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第1章⑤お兄様とデートその1

おとぎ話から出てきたような馬車に乗り

馬が走り出した。



へー。この世界にもガラスってちゃんとあるんだな。っていうよりも、馬車にガラスとかすごいな。割れないのかしら?



馬車は前の世界の車とかと違い

ガタガタ揺れるし、走るところも場所によって

舗装されてなかったりする。



ふかふかの椅子で助かるわ。



きっと値段が高い

馬車なんだろう。



硬い椅子なら尻がおかしくなりそうだ。



なんて思いながら、外を眺める。



しかし、ほんとに一体

昔の私の世界とこの世界って

どんな関係なんだろうか?



タイムスリップ、とかでは

なさそうだよね。

だって魔法がある世界だもんなぁ。 



そして、改めて思うが違う世界に

来たんだなぁと思う。

まるで見たことがない風景だ。



天気もガスもない。

夜は燭台を持ちながら歩く。



ヨーロッパの昔のグリム童話とかに出て来た

場所になんとなく近い気がしてるが、

日本人だった私にとっては

全てが初めてのもの。



橋などはしっかり舗装されているが、

街は基本土だ。なので砂埃も立つ。



普通に、道に馬のうん○が落ちてたりする。



昔のフランスとかイギリスって

こんな感じだったのかな、



ハイヒールとかって

汚いものを踏まないために

作られたっていうしね。



あとは、そう!

魔術!

魔術がある世界なのだ!




父の能力を知った時

なんだか気に掛かり

この世界のことを調べたら



ここは、本当に魔術がある世界、

ということを理解した。



漫画で知ってはいたけど

本当にそうなのだ。



とりあえず、ざっくり言ってしまえば

前の世界とはまるで違う場所。



わたし、本当にやっていけるのかしら?はぁ。



なんて思いながら

賑わっている

王都の街を眺める。



それでも、ちょっとワクワクしてきた。



なぜなら、今日、私はこの世界で

屋敷から外に出るのが初めてなのだ。



ちょっとだけ観光気分なのよね。



一緒にいるのがアルノルト兄なので

そこら辺はちょっと微妙なんだけど

まぁ、でも今関わる人たちの中では

1番安心できる相手だからまぁいっか。



なんて思いながら

しばらく外を眺めてると、

ふと視線を感じた。



目の前にいるアルノルト兄がなんだか

ニヤニヤしている。




え、なんだろう。

私、顔になんかついてるかな?




「お、お兄様なにか?」

「いや、楽しそうに外を見てるなぁって思ってね」



あ、だからか。

でもなんかちょっと、悔しいな。



子供っぽいと思われたんだろう。

意図的には困らないがなんとなく恥ずかしい。



「それはそうですよ。わたくしは

見たことないものばかりですもの。

楽しいですわ」



少しツンとしたように返す。

すると、



「見たことない?」

「ええ、ございませんわ」



「あ、、。そっか。そう、だよな。」

「?」

「いや、ミレーユがこれまでのことを覚えてないっていうことを、つい忘れてしまっていたよ」

「あ、、、。」




しまった。私も忘れていた。




そうか。そうだよな。

私が知らないだけで

これまでのミレーユは

何度もこうして外に出ていたんだろう。




本来なら、本物のミレーユがいる場所なのよね。

それにしても、本人はどこにいってしまったのだろう。本人は死んじゃって、わたしが入ったのだろうか。




なんて思っていたら、

前のミレーユに申し訳なくなってきてくる。



私が急にシュンとしたからだろう。



アルノルトが慌てるように

「いや、ご、ごめんミレーユ。これは失言だったな。」



と、フォローしてきた。



しまった。元のミレーユのことを考えすぎて、つい、落ち込んだような表情が出てしまった。


うかつだったな。



これまでのことをそっくり忘れてしまう人間になんてそうそう会わないし、ましてや身内になんてこんなこと起きないだろうから、これに慣れた対処の仕方なんて、わからないよ。ましてやまだ10代の男子に的確に記憶喪失した人間への気遣いなんてできるはずもない。



「いえ、お兄様。お気になさらず。わたしこそ

お気をつかわせてしまい申し訳ありません」



ニコッとはにかむように返すと、アルノルトは少し驚いたような顔をし、でもすぐほっとしたような顔で言った。



「そうか、そう言ってくれると助かるよ。ありがとうミレーユ」



アルノルト、優しいやつだなぁ。

妹思いのいい兄じゃないの。



「こちらこそ、ありがとうございます」

「なぜミレーユが俺にお礼を言うの?」



意外そうな顔をしてアルノルトが返してくる。



「え?だって、お兄様がわたしの気持ちを考えてくださっているのがわかりますもの。素直に嬉しいですわ」



これは本心だ。

ミレーユとして生きなければならないと気づいた時は、味方なんかいなかったし、誰を信用したら良いかわからなかってけど、最近のアルノルトとは仲良くできてると思う。



初めて仲良くしてくれた身内だし、気を遣ってくれてるのがわかる。これが演技だったら、もうそれは騙されても仕方ないというか、そこまで人を疑って生きるのもそれはそれで嫌だもんね。




