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ノアの旅  作者: 衣吹
【あなたをずっと待っていた】
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戦いの後は

「待たせたね。行こうか。」


 バケモノ退治ですっかり忘れていたが、宝探しが当初の目的だった。より岩場の深い場所へ向かうと洞窟が見つかった。ランタンを取り出し、その洞窟を進んで行く。海水が流れ込んできているようで、足場もゴツゴツととがった岩がむき出していた。そんな中アレグリアは全く迷うことなく奥へと進んで行く。分かれ道をものともせず、やがて辿り着いた場所には、金や宝石、海賊が夢見るようなありとあらゆる財宝が待っていた。


「こ、これって……。」


「ずっと探していた……。古の、更にその昔の時代の海賊が、このあたりの海を荒らして手に入れた財宝をどこかに隠したと。主人を失えば消えるはずの財宝が、どうしてまだここに存在するのか……。不思議だろ?それを今日、やっとこの手で見たんだ。」


 アレグリアは喜びと、そしてどこか寂しげな表情で言った。そしてその財宝の中から黄金の髪飾りを一つだけ拾い、すぐにその財宝に背を向けた。


「さ、帰るよ。」


「え?財宝は?こんだけありゃ超大金持ちになれるぜ?」


「こいつだけで充分さ。財宝は金じゃない、ロマンなんだよ。」


 そう言って振り返ることもせずにもと来た道を戻って行く。彼女の生き方を全て理解することは出来ない。だがそれが彼女らしくて、後ろ姿がまた美しかった。セオドア達も気に入った宝を一つずつ見つけた後、すぐに彼女の後を追いかけて船に帰ることにした。その道中で、宝を見せ合う。セオドアは初めて見る意匠が施された金貨を一枚、ヨハンネスは黄金の指輪、ヘレーナは大きな宝石が散りばめられた首飾りを選んだ。洞窟を抜けると、ニコ達が船を海岸に着けていた。そして討伐した巨大生物の身をいそいそと船へ運んでいく。


「お嬢!しばらくご馳走ですね。」


「あまりに大きいと味が落ちるんだけどね。ま、船の上で食うなら別かもな。」


 部下たちはアレグリアにねぎらいの言葉を送り、財宝の場所を聞いては洞窟の中へ駆け込んでいった。仕事を終え、部下たちもまた一つずつ財宝を持ち帰ってくると、ついに船はその島を後にした。アレグリアはいつの間にか、手に入れた髪飾りを使って髪を束ねた姿になっていた。彼女の赤い髪に黄金の飾りがよく映える。宴だと食糧庫を空にし、あの巨大生物も皆で焼いて食べつくした。そんな宴が二晩続くと、ついにルカコスへと帰ってきた。


「約束通り、あんた達をアルバディアに送ってあげる。ただ、覚悟しておくんだよ?嵐の中の航海は、想像を絶する厳しさだ。」


「分かっている。ありがとうアレグリア。」


「じゃ、また明日。同じ時間に。」


 そう言ってアレグリアは背を向けてニコのもとへと歩いて行こうとしていた。アレグリアの部下たちは先日の酒場にぞろぞろと入っていく。その列を作らせていたニコがアレグリアに大きく手を振っていた。


「お嬢!早く行かないと!ムサカの店閉まっちゃいますよ!」


「ムサカ?」


「なんだ、あんた達ムサカ食べてないの?」


「初めて聞く名前だな。」


 ムサカという聞きなれない名前にヨハンネスやヘレーナも怪訝な面持ちだ。


「早く言ってよ。さぁ、ついておいで!」


 彼女に連れられ見るからに高級店でムサカをご馳走になった。高級店などセオドア達は初めてで、たじろいでしまったが、それでもアレグリアは笑ってくれていた。ムサカだけでなく、サラダやデザート、他にも沢山の食事をご馳走され、その別格の味を楽しみ幸福に浸っていた。宿への帰り道、炎の明かりに照らされた白い街は、いつにもまして美しい。この街とも明日でお別れだ。最後の夜景を楽しみながら歩いて宿へ帰る。船の長旅と高級店での食事で心身ともに疲れてしまったのか皆すぐに眠りの中へと落ちていった。明日は遂に、風の精霊シルフがいると思われる地、アルバディアへ向かう。船旅は過酷なものになるのだろうが、新たな大陸と大地に思いを馳せる気持ちの方が大きかった。


【ルカコス・スペシャリテ】

~オリーブのグリークサラダ~

 種類豊富な野菜のサラダにフェタチーズとレモン、オリーブオイルのサラダ。


~特製ムサカ~

 ラムのひき肉と野菜たっぷりのミートソースとホワイトソースを交互に重ね、上からチーズをかけてオーブンで焼き上げた一品。


~メロマカロナ・ピスタチオアイスクリーム添え~

 オレンジジュースを使った伝統的なデザート。クッキーに近い食感で、ピスタチオのアイスとご一緒に。


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