開いた海路
船のことを相談したいと思ったが、なかなか切り出せずにいた。海賊狩りと言っても、彼女もまた海賊であるならば、頼み事を聞いてくれるとは思えない。だがセオドアのそんな思惑をよそに、ヨハンネスは聞いてしまった。
「なぁ、俺達アルバディアに行きたいんだけどさ、そっちに行く予定とかない?」
「ん?連れて行ってやらないこともないよ?でも、ダメじゃないか。先に頼みごとをしたら。どんな対価に応えても、頼んだ方はいつまでもその恩を抱え続けるんだよ。」
アレグリアは勝ち誇ったような顔で、カウンターに肘をついてグラスを揺らす。
「ずっと待ってたのさ。あんた達が私に頼みごとをしてくるのをね。ルカコスに着いた時から、うちの斥候があんた達に目をつけていた。腕が立ちそうな旅人が三人、船を探しているってね。だからわざわざ陸に降りて直接見に来たのさ。」
「つまり……、どういうこと?」
「さぁね。じゃあ、取引をしようじゃないか。この嵐の中、アルバディアに私があんた達を連れて行ってやる。私にはルカコスも手を出せない。私以上に船の扱いがうまい奴もいない。行きたいところならどこにでも連れて行ってやる。その代わり、宝探しを手伝ってくれないか?」
アレグリアはそう言ってセオドア達にグラスを差し出した。だが彼女の出した条件である宝探しは、本当にそれだけだろうかとむしろ怪しんでしまった。それでも、彼女の他に船を出せる人はおらず、先に進むためにはこの提案を受けるしかなさそうだ。それにヨハンネスとヘレーナは乗り気らしい。すでにグラスを持ち上げていた。
「提案を受けよう。」
互いのグラスが重なり、高い音が鳴る。グラスを鳴らした者達は皆、残っていた酒を一気に飲み干した。
「さ、これで契約成立だな。明朝に出発だ。遅れるんじゃないよ?」
そう言ってアレグリアは男たちのテーブルへ戻って行った。嵐のような人だったと思いつつ、酒場の外に目を向けるともう日がすっかり沈んでいた。
「宝さがしにわざわざ余所者勧誘するなんて、よっぽどな場所に連れていかれそうだな……。早めに帰るか。」
セオドアがそう言うとヘレーナもうんうんと頷き、ヨハンネスはすでに席を立っている。バーマンに代金を支払おうとすると、それは既に済んでいた。アレグリアを見ても、彼女と目線は合わなかった。酒場を出ると、目の前の海に先ほどまでは無かった大きな木の壁がある。見上げてみるとそれは巨大な帆船だった。きっとアレグリアの船なのだろう。近くには見張りが船を止めている岩に腰かけ、酒場から提供された酒を飲んでいる。明日この船に乗るのかと思うと、謎の宝さがしの不安を越えて興奮してしまった。昨夜も泊まった宿に戻り、今夜は武器の手入れをしてから休んだ。




