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リライフ  作者: おじぃ


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6/12

ツチウラサクラ6

フガオさんのお茶目な話を聞いた後、私たちは宇宙の玄関口、宇宙港(うちゅうこう)から街中へ向かうため、タクシーに乗った。


いまのところ、宇宙港からの公共交通機関はタクシーのみだそうだが、近い将来、フガオさんがアルバイトしている民間宇宙施設会社の『ステラーエクスプレス』がタクシープールと乗り場の混雑緩和と、低価格な移動手段の整備により宇宙港の利用者を増やすため、その敷地内に市街と連絡する線路を敷設して鉄道会社に貸し出し、駅を開業する予定らしい。


このタクシー、地球のタクシーと同仕様のものはほんの一部で、主力はフガオさんたちフンガの顔をした『ロボットフンガ』の背中が乗客を乗せる箱になっていて、その中に二人分の椅子がある、電動式で自動運転のオープンカーとなっている。




雨の日や寒い日も構わずオープンカーで営業するらしい。


今日が晴れてて暖かい日で良かった。


ちなみに古いタイプのタクシーは、乗馬同様、背中に跨がって乗る一人(一匹)乗りタイプで、タイヤや浮力ではなく四本の脚で走行するらしい。


まるで騎手になったような気分を味わえるそうだが、全身へ凄まじい振動と衝撃が走る。振り落とされたら大怪我必至。


例え無事に目的地まで辿り着けても頭痛や目眩、吐き気を起こすだろう。動力はガソリンや軽油に頼っているのだという。


私が乗ったのは新しいタイプで良かった。と一安心。


タクシーは舗装された草原の二車線道路を静かに、しかし颯爽(さっそう)と駆け抜けてゆく。


地平線が見えそうな緑の景色と、澄んだ空気や適度な走行速度で風が気持ちいい。


進行方向左側を見ると、遠くに横に広くて背が高そうな木が一本だけ立っているのが見える。


そのたった一本の大木と、ひたすら広い草原が日時計の役割を果たしているので、本州の神奈川県から南に500メートルほど離れたこの島を『時原島(ときはらとう)』と呼ぶらしい。




フンガ星にも神奈川県あるんだ…。




ブファンッ!!


「えっ、何?」


走行中、一瞬だけ右側から凄い風が吹いた。


「あぁ、対向車だよ~ん。それにしても飛ばすなぁ、200キロ近く出てたんじゃないの? ん? あのロボットフンガはもしや…」


「これそんなに出せるんですか!?」


次の一瞬、今度はドンッ!! と、タクシーが何かにぶつかったような衝撃を感じた。


ウィィィィィィン!! ガクンッ!!


私たちが乗るタクシーは急停車。


「ただいま、公衆との接触事故が発生致しました」


ロボットフンガのタクシーは昔のドラえもんの声を更に錆び付かせたような声で案内した。


「うそっ…」


ぞっとした。


私は小さな頃、知らない猫が轢かれ、血だらけになってもがき苦しんでいるのを見て、ショックで大泣きした事がある。


当時の記憶が蘇る。


「あぁ、大丈夫だよ~ん♪♪ やっぱりコイツのロボットフンガだったか~」


「どこが大丈夫なんですか!! 轢いちゃったんですよ!? というより、やっぱりってなんですか!?」


震えながら振り返ると、20メートルくらい後ろに気を失ったと思われるフンガの姿。よく見ると、頭に金色に輝く王冠のようなものを被っている。


「さっき擦れ違ったのは国王のトノサマフンガのマイカーで、コイツが自分でジャンク品を集めて違法改造した奴だよ~ん♪


で、ウチ等が乗ってるタクシーが轢いちゃったのは、ロボットフンガから振り落とされたトノサマフンガって訳だね~」


王様轢いちゃった!!!


というより、王様がマイカーを違法改造するなんて、この国、大丈夫なのかしら?


あれ、もしかして、王様を轢いちゃったってことは…


私、フンガ星来て即刻死刑ですか!!!?


地球に居たらとうに死んでいたのだから、仕方ないか…。


でも、フガオさんは?


私を案内したがために殺されちゃうの?


「とりあえずコイツの家まで運んでやるか~」


いや、意識も無いし、こんなに大怪我しているのだから、消防と警察に通報するのでは? それともフンガ星にはそういう機関がないのかな?


しかしフガオさんは、何ら慌てることなく、血だらけの王様をタクシーのトランクに放り込み、というよりは、乱暴にぶち込み、タクシーは再び走り出した。


そして、ようやく市街と思われるビル群が見えてきた所でタクシーを止め、コイツこの辺に住んでるからと言って、気を失ったままの王様をトランクから引っ張り出して投げ棄てた。


もしかして死体遺棄ですかー!!!?


