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前世に飽きた魔王の孫、世界に首を突っ込む。  作者: 暇凡人T
二章 冒険者始動編

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その71 先輩の教え

 前衛なら、いつも通り戦えばいいよな?

 俺は刀を抜き放ち、振り下ろす。

 共鳴波動によって、斬撃が飛んでいく。

 白虎はそれを腕で振り払うが、その直後、たたらを踏む。

 共鳴波動は、当たったものに衝撃がそのまま伝わるんだ。

 だから迎撃されたとしても、通る。

 ただ、見た感じそんな効いてないな。

 白虎は、姿勢を低く、こちらに突進してくる直前のような姿だった。

 

 「ゴグオオオオオン!!!」


 まるで雷鳴。

 空気を切り裂くような咆哮と共に、白虎の体に紫電が纏い始める。

 まさか…

 その瞬間、白虎の姿が消えた。

 直後、俺は剣を横に振った。


 ガッギィン!


 速い!

 見えなかった!

 なら、こっから───


 ドスン!


 前方から、鈍い音が聞こえた。

 白虎の体を、一本の槍が貫いていた。

 上を見た。

 カイルだ。


 「ッッゴガァ!!」


 白虎が、苦しみながら俺を押し込もうとする。

 でも、その程度なら!

 俺は横に逸れ、もう一度刀を振る。

 それと同時に、カイルは空から斧を取り出していた。

 カイルの身長ほどもある、巨大な戦斧だ。

 それを振り下ろしながら、白虎に向け落下を始めた。


 ズバァン!

 ドガァン!


 衝撃が、同時に響いた。

 血と共に、肉片が地面に散らばる。

 白虎は、すでにそれではなくなっていた。

 

 「優樹!大丈夫か!?」


 その直後、翔が俺たちの前に現れる。

 

 「うん、もう終わり。」

 「そうか…ならよかった。」


 そうだ、馬車はどうした?

 これ護衛依頼だぞ?


 「馬車の方は?」

 「それは大丈夫。結界を完璧に貼ってから来たから。優樹が心配で…」

 

 なるほど、そういうことね。

 いくら心配だからって、依頼人ほっていくのはどうかと思うが…

 まあ俺のことを思ってくれてるってことだね、

 ただ、余裕だったね。

 翔いらなかった。

 カイルのおかげだ。

 カイル、ほんと強い。

 でも、今までの強者たちと比べると、異質な強さだ。

 単純に練度と手札の多さがまるで違う。

 しかも、それでいてまだまだ底が見えない。

 味方だけど、怖いな。

 こいつが敵に回らないことを祈る。

 


 馬車のところに戻った俺たちは、馬車から降りている依頼人を見て、まず怒られることを覚悟していた。

 依頼人ほっぽって戦いに行ったわけだからね。

 それなのに…

 

 「あなた方、すごいですね!あんな魔物を、苦労もせず倒してしまうなんて!やはり、あなた方に依頼して正解でした!」


 興奮したような様子で、俺たちに話しかけてくる依頼人。

 それでいいのか。

 ほぼ依頼の不履行だぞ…?

 まあ、満足してるならわざわざ言うことでもないか。

 

 「あはは…褒めていただけるのは嬉しいんですけど、結界を張っているとはいえ、馬車から離れてしまって申し訳ありませんでした。これ以降は馬車を離れず、護衛に徹します。」


 翔が、そう話した。

 しっかり謝るのはいいね。

 好印象を残せるはず。

 そんな打算で依頼人を見ていると、彼はまた喋り出した。


 「いえいえ、安全のため戦闘をしなければならなかっただけでしょう?魔法使いのいない戦いは、かなり厳しい戦いになることは知っています。今後もどうぞよろしくお願いします。」


 依頼人は俺たちに向け、深々と頭を下げた。

 そして、馬車の中に戻っていった。

 上手くいったのか…?

 御者が手綱を引くと、馬のいななきが響き渡った。

 そして馬車が、また動き始めた。

 戦闘の痕跡が残る森を、突き進んでいく…



 意外にも、その後は何もなく、野営をすることになった。

 翔とカイルと一人ずつ交代で見張り番をしつつ、夜を明かした。

 俺が一人だけのときに襲撃が…

 なんてこともなく、楽な野営だった。

 単純に頭数が多いからね。

 ぐっすり眠れました。

 そして、無事に目的地に到着した。

 それは、一つの小さな村だった。

 どうやら、依頼人が統治している村のようだった。

 そこで、依頼の経緯を話された。

 この村から、メリカハルトへと繋がる唯一の道である森の中の道が、謎の魔物によって通れなくなったとのことで、救援に向かいたかったらしい。

 ただ、村に行くための道もその森を通らないといけないのも事実。

 途方に暮れ、冒険者ギルドに依頼を出した、ということらしかった。

 それでか…

 たぶん、謎の魔物ってあの白虎でしょ。

 アイツは強かった。

 討伐依頼ならA、下手すりゃSランクの依頼になっただろう。

 だからBランクの護衛依頼にしたんだろうね。

 

