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第1章⑨ 早く帰れ

カチャ

カチャ




ゴクリ。



シーン




今わたしの目の前には

第二王子がいるんだが、、、。




なんで?なんで!

さっきまで超幸せで平和だったのに!




何でよりにもよって

こいつがいるんだ?





朝方見た夢を思い出す。



こいつに、ズバッと

真っ二つにされたんだよなぁ、、、。




それにしても、あの怪しい声は誰なんだ?




ミレーユはあの声に

操られていたように感じたんだよね。




あの声に従わなければ、

わたしは、死なずに済んだのかもしれないな。





「何をお考えですか?」

沈黙を破り、ルーデウス王子が話しかけてきた。



「え?」

「先ほどから百面相をされておられますよ」




クスクスと微笑むこの笑顔。

ううー。笑ってやがる。




くっそ。かわいいな。




でもわたしは、こいつの正体を知ってる。

この笑顔がたくさんのご令嬢を侍らせ

ミレーユを蔑ろにし続けた挙句

最後はバッサリ処刑。




絶対騙されないぞ。




「あ、いえ、殿下が急にお越しになり

準備もできず、ラフなこのままの格好で失礼ではないかなーと、心配しておりました」




昨日の夜、ミザリーたちが寝こけてるわたしを

湯浴みしてくれて、全部世話してくれたから、よかったわぁ。じゃなきゃ今日の汚れたままで王子の前に自分を晒すところだった。



ミザリーたち、マジ感謝!



今日の髪型は、早く朝食が食べたくて

ミザリーに急いで髪を三つ編みで横に流し

リボンを編み込んでまとめてもらった。



ドレスはゆったりとして、腰の両側にあるリボンでメリハリをつけたデザインのものだ。

わたしにしては珍しくピンクを着ているが、サーモンピンクで落ち着いた色合いだ。

こちらも、以前のミレーユは着なかったものらしい。




「いえ、そのようなことは。今日のドレスもよくお似合いですね。あなたはいつでも素敵ですから、お気にされないでください。急に押しかけたのはこちらですから」




ほんと迷惑だよ!まったく!

褒めてもらったって嬉しくないわ!




という本音は言えず。




「いえ、押しかけられたなどと思っておりませんわ。お茶も有り合わせのものしかお出しできずにおりましたから。ドレスも褒めてくださってありがとうございます。」

「いえいえ、とても美味しいです。ドルメネール家ではいつもこのような美味しいお茶が飲めるのですね。羨ましいです。急な訪問にも関わらず、温かいお心遣いありがとうございます」





シーン





ううう。間が続かないな。

話すこともないし、

そもそも、本当に何しに来たの?この人。





「あの、殿下」

「なんでしょうか」

「今日はどんなご用で来てくださったのですか?」

「あなたの顔を見たくて押しかけました」




ゲエッホッ!




こ、この小僧6歳だよな?



「だ、大丈夫ですか?」




大丈夫じゃねえよ!





「し、失礼いたしました。大丈夫ですわゲホッ。

そ、それはどういう意味で?」

「そのままの意味ですが」



「ケホケホ、私の顔を見にこられた?と?」



「まあ、見るだけというか、昨日はたくさんの皆様がいらしたので、お互い挨拶ばかりで、あまりゆっくり話せませんでしたから」



「はぁ」

で、そのために来たの?



「かなり夜も遅くなっておりましたしね。気がついたらミレーユ嬢の体力に限界が来てしまい、ドルメネール侯爵と共に帰られてしまったので」



「そ、うだったんですか?」



え?ってことはわたしパーティ中に

あの父の前で気絶したってこと?



あ、怒ってなかったのかしら?あの冷徹男。




「はい、しかし、、、」

ルーデウス王子はクスッと笑った。




「あんな公爵のお顔は初めて見ましたよ。冷酷な方と噂されておられる人とは思えない優しい表情で、あなたを大切に抱き抱えられ、帰られて行かれましたから。」




「、、、、、は?」



あの公爵が?

わたしを?大切に?抱き抱えた?