それにしても、なんて残酷な事を平気でやるのだろう。もしや、独裁的な王様で、国民から恨みを買っているとか? でもだからといってこんな事したらいけない。


「フガオさん、この星に救急車はないんですか!?」


「あるよ~ん」


「なら早く呼んで下さい! このままじゃ王様死んじゃいますよ!?」


「え~、しょうがないなぁ」


フガオさんは渋々救急車を呼び、5分後、王様は搬送されて行った。


その後、私はフガオさんが手配してくれた、街にあるビジネスホテルの『人間用シングルルーム』に連れて行かれた。部屋のインテリアは地球にあるビジネスホテルそのものだ。


フガオさんとはそこで別れ、私はこの星に来て初めて『一人ぼっち』になった。


ベッドに腰掛け、溜息を一回つき、そのまま仰向けに倒れ天井を見つめる。


今頃みんな、どうしてるかな? 私のこと心配してるかな? もう、死んじゃったことになって、お葬式されちゃったのかな?


地球に居る家族や友達の姿が浮かぶ。


◇◇◇


気が付くと、翌日の朝になっていた。


着ていた衣類を洗濯乾燥機に入れてからシャワーを浴び、備え付けの寝間着を着てフロントへ降り、『持ち帰り自由』と書かれたトレーに五部ほど重なった新聞を貰った。


下着がないとスースーして、周囲に人間の男性が居なくてもちょっと恥ずかしい。


フンガさんたちに混じり、バイキングで朝食を摂った。『レトパ』と呼ばれる、レタスのような野菜が主食らしく、ハムやベーコン等の肉類が一切ない。近くに居た毛色がドギツイ、レインボーで横ストライプのフンガさんに尋ねたところ、彼等は草食動物なのだそうだ。


レインボーのフンガさんが私の胸元に差し込んである新聞を見て言った。


「あ~あ、アイツ事故ったのか」


一面記事を見ると


『トノサマフンガ、200キロで大暴走!!』


と書かれていた。


昨日のアレだ…。


記事の大まかな内容はこうだ。


昨日16時頃、トノサマフンガは


『ブルーバードΣ゜)』


と、白いペンキで落書きされ、ジャンク品を集めて組み立てた、決して日産自動車のブルーバードではない自作の違法改造車に乗り時速200キロメートルほどで宇宙港付近の国道を走行していたところ、それに振り落とされ地面に落下。更に反対車線を走行するタクシーに撥ねられ全身打撲の重傷を負った。


事故直後、トノサマフンガを撥ねたタクシーに乗っていた、目撃者でタレントのマヌケフガオと、フンガ星を訪れたばかりの地球人女性が救急隊に通報、病院に搬送され命に別状はないが、トノサマフンガを振り落としてもなお暴走を続けたロボットフンガが宇宙港施設に激突し、爆発、炎上したが、幸い他に負傷者は出なかった。


トノサマフンガは退院後、宇宙港を管理するステラーエクスプレスから500億円を損害賠償請求される模様。もちろんその500億円は我々の税金だ。


トノサマフンガは入院中にも関わらず警察から事情聴取され、


「前回の凱旋パレードで大勢の国民から空き缶などのゴミを自分に投げられ痛かったので、次回のパレードではゴミが自分に当たらないうちに走り去れるよう高速走行可能なロボットフンガを開発して試運転しているところだった」


と供述した。


なお、マスコミ各社に情報提供したマヌケフガオは200万円ほどの報酬を得た。報酬は先日のパチンコ店事件で課せられた9億円の借金返済に充てるという。


というもの。


フガオさん、ネタ売ったんだ…。


ふと思い出したけど、確かあの道、法定速度は時速40キロだったと思う。


160キロもスピードオーバーするくらいなら、もうパレードをやらなければ良いと思うのは素人の考えだろうか。


それはそれとして、私はさっきから気になっている事をレインボーのフンガさんに、胸の絞まる思いで恐る恐る尋ねた。


冷や汗かきそう。


「あの、マヌケフガオさんと、その地球人女性って、どうなっちゃうんですか?」


「どうなっちゃうって?」


「警察に捕まって死刑になるとか」


「あぁ、別に何もないよ~ん」


「えぇっ!? だって、国王轢いちゃったんですよ!?」


「だって、車道に転がってるトノサマフンガが悪いんだもん。タクシーが歩道に突っ込んだ訳じゃないし。仮に轢かれた場所が横断歩道だったとしても、そこに信号が無くて、タクシーが法定速度守ってたら、不注意による飛び出しでトノサマフンガが罰金を払う事になるよん。むしろトノサマフンガは撥ねたタクシーの会社にも修理代払わされるだろうね。税金無駄遣いしやがって。でさ、キミがその地球人女性って奴?」


「はい、実は…。土浦桜と申します」


「ボクチャンはモンテローザだよ~ん。んじゃあ、トノサマフンガに会ってみるか。ボクチャン、アイツと知り合いだから。ついでにフガオとも」


「えっ!? そうなんですか?」


モンテローザさんは、ホテルの公衆電話を使って王様を呼び出した。フンガさんは手の形が馬のようで、大きな物を掴めないため電話機に受話器がなく、スピーカーから会話がまる聞こえだ。


こうして私は、これからお世話になるこの国の王様と、アポイントメントなしで会う事になった。

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