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オレンジ色のユリ
ノアの旅が始まる前
ある旅人の小さな物語
その人は鮮やかな色のドレスを身に纏い、いつも街の広場で楽しそうに踊っていました
異国民で旅人の私にも、共に踊ろうと手を差し伸べてくれる
騎士たちが巡回に来た時も、彼らに敬意を払いつつ、私も同じように国を守りたいと宣言するような、強い人です
「ねぇ、あなたどこから来たの?」
東の方だと答えると、彼女は嬉しそうに「私は南の方!」と教えてくれました。故郷は田舎らしく、街には出稼ぎに来ているそうです
そしてあの日、街が炎の檻に閉ざされた後、その国にはもう誰の姿もなく、華々とその灰が舞い散るのみでした
でも彼女の姿だけはすぐに分かりました
広場に橙のユリが咲き誇っていたんです