普段、虫ケラでも見るような目をわたしに向けていたあの男が?




びっくりしすぎてカップを落としそうになった。



あちちちちちち!



「だ、大丈夫ですか?」




「お、お嬢様、火傷はされていませんか?ドレスもしみになってしまいます」

「だ、大丈夫よ」

「お着替えだけいたしましょう。このままだと」

「そ、そうね。で、では殿下、このままお待たせするのも申し訳ないですし、本日はこれで、、、」



「そうですね、ここでもう少しお話したいのでお待ちしております」



「え、わ、わかりました、、、」




トボトボ部屋を出て行く。




帰れー!!

これ、普通、帰る流れだろ!



「よかったですね、お嬢様。殿下とまだ一緒にいられますよ」



ミザリー!!



1人部屋に残された王子は、静かにカップのお茶を飲み呟く。




「やっぱり面白いな」



一一一一一一一一一一一一


自分の部屋に戻り

下着姿でミザリーが赤くなったところを濡れた布で冷やしてくれる。


「ミザリー、ありがとう。もう大丈夫よ」


ミザリーに着替えさせてもらう。




何がどうなってる?




昨日婚約したけどこれから盛大に浮気をする王子がわたしの顔を見たいといって

話したいと押しかけてきて、

冷たいあの父親がわたしを大切に抱っこ?




思いもよらない情報が多すぎて

頭が追いつかない。




ラベンダーのゆったりした

ミモレ丈のドレスに着替え

王子の元に戻る。




「先ほどは失礼し、大変お待たせして申し訳ござませんでした。ルーデウス殿下」

「いえ、ミレーユ嬢。僕のことはお気にせず。火傷はしていませんでしたか?」

「だ、大丈夫です」



すると、ルーデウスはふっと笑い

「あなたも「大丈夫」とよく言われるんですね」



「はい?」



「いえ、なんでも。そのドレスもお似合いですね」

「あ、ありがとうございます。それでそのぅ、、、



「はい」


一番、気になっていたこと。


「昨日はわたし、父に抱っこされて帰った、と?」



「あぁ、先ほどの話しですね。はい、昨日はそんなことがあり、お互い忙しかったのもありましたから、なかなかあなたとお話もできませんでした。なので、いきなりで申し訳なかったのですが、お互いの親睦を深めたくてお邪魔させていただいたのです。あくまでわたしのわがままのために、急に押しかけてしまったことは申し訳なく思っております」




「いいえ!そんなことは!ありがとう、ございます。だい、じょうぶ、です」



ルーデウス王子は「ふふっ」と笑い

「よかった」と笑った。



一一一一一一一一一一一一一一


や、やっと帰った、、、。




あれから王子は

ランチを一緒に過ごし



おやつの時間も一緒に過ごし



夕飯を食べてようやく

帰って行った。




お、王子って暇なのか?




このままお泊まりでもするんじゃないか?

と思われたが、流石にそれは

従者が許さなかった。




「このまま今夜はお世話になろうかな」

「王子!それはダメでございます!」

「なぜ?」

「王に泊まるとお伝えしておりません」

「お付きの者も少のうございます」

「お前が城に戻って伝えればいいじゃないか」

「公爵家の方にも迷惑でございます」

「えー」




わたしを含め、周りもみんな

少々ドン引きするくらい

王子はしぶとかった。



結局、

「では今度はお城にお呼びしますね。近いうちに」

と言って帰っていった。



バタン。

玄関ホールのドアがしまる。




ピシャン、ガラガラガラガラ




行ったか。

つ、疲れた、、、。




お城に、、、か。

って、わたしなんか

懐かれてない?




おかしいな。

最初の2人ってこんな感じだったの?




最初は仲良くて、そこからあの王子は

浮気するようになるのか?



それってある意味、最初から嫌われてるより、

女子にとっては残酷な気がするけども




この子供たに何があったんだ?




いやいや、一応同い年だから!