なんでこちらが考えていたら、

なんだか、アルノルトの顔が赤くなっている。

暑かったのだろうか。



「お兄様?お顔が赤いですわよ、ご気分でも悪くなられました?暑いですか?」



「だ、大丈夫だ、気にするな」

「そうですか。無理なさらないでくださいね。」



馬車に酔うこともあるだろう。無理だけはしないでほしい。



それにしても、これでなんとか記憶のことはフォローできたかしらね。しかし、気を使うわね、仕方ないけど。



そうしているうちに、馬車が止まった。



アルノルトにエスコートされ、馬車を降りようとした時、



「ひゃっ!」

驚いて、変な声が出てしまった。だって、

体の重力が急になくなった感覚がしたから!



見ると、アルノルトに

お姫様抱っこされてるではないか!



「な!お、お兄様!なにを!?」

「段差があるから、危ないと思ってね」



からの、

パッチンウィンク!



ふ、不意打ち、、、!



やばい、本当にわたし

鼻血出てないかしら、、、?



心臓をバックバックさせながら

降ろしてもらう。



兄じゃなくて、同年代の女子なら

イチコロだわね、、、。




この年で、、、恐るべし!!



それはそうと、「えっと、ここは?」



着いたところは

とあるブティックだった。




艶やかなラベンダー色のドレスが飾ってある。



うわ、、、あの金の刺繍、すごく素敵。

あれ?でも私が今日着ているドレスの刺繍に

似てるような、、、。




こんな感じの刺繍が王都では流行ってるのかも。



なんていうか、少しアンティークな感じで

だけど古臭くなく、上品な雰囲気で

乙女心をくすぐるような素敵な刺繍なのだ。




ザ、お姫様!的な子供用の

ひらひらのフリルたっぷりなドレス

は、正直自分が着るっていうのは苦手だったが



こういった、淑女的な落ち着きのあるドレスは

素直に美しいって思う。



ところどろこにキラキラした石が縫い込まれていルが、まさか、宝石だろうか。

だとしたら、お値段が怖いな。



なんていうか、服というより芸術品のようだ。

いつのまにか胸の前で祈るように手を組み

少しの間、ショーケースに見惚れていると、




「ふーん、ミレーユはこういったドレスが好きなんだ」



横から、面白いものを見るようにアルノルトが

両肩に手を置いて顔を覗き込んできた。



兄の美しい顔が真横!そして近い!

へ、平常心よ!わたし!



「え、ええ、着るというよりも美しいと思いまひて」

噛んじゃった!



結局、あたふたしてるわたしを見ながら

アルノルトはくっくと笑って言った。



「ミレーユが気になるものがあるみたいだし、久しぶりにドレスの注文もしたらいいよ」



天使のような笑顔でエスコートされる。

この顔はずるいなぁ。



それにしても、久しぶりに?ってことは

ここでよくミレーユは

ドレスの注文をしていたのかもしれないわ。




なるほど。

ここで納得した。




アルノルトはこれまでのミレーユが好きだった場所へ私を連れて行き、反応をみたかったわけだ。やはり、今日はあの父親の意図を含めたデートなわけね。




てことは、これまでミレーユが贔屓にしていたお店のリサーチもしてるんだろう。




でもこれは、助かる!




私もこれまでのミレーユのことをもっと知りたいと思っていたから、丁度いい。




どこからレアな情報が得られるかわからないから、できるだけこれまで何があったか知っておきたいものね!




あの漫画はここまでミレーユの人格について

詳しく描いてなかったから、なかなか対策が取れなかったのよ。まあ、ミレーユはこの物語の主人公じゃないし仕方ないんだけどね。




とりあえず、今のわたしの未来には『死亡フラグ』しかないからこそ、生きられる可能性を少しでも探さなきゃいけない。




なんでもないところに地雷がある場合もあるから、しっかり見極めないとね。




カランラン♫




店に入ると、

「いらっしゃいませ」

と、凛とした綺麗な声がした。




見上げると、そこには

片メガネをかけ、落ち着いた茶色の

ドレスを着た美しい婦人がいた。



この人が店主なのかな?

