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前世に飽きた魔王の孫、世界に首を突っ込む。  作者: 暇凡人T
二章 冒険者始動編

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その72 仲間探し

 あの依頼から数日。

 俺たちはまた二人だけで依頼をこなしていた。

 だけど、やっぱり思うことがある。

 二人はキツい。

 正直、ずっと思っていたことだ。

 護衛するにも、採取にも、討伐にも。

 人数が少ないっていうのは、厳しいものがある。

 この前の護衛も眠すぎて、ギリギリだった。

 ついに、誤魔化しきれなくなってきたんだ。

 どれだけ俺たちが強いと言ってもね。

 だから、仲間が欲しい。

 そう思っていたことを、翔に伝えた。


 「新しい仲間欲しいよなぁ…俺たちについて来れるぐらい、強い仲間。」

 「そうだな…たしかに、今のままで依頼を続けるのは、限界だとは思う。でも、そんな人いるのか?」


 翔も同意見だった。

 なら、もうやることは決まってるよな。

 俺は、立ち上がって歩き出す。


 「どこに行くんだ?」

 「ギルド。仲間を探しに行こう。」


 そう言った俺の頭にはもう、一人しか浮かんでいなかった。



 ギルドに到着した俺たちは、まず周囲を見回した。


 「カイルは…いないか。」

 「・・・やっぱり優樹、カイルさんを探してるよな。」

 

 あ、バレた?

 

 「そうだよ。だって、俺たちについて来れるやつなんて、あいつ以外にいるのか?」

 「・・・たしかにそうかもしれない。」


 そうだよね。

 仲間にするなら、カイル以外考えられない。

 めっちゃ強いし、性格も悪くない。

 利益だけ考えるなら、カイルは最適だろう。

 てことで、カイルを探そう。

 でも、ギルドにはいないし…どこにいるんだろ?

 聞き込みでもするか…?

 翔に頼も。

 

 「翔…ちょっと誰かにカイルのこと聞いてきて…?」

 「・・・わかったよ。ただ、優樹も来てくれよ?一緒に聞いててくれ。」


 えー…

 ちょっと陰キャには荷が重いかもー。

 まあ仕方ない。

 全部任せるのもあれだし、ついてくか。

 翔の後ろについて歩く俺。

 客観的に見ると、児童の後ろをつけ回す成人男性だ。

 ・・・文にするとやばいな。

 俺がそんなことを考えて遊んでいると。

 翔は、一人でテーブルに座っている冒険者に話しかけていた。

 

 「あのー…」

 「ん?なんだガキ…っておまえらは…」

 

 お?

 俺たちのこと知ってる感じ?

 まあなんか噂流れてたもんな。

 冒険者杯優勝の。

 

 「・・・いや、いいか。なんの用だ?」

 

 いいんかい。


 「カイル、という方を知ってますか?」

 

 あ、もう直でその話題行くのね。

 距離感がよくわかんないぜ。

 

 「カイル…ああ、あいつか。」

 「知ってるんですね?話が早い。今、カイルさんがいる場所って知って───」

 「あんな疫病神を探すなんて、物好きもいるもんだな。」


 ・・・なんだって?

 疫病神?

 誰の話だよ。


 「・・・それは、どういう?」

 「そのままだよ。あいつが近くにいると、周りが不幸になる。あと、俺はあいつの居場所なんか知らん。他を当たりな。」


 そう言ったきり、もう彼はなにも言わなかった。

 


 翔は、他の何人にも話しかけた。

 その度に、同じようなことを言われた。

 

 「いたパーティが全滅した。」

 「あいつだけ生き残った。」

 「疫病神。」

 「ステータスはゼロのザコ。」


 全員が、ほぼ同じことを言った。

 それなのに、出る人の名前やパーティ名は、毎回違った。

 つまり、それだけ多くのパーティに所属していたんだろう。

 そして、なにも情報はなかった。

 誰も、カイルの居場所は知らなかった。

 俺はというと、少しムカムカしていた。

 仲間にしようっていうやつのことを悪く言われて。

 ・・・そんな俺、情に厚かったかな?

 まあ、いい。

 誰も、カイルのことを本当の意味で知ってるやつはいなかった。

 俺も、理解できてるとは言えないけど。

 少なくともカイルが弱くなんかないことはわかる。

 疫病神?

 それがなんだよ。

 カイルの良さがわからないバカどもになんか頼らない。

 もう俺たちだけで見つけてみせる。

 ・・・なんか後方彼氏面みたいだな。

 俺だけはカイルの良さを知っている、みたいな。

 うん、モロだな。

 そんなことを考えながら、俺たちは街を探し回っていた。

 思い当たる、カイルの居そうな場所を、しらみつぶしに。

 武器屋、いない。

 よく行く飯屋、いない。

 俺たちの宿、いない。

 そこで気づいた。

 俺が、カイルのことをどれだけ知らないか。

 この街のことをどれだけ知らないか。

 俺たちはまだ、なにも知らない。

 そんな状態で、カイルが見つかるはずもなかった。

 いつの間にか、空が赤く染まり始めていた。

 

 「・・・優樹?無理に今日カイルさんを探す必要はないんじゃないか?また、明日にでもギルドに行けば、もしかしたら…」

 「やだ。今日見つける。」


 それでも、俺はカイルを探したかった。

 なんでかって言われると、説明はできない。

 絶対に今日見つけないといけないわけじゃない。

 なんなら、ギルドに毎日行ってれば、いつかは絶対会えるだろう。

 そこでパーティに誘うこともできる。

 でも、それじゃなんか違うよな。

 ギルドで会って、俺たちの仲間になってくれって言われて、なりたいと思うのか?

 そこにいたから誘った。

 そんなのは嫌だ。

 ・・・そうだ。

 俺たちはカイルを、「選んで」仲間になって欲しいんだ。

 だからこそ俺たちは、カイルに寄り添わなきゃいけない。

 自分からカイルを見つけて、その上で勧誘するのが筋じゃないのか?

 少なくとも、俺はそうやって勧誘された方が嬉しい。

 だから、俺はカイルを探す。

 そして、見つける。


 

 俺たちは、さらに探した。

 街の、行ったことのない場所にも足を踏み入れた。

 それでも、カイルはいなかった。

 さすがに疲れたな…

 もう無理なのかも…

 カイルは今日依頼で、街にはいないのかも。

 それなら、見つかるはずがないもんな。

 諦めかけていた俺は、もう考えたくなかった。

 ふと、横を見る。

 そこには、ちょっとした丘があった。

 緩やかで、登るのも簡単そうだ。

 高さは、二十メートルぐらいだろうか。

 こんなのを街の中に残すなんて…

 見張り用だったのかな。

 城壁にも近いし。

 上には、なにもない様子だった。

 俺は、何気なくその丘を登り始めた。

 意味はない。

 ただ、登りたくなったんだ。

 それほど大きな丘でもなく、すぐに登ることができた。

 頂上には、なにもなかった。

 ただ、風の音だけが響いていた。

 さらに、少しだけ街を見渡すことができた。

 それだけだった。

 ・・・そして。

 カイルが座っていた。

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