つい、小さい子を嗜める目で見てしまうが。




っていうか、あの王子も所詮は子供。

ちゃんと小さい子みたいな

駄々こねるところもあるんだな。




って、まだ6歳だしな。

当たり前か。




まあ、でも

小さい子のおでかけって

時間が長いと聞いたことがある。




前世でたまに母方のおばさんが、私たちを心配して何度かきてくれたとき、姪っ子を連れてきたことがあったけど、朝から晩までいたもんなぁ。



ずっといたい!って駄々こねてたっけ。



まあ、でもあれは

親戚だからであって

他人の家に朝から晩までいるのも

どうなのかしら?


この世界の常識がわならない。



まだまだ情報不足だわ。



王子とわたしって

遠い親戚でもあるんだよなぁ。

たしか、はとこのはとこ、みたいな。

確かそんなんだった気がする。




日本も、昔の王族ってそういう婚姻ばっかりだって

何かに書いてあったわね。




しかし、王子様って大変そうだなとも

今回思った。




6歳であの振る舞いを年中やるんでしょ?

なかなか難しいと思う。




基本、敬語だし

荒げちゃいけないし

舐められちゃいけないし

いつも誰かに評価されてるというか

見張られてる感じよね?




あの歳でなんかちょっと可哀想な、、、

わたしも似たようなものだけど、

きっとわたし以上に重圧はあるわよね。



いやいやいや!



これももしかしたら王子の

作戦のうちかもしれない!



なんせ、あの腹黒王子だもの!



だって、あいつはこの先に

わたしを真っ二つにするんだから!




元の話だって、

ミレーユが真っ直ぐに愛していたのに

それを裏切っての浮気と殺害でしょ?




よく考えたら、めちゃくちゃ

酷い話よ。



まあ、ミレーユにも

かなり、というか

だいぶ問題はあったけども




それでも、人をあんなふうに殺めるのは、

流石にこの世界でもやりすぎよね?

しかも、学校で。




あれ?でも、

ミレーユは何かに操られていた感じだったのよね。もしも、色々追い詰められた王子も操られていて、それが誰かに利用されてあの事件になっていたんだったとしたら、、、




王子は、1人の人間として愛してくれた

マリアベルが好きだったのよね。

王子としてではなくて、ありのままの自分を認めてくれたマリアベルに、、、




あれ?わたし、なんかものすごいこと

気がついちゃった?




いや、でも

まだ断言はできないわ。

人なんてどう変わるかわからないものね!




この人こそ浮気はしなそうだって

思って付き合っていたって、されたもんな!




とにかく今は情報を集めましょう!

そして、できる限り敵は作らない!




そうだわ!元の話にはミレーユには敵はいたけど

味方がいなかった感じよね。




取り巻きは多かったけど、

あの人たちはミレーユの味方とはいえない。

あくまで、ドルメネール公爵家の権力が怖くて従ってたって感じだったものね。



そうだわ!わたしに必要なのは忠実な従者だ!



ミザリーはわたしの専属のメイドだが、あくまでドルメネール公爵家の使用人だ。



もし、わたしに何かあった時、協力させてしまうと後々、立場が弱いから罰せられてしまうかもしれない。




それは、可哀想すぎる!




だからこそ、わたしと国を逃亡しても離れても

1人で生きていけるような剣や魔法

そして精神が強い人間がいいわ!




でも、どうしたら見つかるのかしら?



うーん。いや、でも

やれることはまだまだたくさんあるわ!



とにかくこれからの目標は



・強くなること!

・知識を蓄えること!

・周りに優しく敵を作らない!

・秘密を共有できる味方を探す!



これをやっていくしかないわ。



「よーし!やるぞー!」



1人で叫んでベッドに飛び込んだ。


一一一一一一一一一一一



その頃、、、




「ほら!さっさと来い!」




ガシャン!


白い獣と図体が大きい汚れた男がいる。



「グルルルルルルル」

「なんだ?その目は!」


「ガウッ!」




ピシャン!




汚い身なりのその男は

かなり強そうに見える。

すごい上腕二頭筋だ。



鎖のリードを乱暴に引っ張り、

鞭を振いながらその獣を威嚇する。




「ギャワン!」


ピシャン!ピシャン!