綺麗な人だ。




「やぁ、こんにちはアメリ」


「ドルメネール・アルノルト様、お久しぶりでございます。ご来店嬉しゅうございます。本日はどのようなご用命でしょうか」




ニコニコしていた店主らしき人は、アルノルトを見た後、手を引いてついて来ている私に気づいた

その瞬間、アメリの表情が一瞬で戦慄を覚えるように、目が見開かれたように感じた。




気がつくと、店の全員がそんな顔をしている。



まるで、悪魔でも見たような反応。



こ、、、、これ、は。

気のせいではないだろうな。ははは。




たぶんわたしはこの店全体から警戒されてる。

すっごい頑張ってアメリや店員たちか

笑顔を作っているのが、わかる。



って、あれ?

目をゴシゴシする。




空気がピリピリしてるのもわかるのだが、


アメリのうしろからなにか

青白い炎のようなものが見える。



あれ、これって

似たようなものを最近

見た気がする。



どこだっけ、、、。

思い出せない。




いや、とにかく今は

目の前の人たちに集中しよう。



お店の人たちは明らかに

私たちを警戒している。



いや、私たちではなく

わたし(ミレーユ)に、だ。



アメリの顔を見た瞬間、

なんとなく予想はしていた。



ドルメネールの屋敷で初めて起き上がったときですら、皆の対応があれなのだ。




やはり、前のわたしが何か

やらかしたのだろう。




外でのミレーユはもっと、、、その、、、

行動とかアウトだったんじゃないかと。



この(ミレーユ)どれだけ敵を

作っているんだ。




と、気がつくと、アメリが先ほどとはまた違う表情で驚いたようにミレーユを見ている。



ん?目線が、、、

わたしのドレスを見ているのか?




周りの店員もなんか

さっきよりもさらに様子がおかしい。



なんだ?何か地雷になるドレス選んじゃってたのか?



もう!このミレーユさん、やらかしすぎじゃないですか!?どうしろってのよ!



すると私の目線に合わせてかがんだアメリが

口を開いた。



「ミレーユ様も、本日は来てくださりありがとうございます。あの、、、本日はその、、、こちらのドレスをお召しくださったのですね」




お召しくださった?

ということは、さてはこのドレス、やはりこのお店のドレスってことかな?ならば



にやり。

盛大に褒めるしかないだろう!




「あ、はい。今持ってる中で一番素敵だなと、思いましたもので選びましたの!今日はアルノルトお兄様と街歩きをするので、丈もちょうど良いですし、とても着やすいし、可愛いし気に入ってます!」



どうだ!精一杯褒めてやったぞ!




ってあ、あれ?

あれ?あれれ?



シーーーーーン




目の前のアメリを見る、と

アメリの目から涙が溢れ始めた。




ええーー!わたしまたなにか

やらかしたかしら!?




「そ、そうでした、か。お、だ、大事なお客様の前でわたしったら、申し訳ございません、、、。」




「いえ、あの、なにかわたし失礼なことでも言いましたでしょうか?」




ど、どうしよう、、、

困って、アルノルトを見上げると

アルノルトまで変な顔をしている。




え、な、何が起きている?

本気でわからない。



私が困惑してるのを察したのか

アルノルトが聞いてくれた。




「アメリ、このドレスのことで何か気になることでもあったのか?」



「い、いえ、その、ミレーユ様に気に入ってもらえた事が嬉しくて、つい、、、。このような振る舞いになりました事、どうかお許しくださいませ」




いやぁ、それだけじゃないだろう、これは。

店の全員がこの反応ってなんだ?


「それだけじゃないだろう?これは。」



はっ!

あれ?私、心の声出てた?



いや、アルノルトがつっこんでくれたのだ。




アルノルトのツッコミにアメリはハッとしたようになり、スッと姿勢を直して、少し観念したように、私たちにペコっと頭を下げた。




「少々、無礼を承知でお話しすることをお許しいただけますでしょうか。」



アルノルトとわたしが黙って頷くと、アメリは一息吐き、覚悟を決めたような顔をして話し始めた。



「半年前、ミレーユ様と初めてお会いしたとき、なんて美しいお嬢様なんでしょうと、思いまして、その時に衝動的に思いついたデザインがこちらの本日お召しくださっているドレスでございました。ミレーユ様のお誕生日にいつもとは違う特別なドレスを、と、お母様のエリーゼ様にご依頼をいただきまして、私がこれを機会に作らせていただきましたドレスでございます。しかし、、、」



そこでアメリは口ごもってしまった。



あぁ、、、なるほどね。

想像がつくわ。



「わたしが気に入らないと騒いだのよね」




全員がこちらを見る。

アルノルトも一番驚いたように見ている。



え、、、あ?

