pipkとくるっぷにあげたあれを収納したこれ(なんで、)
pipkとくる…ぷにあげたあれを収納したこれ
※荘司と修哉の話
ふごふご、そんな言葉がよく似合う。
顔を撫でて、手入れを施す。引退競走馬の毛は柔らかく、触っていて気持ちがいい。
舘村荘司にとって、ウマは友達と呼ぶに等しい存在だ。図体の大きさのせいで怖がられることも多いが、ウマ自身は臆病で繊細な生き物。人の感情に機敏で、寄り添うような姿勢も見せてくれる。愛を示せば、愛を返してくれる。
それなのに、家に押しかけ居座っているこの男には何もなかった。
「お前って、馬とか動物相手するときは機嫌よさそうだな」
不機嫌そうに、座椅子を占領するのは八ツ木修哉だ。
「あっ……えっと……ごめんなさい」
荘司の言葉に、修哉はネコのぬいぐるみの尻尾部分を、不機嫌そうに握り締めてから放り投げた。
「そうじゃねえよ、そういうのが聞きたいんじゃねえ」
こっち来い、と修哉から手招きを受ける。洗い物を途中でやめて従えば、引っ張られて、ベッドの上に倒された。
「お前は俺のDomなのに、なんで俺のことをちゃんと見ないんだよ」
体を上げて逃げようとすれば、膝に手を当てられて遮られた。
「やれんだろ? 『Command』、使ってくれよ、権限やっから」
修哉に対して何度も言った、俺はただの一般種です、何も知らないし関係ありません、と。荘司のその言葉を、それはお前の思い込み、お前は俺だけのDomだ、と一蹴した。
「お前は俺のDomなんだから、いつもちゃんと俺のこと見なきゃだめだぜ?」
Commandと呼ばれる命令が使えるのは支配種だけで、その命令を遂行することができるのは服従種のみ。この命令を使うと、体の内側がざわつく。そのざわつきはまるで自分を飲み込み、侵食するようで、荘司にとって好まないものの一つとなっていた。
「ほら、荘司。さっさとしろって」
この男のせいで最近はウマと触れ合うことも、好きなことも制限されている。何もかも、この男の許可がないとすることができない。今日だって、何度も懇願し、久しぶりに乗馬へ行くことが許された日だった。それでも、荘司一人で行くことを許さずに、修哉は着いてきた。
早く出ていってくれ、なんで俺なの、と言ってやりたい。だが、言えば何をされるかわからない。
「……えっと……じゃあ、『Kneel』……座ってください、八ツ木さん……」
命令に従い、ベッドから降りて座り込む修哉。満足気な顔を見せて、命令を催促してくる。
「ほら、さっさと次やれよ」
倒れ込んでいたこの男に、見て見ぬふりをできなかったあの日も自分が憎くて仕方がない。後悔後にたたず、と何度自己嫌悪に陥ったことか。
内側のざわめきと自己嫌悪をしまい込んで、荘司は口を開く。