや、自殺者を救命しない理由が曖昧だ。


「わかりました。せっかく救っていただいた命ですので、このフンガ星で精一杯生きてみようと思います。これから数多あまたのご迷惑をおかげしてしまうかもしれませんが、何卒よろしくお願い致します」


「まぁまぁそう硬くならず、人生エンジョイしてね~♪♪」


 トノサマフンガさんやフガオさん、モンテローザさんや宇宙船乗組員のフンガさんたちにお世話になって、彼らが人間たちを支配したり奴隷しようと企んでいるなどとはとても思えません。


 うん、きっと大丈夫。奴隷にされるなんて、私の考え過ぎだよね。


 それに、命を救ってくれた方を疑うなんてとても失礼だ。


 地球での出来事がきっかけで、私は誰かを信じることに臆病になってしまった。


「あの…」


 私は人間をフンガへ連れて来るメリットや自殺者を救命しない理由を質問しようとした。


『まもなく、終点、間抜協会、間抜協会……』


「あっ、もう着くね~」


「あ、はい…」


 気がつくと電車は私たちの目的地、間抜協会駅に到着する寸前だった。停車するとすぐに扉が開き、トノサマフンガさんは、お客さん、終点だよ~ん♪♪ と、私を促し電車を降り、電車の前方、車止めの向こうに見える改札口とみられる方へ歩き出した。


 お客さん、終点だよ、というフレーズはこの星にもあるという新たな発見があった。


「さて、じゃあ駅の窓口に行って桜のDNAを登録するよ~ん♪♪ 登録すれば残高がある限り、この国での買い物とか決済が自由に出来るようになるよ~ん♪♪」


 話の流れや駅や街の喧騒で、とても質問を出来そうにはないと、私は自分に言い訳した。


 もう少し積極的な自分になりたいな……。


「さ~てと、じゃあさっさと登録し~ちゃい~ましょっ♪♪」


 地球でも利用したことがあるような雰囲気のきっぷを発売する窓口の自動ドアが開き、列に並ぶと、すぐに私たちの順番が来た。


「いらっしゃ~い。トノサマフンガと一緒ってことはDNAの登録かい?」


 緑色の制服を着た窓口のフンガさんが親し気に用件を訊いてきた。


「そうだよ~ん。フガオからある程度の情報が行ってると思うから、土浦桜って名前で検索してみて~」


 窓口のフンガさんは端末機を叩き、すぐに私の名前を見つけた。


「名前あったよ~ん♪♪ じゃあ桜ちゃん、これに目線を合わせながら指を押し付けてね~。これでDNAと静脈に指紋、あと眼の情報をまとめて登録するよ~ん♪♪」


「はい、わかりました」


 パソコンのマウスより小さい、情報を登録するためのカメラが付いた端末機の赤いクリアカラーの部分に指を押し付け僅か一秒後、ピピッ! と音がしたのと同時にシャッター音が聞こえた。


「はい、登録完了だよ~ん♪♪


 いまこの瞬間、国家から桜ちゃんにフンガ星への歓迎の意を込めて三万円のお小遣いが支払われたよ~ん♪♪


 ストアードフェア(SF)、つまりこのDNA認証システム、Yubitaユビタで使える金額を増やすには銀行口座を開設して預金から引き落としたり、うちの会社(湘南太平洋鉄道)の駅の券売機に現金を投入すれば残高が増えるよ~ん。銀行口座からYubitaにお金を移す場合は、使い過ぎないように限度額の設定をオススメするよ~ん♪♪


 Yubitaは『遺伝子情報等による身分証明及び決済等認証システム』っていう決済とか身分証明手段のひとつに位置付けられてて、地球にある電子マネーみたいな感覚で使えるよ~ん♪♪ もちろんフンガ星でだってYubitaを使わずに現金での買い物とか取引も可能だよ~ん」


「はい、わかりました。丁寧なご説明ありがとうございます」


「はいはいどうもね~♪♪ 今後ともごひいきに~♪♪」


「はい、失礼します」


 会釈をしてトノサマフンガさんと一緒に窓口を出ると、私はさっそく駅の改札機に自分の指を触れ、遺伝子情報等による身分証明及び決済等認証システム、Yubitaを使ってみます。


 ちなみにこの改札機、フンガさんと私たち人間が共通して使えるように、機械の上部と下部の二ヶ所に切符の投入口やYubitaやICカード用のタッチパネルがあり、ゲートは強行突破されないように横方向に開閉する、人間の胸の高さほどある自動ドアになっていて、挟まれたらとても痛そう。


「うわ、すごい! 開いた!」


 指を触れるとピコン! という音とともに改札機のゲートが開く。それだけで、今までなかった新しい感覚にワクワクして目を輝かせたのが自分でも解った。


「さて、フンガ星で暮らすための準備が一通り整ったね♪♪ これから桜は国からの生活補助をしばらく受けられるけど、いつかは自分で生活基盤を築かなきゃいけなくなる。


 桜はケーキ屋さんの仕事に興味があるみたいだけど、ボクチャンはこの星で二千年以上生きてきて、ケーキというものの存在を地球人から聞いたことはあるけど、未だに見たことはない。


 そこで、せっかくだからこの星にケーキというものを誕生させてみない?」


「はい!?」


 トノサマフンガさん、二千年以上生きてるの!? フンガ星にケーキがない事よりそっちの方がビックリです!!


「まぁ驚くかもね。ちなみにフンガは草食動物だから、『乳製品』という物もこの星には存在しない。ウチ等にとってケーキとは、正に未知の世界。どう? 生クリームの原料すらないこの世界で、未知の世界を開拓してみたいとは思わないかい?」


「はい! なんだかワクワクしてきました! ケーキ、つくらせてください。ケーキ屋さんになるの、夢なんです!!」


「そりゃ良かった! じゃあケーキ屋さんになるのを目標に就職活動をしよう」


「はい!」


 パティシエになってケーキをつくり、それを自分の店で提供して、食べた人を笑顔に、幸せな気持ちにしたい。それが私の夢。けれど、地球に居たらきっと安定した生活を求めて自分に嘘をつきながら日々を過ごしていたと思います。


 本当に、フンガさんたちに助けてもらえて良かったと心から思った瞬間でした。


 謎は多々あるけれど、この星で頑張ってみよう。前に進もう! そうすれば、夢をひとつ叶えられるかもしれない。


 ところでこの駅、なぜ間抜協会まぬけきょうかいというのでしょうか?


 なぜ、『マヌケ』なのでしょう?


 往路の電車に乗る前から、ずっとそれが気になっていました。


 ホテルに戻ったら名前の由来を調べてみようかな。


 ううん、トノサマフンガさんに訊いてみよう! 内気な自分から脱却しなきゃ!


「あの、ひとつ質問よろしいでしょうか」


「なぁに~?」


「この駅、なぜ間抜協会という名前なのでしょうか」


「へ……?」


「この駅、なぜ間抜協会という名前なのでしょうか」


「あ、うん、聞こえてるよ……」


 はわわっ!? いつも陽気なトノサマフンガさんがまさかの沈黙!! もしかして触れてはいけない所だったの!?


 小さな勇気が大きな後悔を招いてしまいました!!


こんにちは


世界観の説明に終始しているリライフですが次回から人間の新キャラクターが登場し、物語は加速してゆきます。お暇な時にご覧いただければと思います。

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