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リライフ  作者: おじぃ


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マヌケフガオの武勇伝2&ツチウラサクラ5

大量のパチンコ玉をカウンターに持って行くと、さっきぶっ壊したものとは別のロボットフンガが応対した。


「お客様、まず、住民登録情報の確認を行いますので、こちらの端末機に身体の何処かを触れて下さい」


ボクチャンは言われるまま、地球でいうEdy(エディー)Suica(スイカ)の決済端末機のような形をした、DNA認証装置に右手を触れた。これで、居住地の役所に登録された住民登録情報との照合をインターネットで行う。


ピピッ!


という音がして、確認は一秒で終わった。


「はい、認証されました。それではお客様、こちらへ起こし下さい」


ロボットフンガは、カウンターの後ろにある暖簾(のれん)の方にボクチャンを誘導した。


向こうの様子は真っ暗で見えないが、きっとこんなに大量の玉をゲットしたので、大量の景品や現金を渡すため、他の客の目を避けているものと理解し、そのまま付いていった。


辿り着いた場所は応接室。真っ黒な革製の大きなソファーが対面し、その間に白い大理石で出来た長方形のテーブルがある。


そして、それを見下ろすように、店長の物と思われるソファーと同じ革製の、回転式で背もたれがやたら高い椅子と、それとは相反して緑のざらざらしたマットの上に透明のビニールマットを敷いただけの、古くて質素な事務用デスクがある。


「まもなくスタッフが参りますので、少々お待ち下さい」


ほんの暫く待っていると、サングラスを掛け、胴体は黒装束のフンガが四匹ほど現れた。




まずい…。




ダラダラダラダラ…。


ボクチャンの全身から冷や汗が結露(けつろ)のように滴り落ちる。


明らかに換金やら景品交換といった雰囲気ではない事くらい、パチンコ初体験のボクチャンにだって解った。


普段、裸で生活しているボクチャンたちフンガが、わざわざ衣に身を包む理由は一つ。何かに所属している事を示す制服だ。


そして、黒装束を身に纏う職業はたった一つ、所謂(いわゆる)ヤク○さんだ。


黒装束の一匹が渋い声と表情で言った。


「いや~お客さん、タレントのマヌケフガオでしょう? 玉いっぱい出たね~」


ん? なんだコイツ、ボクチャンが色々ぶっ壊したの知らないのか。ならさっさと貰うもん貰って帰ろう。


「そうだよ~ん♪ だから早く換金してね~」


要求すると、何かがボクチャンの横をスッと掠め、左頬の毛が舞い散った。見ると、正面に居る黒装束のトップが発するオーラは、たった今までとは比べものにならないほどドス黒くなった。


左に振り返り、背後の壁には、1センチ程の穴が空いて、そこから僅かに煙が出ていた。


だ、弾丸だ…。


下から読んでも『だんがんだ』…。


そ、そんな事考えてる場合じゃない。



な、なんてこたーっ(なんてこった)!!



これはまずい! まず過ぎる!!


ボクチャンの下の方から、あのガリバーが火消しに使った液体がジョビジョビジョバジョバ。足元の本革絨毯(ほんがわじゅうたん)がみるみる汚染されてゆく。


「おいテメェ、店のモン可愛がってくれた上にこの最高級絨毯に潤いを与えてくれるたぁ、随分ありがてぇじゃねえか、あん?」


「だ、だろ? 超ぶぇぷ、VIP候補だろ?」


全身の震えが止まらず、言いながらも呂律(ろれつ)が回らないし、自分で何を言ってるのか訳がわからない。


「じゃあそのお返しはしっかりしなきゃあなぁ? ああ!?」


黒装束の剣幕に腰を抜かした。


「ど、どんなお、お~返しを、し、し~てくれ、るのぉ?」


「そうだなぁ、タレントだから命までは許してやらぁ。その代わり、テメェが可愛がってくれた奴らに御小遣いをくれねぇか。そうだな、負けに負けて三百万で今回の件は清く水に流してやらぁ」


すると、強制的に端末機に身体をタッチさせられた。


ピピピピピピピピピッ!!


端末機が赤く点滅した。残高不足だ!!


「おぅ、足りねぇじゃねえか。まぁ持ってないモンは仕方ねぇ、ツケといてやんよ。その代わり、テメェが払う利子は三百倍だ」


すると、残りの黒装束三匹が大声でハモった。


「お利息三百倍、ごっつぁんです!!」


「お前ら三匹、それ言うためにここに居たのか!?」


三匹はまたハモった。


「いえ!! お客様が逃げようとした時に弾丸を使用して負傷させずとも取り押さえられるよう、こちらに参上致しました!!」


なるほど合理的。


「て、っていうか、さ、三百倍? 九億円? いくらリッチなボクチャンだって、例え宝くじが当たっても、そ、そ、そんなに、は、払える訳ないじゃないか。そ、それに、玉を出さないそっちにも、おおお、落ち度は、あ、あ~るんじゃないの?」


震えながら、それでもやっとの思いで搾り出した言葉。


「玉が出なきゃ台移動すりゃいいじゃねぇか? あん?」


全くその通りだ。返す言葉がない。




その後、黒装束が契約書を差し出してきた。サインを書いて肉球を朱肉に付着させて押すように言われた。


それを拒否したら塩酸より強い王水(おうすい)という液体を手足にかけてじわじわ溶かすと言われたので素直に指示に従った。


こうしてなんとか店から解放された。


しかし!! それで黙っているボクチャンではない!! 利子三百倍なんて明らかに法外だチクショー!!


その足で弁護士事務所に行き、後日パチンコ屋を訴えてやった!!


だがなんと、そこでパチンコ屋は無罪半尻(ケツ)、じゃなくて判決となってしまった。


オマケにパチンコ屋が黙っていてくれた、ロボットフンガやパチンコ台をぶっ壊した事実が露見し、ボクチャンは器物損壊罪で懲役三日、その上、明らかに法外な利子三百倍はそのまま、そのうえ弁護士費用や訴訟費用まで払わされるハメになってしまった!!


ちっくしょーっ!!


こういうのを理不尽っていうんだこんにゃろー!!




それは国内外で大々的に報道され、新聞では一面を飾るという名誉を得た。


◇◇◇


「その時の新聞がこれだよ~ん♪」


フガオさんは、当時の新聞を私に差し出し見せてくれた。


『マヌケフガオ、パチンコ店で大暴れ!! 台やロボットフンガ破損で借金9億!! 訴訟で自爆!! 墓穴掘り逮捕!! 懲役3日!!』




「はぁ…」


フガオさんには悪いけど、呆れて言葉が出ない。


「どうだ、新聞の一面飾るなんて凄いだろ~?」


これが乗組員のアルバイトに励む理由だという事は解った。


しかし、こんな事で新聞の一面を飾って誇れる神経は、私には到底理解し得なかった。


タレントの仕事が少ないとか、複雑な事情があってアルバイトをしているのかと思っていたのでがっかりした。


私だったら恥ずかしくて、この星みたいに誰も知っている人が居ない所に逃げ出したくなると思う。




…そうだ、ここには私を知っている人が誰も居ないんだ。


思うと急に胸騒ぎがして、寂しさや不安が涙腺(るいせん)(にじ)んできた。

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