口から勝手に言葉が出てしまった!!




だってさ、記憶なくても

こんな展開わかるじゃん?(泣)

だって、あのミレーユだもの。



とりあえず、口から出てしまったため、

もう後戻りはできないわよね。




今度はわたしが観念する番だ。




わたしは一つため息をつき

アメリの顔を見て声をかけようとした

と、そこへ、



「お待ちください!ミレーユ様!アメリ様は悪くないのです!わたしが、、、」



後ろから声がする。



見るとそこには、

そばかす、おかっぱぱっつん前髪な

このお店の制服を着た美少女がいた。



どうやら、わたしがアメリに危害を加えるのだと心配したのだろう。



「どうか、、、どうか、、、」



震えているわね。

涙目だわ、、、。



見ると、アメリも手が震えている。



わたしは心の中でため息をつき、

少し深呼吸してから

再度、おかっぱちゃんに背中を向けて言った。




「誰が勝手にわたくしに声をかけていいと言いましたか?」



おかっぱちゃんだけではなく、

店の人間全体がビクッとなる。



そう、ここは、平民から貴族に気軽に声など

かけてはいけないのだ。

しかも、話をしようとしてる貴族を遮るなど言語道断。不敬罪としてそれだけで捕らえられてもおかしくない完全なる縦社会。



けど、これを私が今回あえて言ったのは

あくまで建前だ。

わたしがアメリと話したいから

邪魔はしないでほしいから言っただけ。



まあ、私が言ったら

そりゃビビるだろうよ。

でも今はごめんよおかっぱちゃん!




「大丈夫、叱りつけたりしないわ」

精一杯はにかんで言ってみる。




わたしはアメリの方に返り直し

彼女の手を取った。

彼女の手は冷たくなり震えたままだ。



可哀想に、、、。こんなに

怖がらせてしまったのね。



「ごめんなさい。アメリさん」



アメリはサッと顔をあげ、

すごく驚いたようにわたしを見る。



「アメリさんは悪くないわ。わたしが悪かったの。こんなに心のこもった素敵なドレスなのに、あの時のわたしは、それがわからなかった。だけど、気が変わったのよ。今ではすごく気に入ってるわ。こんなに刺繍が美しいドレス見たことないもの。作ってくださって本当にありがとう。」



「、、ミレーユお嬢様、、、!」

その瞬間、アメリの目からがワッと

涙が溢れ出た。



「そうだわ!お詫びと言ってはなんだけど

新しいドレスを新調したいの。このドレスの刺繍私、本当にとても気に入っているのよ。こちらの刺繍を今度宮廷の王太子様との謁見のためのドレスに入れて欲しいのだけど、できるかしら?」




「王太子様との、、、も、もちろんでございます!喜んで作らせていただきます!」




私たちは手を取り合ってふふふ、と笑った。




それから、しばらくの間、わたしとアルノルトは

特別室に案内をされ、これからのドレスのことを相談した。



「ドレスはこのお色なので、この刺繍を、こちらととこちらへ入れるのはいかがでしょうか?」


「素敵ね!さすがアメリだわ!そうしたら、ここにもこのサイズの刺繍があると、バランスがとれるんじゃなくて?」


「そうですね、そうしましたらこんなデザインの刺繍なんていかがでしょう?」


「そんなことできるの!?すごい!素晴らしいわ!あ、でもそんなに大変なものを入れたらこの時期に間に合わないのではなくて?」



「ミレーユお嬢様、大丈夫です。実は、、、わたくしもこの刺繍は大好きなのでミレーユお嬢様のような美しい方に褒めていただき、すごく嬉しいのです。

実は、この刺繍をこの王都で流行らせたい、と思っておりました。私の親友がこの刺繍の考案をした職人でして、彼女の才能をもっと貴族の方に知って欲しくて、、、。たくさんの方に喜んでもらえると思うのです。」



なるほど。そういうことだったのね。

確かにこの刺繍の美しさは素晴らしいものね。

こんな事ができる職人が埋もれてるなんて、きっとこの国としてももったいないことだと思う。




「わかったわ!ならばわたくしのことを存分に宣伝に使うといいわよ!」

「ミレーユお嬢様!いえ、わたくしはそんなつもりでは、、、」

「ミレーユお嬢様じゃなくて、これからはミレーユで呼ぶことを許します。

そして、あなたの気持ちはわかってるわ!だけど、この刺繍がこの王都でのブランドになれば、国自体も潤うでしよ?人を雇えばその人もお金が手に入る。それってたくさんの人が幸せになるって事じゃない!わたしは公爵家の人間よ。公爵家の人間は民を守るべる立場。ならば、素晴らしいものを持っている民の宣伝は、私たちは積極的にしていかないとね!」