「ギャゥ!ギャワン!」



「痛い目に遭いたくなったらさっさと

入りやがれ!」



獣は乱暴に蹴り飛ばされ、

血を吐きながら檻の中に無理やり入れられる。



その檻には、光る魔法陣が

敷かれているようだ。



「ここでおとなしくしてろ!ゴミムシが!!」



バジャン!と檻が閉じられ、

汚いエサが檻に投げ込まれる。



「くっせぇなあ!」



「おいおい、もう少し優しくしてやれよ?大事な商品なんだからな」


奥からもう1人同じくらいの汚さの男がでてきた。

どうやら酒を飲んでいる。



「あん?でもこいつ聖獣なんだろ?よほどのことがなけりゃ死にはしねーよ。どんなに痛めつけても、次の日には勝手に治ってやがる。バケモノかよ」


「ま、そうなんだけどな」

奥にいた男は上腕二頭筋男に酒を渡す。

渡された酒を浴びるように豪快に飲みながら男は話し続ける。自分が汚れることをなんとも思ってないようだ。


「依頼主の前で元気なら問題ねーだろ。

「逃げられないように力を吸い取り続ける魔法陣もあるし、ここならこいつに俺たちがやられる心配もない。臭えのが我慢できりゃ楽な仕事だ」


「それもそうだな」

「1週間後にこいつにこの薬を打って、とある貴族の屋敷の庭にぶち込んでめちゃくちゃにすればそれで終わり、って依頼だろ?金はかなり儲けられるし今回の仕事は楽で最高だな!」


「へへへ」




聖獣と呼ばれたその獣は、ぐったりして

横たわっていた。




聖獣は目を瞑る。

そこには、とある人間から

手を差し伸べられる映像が見える。




「クゥーン」

悲しそうに鳴き、気絶した。


一一一一一一一一一一一一一一一一一


王子の突然の訪問から数日経った頃、



ミザリーが手紙を持ってきた。

「お嬢様、レクシュール伯爵家からお手紙です。

お茶会のお誘いが来ております。」




レクシュール伯爵家



。。。って、しらん。誰だ?




「たぶん、先日の婚約パーティの時にいらした方よ」



うーん。

話した人がいっぱいいすぎてわからない。




「レクシュール伯爵家のご婦人は

流行に敏感で、流行りのドレスや

帽子、アクセサリーは必ず持っていらっしゃるから、もしかしたら、あなたのドレスに興味持ったのかもしれないわね」




ポン!あぁ!そういうことね!




「あなたはまだ幼いから、わたしが一緒に行きましょう」

「お母様も一緒に来てくれるの?」

「いいかしら?」

「もちろんですわ!」




やったー!よかった!

アメリのドレスの宣伝はしたいけど、

子供1人で知らない貴族の家に乗り込む(×)お邪魔する(○)のはやっぱり勇気がいるもんね。




「でも奥様、大丈夫でしょうか」

ミザリーが心配そうにしている。



どうしたんだろ?



「先週の王都であった事件ね、、、」



「?」



「あ、なんでもないのよ。ミレーユは気にしないで」



気にするなと言われると気にしてしまうよね。



「レクシュール伯爵家は強力な魔法が使える方もいらっしゃるし、きっと問題ないわ。今回は庭でやるわけじゃないし」



「そうですか。余計なことを申しました」

「いいのよ。心配してくれてありがとう。ミザリー。あ、そうそう、今回のお茶会は殿下もいらっしゃるって噂よ」




うふふ、と嬉しそうにするエリーゼ。




「でんか、ですか。どのでんかでしょうか?」

「もう!ミレーユったら。お父様が聞いたらまた叱られますよ。ルーデウス殿下に決まってるでしょう」




げは。




「もう!なんで、そんな顔をするのこの子は。この間すごく仲良さそうにしてたじゃない」



「そんな変な顔してました?」

「「しています」」



エリーゼはともかく、ミザリーまで。



あはは。

はーーーー。






わたしはまだこの時は全く

気がついていなかった。




この事件がきっかけで、

わたしの未来の計画が

大きく左右されていくことに。


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