 「無事にここまで送り届けていただけましたし…その上で、問題も解決してもらいました。あの魔物が、謎の魔物の正体でしょう。本当に、ありがとうございました。」


 依頼人はそう言ってまた、深々と頭を下げた。


 「では、冒険者カードをお出しください。依頼完了にします。」


 俺たちは、冒険者カードを渡し、しばらく待つ。

 カードが返されると、妙な光を放っていた。

 これは、依頼が完了した証。

 こうやって完了状態にしてもらって、ギルドで見せると報酬がもらえるんだよね。

 そして、依頼人は村民たちのところへ向かっていった。

 いい領主だね。

 領民思いで、礼儀正しい。

 おかげで、やりやすい依頼だった。

 ま、てことで依頼は終わりだ。

 帰ろう。

 

 「じゃあ、翔。帰ろうか。」

 「待て待て…たしか報酬はカイルさんと山分けだろう?ならカイルさんとも一緒に戻らないと。」


 そういえばそうでしたね。


 「・・・たしかに。ならカイルも…」


 俺は、少し離れているカイルに声をかける。

 

 「カイル、一緒に帰らないか?報酬、山分けするんだろ?」

 「ん?ああ、そうだな。じゃ、行こうか。」


 そう言って、カイルは歩き出す。

 村から出る方向に。

 そうじゃないんだよなぁ…

 転移で帰ろうって言ってるんだよ。

 まあ、カイルは翔が転移使えること知らないから仕方ないけどさ。

 

 「ちょっと待って、転移使えるからそれで帰ろう。」

 「・・・なんだって?転移?」

 

 カイルが、訝しげな顔で振り返る。

 なんか変なこと言ったか?

 

 「転移って、あの転移か?」

 「なんのこと言ってるかわからないけど、歩いて帰る必要なんかないよ。」

 

 カイルは怪訝な顔をして、俺たちのもとに近づいてくる。

 

 「本当にできるのか?それなら今、この場所から、メリカハルトに戻れるか?」

 「・・・翔、できる?」

 「もちろん。」


 翔は魔法陣を展開し、周囲が光りだす。

 

 「おお…!?」


 カイルの驚いた声が聞こえて…

 俺は瞬きをした。

 次に目を開けるとそこには、いつもの街の通りがあった。

 

 

 俺たちの間に、沈黙が続く。

 

 「まさか、本当に使えるとは…」


 最初に言葉を発したのは、カイルだった。

 

 「嘘じゃなかったでしょ?」


 俺は誇らしげに、カイルに返答した。

 たぶん、褒められるだろうなぁ…

 

 「・・・君たち、『転移』の希少性は理解してるのか?」

 

 だが、返ってきた言葉は、俺の予想には反していた。


 「というと?」


 翔が質問に質問で返す。

 

 「わかってないようだな…まず、空間魔法の使い手はそもそもが貴重だ。それだけで重宝されるぐらいにはな。」


 へー。

 そうなんだ。

 で、だからなんなんだ?


 「その中でも、『転移』というのは特に貴重で、重要なもの。下手したら、それが使えるだけで貴族になれるんだぞ?」


 え?

 マジ?


 「・・・なるほど…貴重なことはわかりました。でも、その言いようから察するに、多用すると、なにか良くないことが起こるんでしょう?」


 翔が聞く。

 たしかになんか含みのある言い方だったな。

 てか翔、やっぱり頭の回転早いな…

 俺はそこまで思いつかんかったぞ。

 

 「よくわかってるじゃないか。『転移』の使用者はその利便性、戦略的重要性から、悪い虫が寄って来やすい。自分たちの都合のいいように使って、本人の意思とは関係なく、取引の材料にまでされる。」


 えぇ…?

 えげつないな。

 

 「言いたいことはわかったな?」


 ・・・まあ、大体。

 つまり…


 「「あまり人前で『転移』を使うな。」」


 ハモった。

 翔も同じこと考えてたみたい。

 

 「そうだ。さらに言うと、『空庫』もだ。『転移』が使えるなら、当然使えるだろう?」

 「・・・ええ。空庫も利便性が高いからですね。」


 翔とカイルの会話が続く。

 あれー?

 俺、置いてかれてる?

 

 「カケル、君はよくわかってる。ま、俺が言いたいのは、気をつけろってだけだ。先輩からの助言だと思って、心に刻んでおくんだな。」

 

 カイルはそう言って、ギルドへと歩き出した。

 俺たちは遅れて、それについて行った。

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