「ミレーユお、、、ミレーユ様、、、!!」




こうして私たちは、以前とは比べ物にならないほど、仲良しになったのだった。



おかっぱちゃんも嬉しそうにしている。



正直、今回はアメリが私との確執を

話してくれたことにホッとした。



普通はきっと、平民ならはぐらかすだろう。

だって、ミレーユは腐っても

公爵家の娘だ。




下手をしたら

不敬罪で捕まるのは目に見えている。

普通はきっとしらばっくれるのが関の山だ。




けれど、アメリは話してくれた。

だからこそ、今回はわたしが私自身をフォロー

する事ができたのだ。




だからこそ、わたしは助かったのだ。




正直、今のわたしには

アメリやこのお店の店員達に、以前

ミレーユが何を言ってどんな態度をしたのか

本当のところはわからない。




はっきり言って、なんでわたしが

ここまでミレーユの尻拭いを

しなきゃならないんだって

思う時もある、だけど、




だけど、今ミレーユなのはわたしだ。




この先の運命をどうするかは

完全に私の今後にかかっている。




なんで、こんな人生に転生したのか

全くわからないけど

わたしは、それでも生きたいのだ。




もう理不尽に死ぬのなんて

それだけはごめんだ。



だからこそ、わたしは

挽回しなきゃならない。



少しでも、敵を減らして

味方を増やしていきたい。



そのためにも、今のわたしができることを

貢献できることををしていかなきゃね!




そして、今回の件ではっきりしたけど、




多分、今回のアメリやこの店の

店員たちのように

わたしのことを恐れていたり

嫌っているひとは

ここ以外にもいるだろう。




そして、たぶんだけど

他の貴族も知っているはずだ。

ミレーユがすごく厄介な令嬢

だということを。




そして、それは

きっと王子の耳にも

入ってるだろう。

むしろ、入らないわけがない。




これは、今後もしかしたら

わたしが思っていた以上に

骨が折れることに

なるのかもしれない。




本当に

気を引き締めていかなきゃ

まずいことになる予感がする。




そんなことを考えながら

和解したアメリと新しいドレスの

相談をし、店を後にした。




ふう、と一息ついたところで、


「ミレーユっ」

「わぁ!な、お兄様びっくりさせないでください」



「あはは!お疲れ様だね」

「いえ、お兄様こそお付き合いありがとうございました」

「いや、どうなることかと思ったよ」

「ご心配おかけしました」

「いや、そんなの全然いいんだけど」



少し間をおいて、アルノルトが言った。



「ねえ、ミレーユってさ。本当は記憶戻ってるの?」



イタズラっ子みたいな顔をして

覗き込んできてはいるが、目の奥が笑ってないのがわかる。



まあ、ここまでする幼児なんて流石に気味が悪いわよね。聞きたくもなるわ。

というか、聞いてくるということは

何かを疑われてる可能性もある。



ここは、

正直に話しておくのがいいだろう。




「全く、戻っておりませんわ」

「えー、じゃあなんで以前に起こった事がわかったの?」




「わかりますわ。というか、知らなくてもこれまでのわたくしの言葉や態度を知っている人間で、あの空気の中にいたら、わたしが以前に何を起こしたのか、ある程度なら感じられるかと思いますけど」



ここらへんはもう、開き直ろう。

多分、わたしの今の歳の子ならここまできっと

わかってたとしても、言語化はできない。




だけど、わかってしまうし、

これからもきっとこういうことはあるだろう。



これまでのミレーユのことだ。

いろんなところで敵は作っているはず。



むしろ、今回はアメリが良い人だったから良かったものの、恨みのレベルによっては命を狙われても仕方ないこともあるだろう。



今のわたしは1人では何もできない子供。

誘拐や監禁なんてされてしまったら

それこそ終わりだ。



だからこそ、今回のように私の言葉や態度で解決しなければならなくなる時がこれからもあるはずなのだ。



その度にわかってしまったことを誤魔化していても、いずれボロが出る。



だったら早めに認めて開き直ってしまってた方が

後々楽だと考えた。



アルノルトは少し驚いたような

顔をしていたが、スッと何か思うように

穏やかな顔になり

「なるほどね、そういうことにしておこうか」




な、なんだか引っかかる言い方だけど、

とりあえずは納得してもらえたみたいだ。


久しぶりの更新です。

アルノルトが意外にもミレーユの

アシストをしてくれてました。

余裕がある時にアメリ側のこの時の気持ちも

書けたらなと思っています。

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