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リライフ  作者: おじぃ


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ツチウラサクラ1 真相不明の行方不明事件

「これから高浜たかはまくんと一緒に借りてたCD返しに行ってもいいかな?」


 どんより層の厚い曇り空、少しひんやりした秋の夕方は、妊娠八ヶ月目に入った私の気持ちを沈ませていた。


 そんな折、学校の同級生で私の大切なお友だち、神立かんだつ雪乃ゆきのさんと、高浜たかはまなつくんが訪ねて来てくれるとのメールは曇り空を突き抜ける一筋の光のようで、心がぱっと華やいだ。


 私は二人の訪問を心待ちにしながらリビングのソファーに腰掛け、すっかりビーチボールのように大きくなったお腹をさすりながらニュース番組を見ていた。


「彼らはいま、何処へ?

 

 当時十七歳だった神奈川県在住の友部ともべ水希みずきさんが行方不明になって今日で丸一年。彼女のみならず、世界各国で若者を中心に行方不明者が続出し、報告されているだけでも百名を超えています。各国の警察が連携し全力を挙げて捜索に当たっていますが、未だ一人として見付かっていません」


 きりりと整った顔立ちをした中年女性のキャスターが伝えたトップニュースは、世界中を恐怖に陥れている行方不明者続出事件。友部水希さん他、世界中で若者を中心に行方不明者が続出している。


 何処かの国が企んだ拉致事件という見方が強いが、彼女が行方不明になって丸一年経過した今日こんにちに至っても未だ真相は掴めていない。そのため拉致を恐れ、外出する若者が減り、街はやや閑散。経済界にも影響を与えている。


 友部さんが姿を消したのは私が住む相模湾さがみわんに面した街から離れた、東京湾とうきょうわんに面した大きな街。あの日も雨が降っていた。


 目撃者によると、地下街から駅へ続く階段をやや速足で上っていたところ、前方を歩く中年女性が歩調に合わせ手を振っていたのか、急に傘を横に突き出し、追い抜きざまそれにつまずき、後方に転倒しかけた瞬間、姿を消したという。目撃者は、にわかに信じ難い光景を連日続く残業に伴う疲労による幻覚と思い込んでいたが、テレビの報道で友部さんの顔写真が公開されたのを見て、早速テレビ局に一報を入れたという。


 ◇◇◇


「いらっしゃい、二人とも、来てくれてありがとう」


 三十分後、インターフォンが鳴り、受話器で応答した私は玄関へ雪乃ちゃんと夏くんを迎え入れに出た。


「ん? どうして?」


「お礼を言うのは桜ちゃんにCD借りてた私のほうだよ」


「ううん、私、最近ずっとうちで一人ぼっちだったから、二人が来てくれただけでなんだか心が晴れたの」


「それは良かった! 来るだけで良いならいつでも来るよ?」


「うん、寂しくなったらいつでも呼んでね」


「ありがとう。今度改めてお礼させてね。さぁ、玄関で立ち話もなんだから上がって!」


 雪乃ちゃんと夏くんは、お互いに控えめな性格で、両想いなのになかなか気持ちを打ち明けられないでいる。二人を見ているこちらとしては、とてももどかしくてむず痒い。


 雪乃ちゃんはまるで絵に描いたような大和撫子で、大人しいけれど気立てが良く、クラスでも人気者。肩までかかったセミロングの綺麗な黒髪も魅力の一つ。私は肩甲骨の辺りまで伸ばしている以外は同じ髪型だけれど、色素が少し薄く、正直なところ雪乃ちゃんが羨ましい。


 夏君は、爽やかなスポーツ刈りと、誰にでも分け隔てなく謙虚な姿勢が女の子に人気。男の子にも人気といえば人気だけれど、よくからかわれている。本人は女の子にモテていると気付いていない様子。でも意中の人が居るならば、殊更ことさら勿体なくはない。問題なのは、雪乃ちゃんにも気を寄せられていると気付いていないところ。私が二人にお互いの気持ちを伝えるのは簡単だけれど、それは何か違う気がするので、敢えて何もせずに様子を窺っている。


 私の妊娠が発覚して学校を自主退学してから二人にはとてもお世話になり、迷惑をかけっぱなし。ちゃんと恩返ししなくちゃ。


 二人をリビングに招き入れ、ソファーに座ってもらう。私はお茶を滝れるためキッチンへ向かおうとしたその時だった。


「うっ!?」


 突如私の腹部をかつてない目眩めまいを伴う激痛が襲った。あまりの痛みに耐え切れず、その場にドサッと倒れ込んでしまう。


「土浦さん!?」

「桜ちゃん!?」


 二人が同時に呼びかけた。


「救急車呼ぼう!!」


 即座に着用しているジーンズからケータイを取り出した夏君は、大人しい草食系男子とは思えないほど懸命に、手と声を震わせながらケータイを握って、それでもハキハキした声で通報してくれている。


 かっこいい……。こういう人のことを本当の『王子様』っていうのかな。


 雪乃ちゃんが好きになるの、わかるなぁ。


 苦しくてしかたないのに、何故かこういう事は考えられる。


「ぅうううっ、あぁっ……」


 二人の呼びかけに応えられないほど、痛みと目眩はどんどん激しさを増し、意識が遠退いてゆく。


 苦しいのに、なんだか眠くなってきた。頭から、何かが抜けてゆく……。


 私、このまま死んじゃうのかな。


「桜ちゃん!! しっかりして!! 頑張って!! いま夏くんが救急車呼んでるからね!!」


 だめ、死んじゃだめ!! 私が死んだら赤ちゃんも死んじゃう!! 私にはずっと一緒に居たい人たちが居る!!


 だから、死にたくない、死にたくない!! まだ死にたくない!! 生きなきゃ、生きなきゃ!!


 なのに、なぜ? なぜなの? この走馬灯は、一体なぜ?


 これまで生きてきた私の軌跡が次々と蘇る。


 あぁ、色んな事、あったなぁ……。


 近くの海で、お砂のお城を造ったり、ピアノのお稽古をしたり、中学生になって、内気な私でも、お友達とたくさん遊ぶようになって、高校生になって、好きな人ができて、それで……。


 しかし、その先には思わぬ困難が待ち受けていた。悲しみ、怒り、絶望……。負の感情を次々と覚える出来事だった。


 それでも、私は自ら命を絶てなかった。


 全てを背負わされた私には、これから幾多の苦難や困難が待ち受けているかもしれないけれど、それを乗り越えて生きようって、決心した。


 なのに、私、死んじゃうの?


 酷いなぁ、残酷だなぁ、神様は……。


 意思とは裏腹に、遠退く意識に抗えず、私は眠ってしまった。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 この物語は、私が小学一年生の頃に考えた物語をベースに執筆したものですが、まさかそれをWeb上に公開する日が来るなんて(そもそも当時はインターネットが一般に浸透していませんでした)、当時の私は想像していませんでした。

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