異国に思いを馳せて
屋台の看板には、ガスト国の紋章があり、ルカコスの隣国で楽しまれている料理のようだ。新しい土地では、自分達の知らない食べ物が溢れている。それに挑戦し、楽しむのも旅の醍醐味だ。
「ショコ……ラトル?三つください!」
「はいよ!チュロスも付けとくから、ショコラトルに付けて食べてみて。」
「凄い、初めて!おじさんありがとう!!」
ヘレーナが笑顔で三人分受け取ると、商人は嬉しそうにチュロスをおまけしてくれた。
「これ、ほんとはアルバディア王宮に卸す予定だった物なんだ。西の国からせっかく取り寄せたんだがな。でもお嬢ちゃんみたいな子に食べてもらえるならそれで充分さ。」
「あなたも、アルバディアに向かう所だったのか。」
「あぁ、ここは南の大陸との交易の中継地点だからね。だからその道が断たれて皆困ってるんだ。天気はどうしようもないけどね。」
商人達はアルバディアに向かうことができず、かの国では物資不足が続いているだろうと教えてくれた。早く海路が復旧する事を商人たちも皆望んでいる。
「俺達もアルバディアに行きたいんだ。どうにか行く方法を知らないか?」
「どこも無理だとは思うが、仕事を失くした船乗りは酒場でやけ酒してるよ。嵐の中船を進められて、実際に出してくれる人がいるかは分からないけど。」
「酒場か、行ってみるよ。ありがとう!」
「旅の無事を祈る。あと、ショコラトルは冷めないうちに飲んでくれよ!」
商人と別れ、フィーラのより中心に向かっていくと広場に出た。そこに置かれたベンチでショコラトルを食べることにした。
【白い街の朝ごはん】
~ショコラトル~
西の大陸から隣国ガストに持ち込まれた珍しい飲み物。蜂蜜で甘くされたそれに、チュロスという棒状のドーナツを付けて食べるのがガスト流。
まだ温かいカップには湯気を立てるショコラトルが甘い香りで食欲を誘う。チュロスはサクサクの触感に甘さは控えめで、ショコラトルの甘さと調和していた。さすが王室に運び込まれる品だっただけのことはある。普段なら口にすることなど絶対にできない物なのだろう。
「これ、凄く美味しいね。昨日のルクマデスも美味しかったけどこれはまた別格!」
「チュロスもう一本欲しいな。まだ食べたい、全然足りない。」
「ガスト国の料理って言ってたよな。いつか行ってみるか。あ、でもガストってエルダーナに戦争吹っ掛けた国だっけ。」
「政治と文化は関係ないだろ。それに、まだエルダーナがガストに滅ぼされたかどうかは分かってない。……でも、ちょっと行ってみたいな。」
また新たな国に思いを馳せていると、気がつけば昼になっていた。ショコラトルの商人が言っていた酒場に行ってみるかと、港近くの公衆酒場に向かうことにした。フィーラの通りを逆戻りしていき、坂を下っていく。




