表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世に飽きた魔王の孫、世界に首を突っ込む。  作者: 暇凡人T
二章 冒険者始動編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/79

その64 無自覚って怖いね

 俺は少年、レイの後ろをついて歩く。

 まさかこんな、思わぬところにアルトの情報があるとは…

 いや、元々聞くつもりではあったけど。

 この、前に会った子が知ってるとは思わなかったよね。

 ま、あれもこれも…

 俺は、前を歩いている翔を見下ろす。

 翔のおかげだ。

 はたから見たら、父親と子供二人にしか見えないよな…

 だって今の翔の見た目は十歳かそこらだからね。

 ただ…そんな見た目の翔が、あんな誘惑をするとはね…

 恐ろしい…

 俺は翔に話しかける。

 

 「・・・やっぱり翔はモテるね…あんな小さい子にまで好かれるなんて。ま、それを利用するのは、なかなか悪どいけどな!」


 ・・・返答がない。

 翔の顔を見てみると、驚いたような、意表をつかれたような顔をしていた。


 「モテる…?なんでそう思ったかよくわからないけど、俺は理想の年上を演じただけだぞ?」


 え…?

 まさか…無自覚…?

 いやいやいや、それであのムーブは無理がある。

 冗談だよ、な?

 俺は縋るように、もう一度翔の顔を見る。

 だが、翔の顔に、冗談を言っているような雰囲気はなかった。

 マジか…

 まさか翔が、無自覚人たらしだったなんて…

 たしかに誰にでも優しいし、強い。

 それでいて恩を傘に着るでもなく…って、あれ?

 翔、もしかしてずっと人たらし?

 なんで気づかなかったんだ…

 それに、今の姿はほぼ美少女だし…

 ・・・俺はとんでもない親友を持ってしまったのかもしれない。

 そんなことを考えていると。


 「着いた…翔さん、ここだよ!」


 レイが声を上げた。

 ここが…

 アルトの家。



 路地から少しだけ大通りに近い、でも活気なんてない場所に、俺たちはいた。

 その家は一見すると、ありふれた一軒家だった。

 一階建てで、玄関のすぐそばに窓がある。

 こんな一軒家を、俺はコルバンでも、メリカハルトでも見てきた。

 ただ、漂って来る雰囲気が普通ではない。

 何か、力の波動のようなものを感じる。

 ・・・いや、気のせいかも。


 「・・・優樹。」


 翔が俺に呼びかける。

 そうだな…

 目的を果たそう。

 俺は、アルトに話を聞きに来たんだ。


 「ふぅー…」


 深呼吸をし、覚悟を決める。

 

 コンコン。


 扉をノックする音が、ただただ響く。

 しばらくの間、俺たちに静寂が広がる。

 そろそろ気まずくなって来た頃、扉が、ガチャリと開いた。


 「誰だ…って、おまえは…!」


 出てきたのは、もちろんアルトだ。

 驚いた表情をしていて、俺への敵意が感じられる。


 「・・・なにしに来た。俺を笑いにでも来たか?」


 アルトは俺の顔を見つめる。

 すぐに俺は否定しようと口を開けた、その瞬間。


 「・・・いや、違うな。勝ったやつの顔じゃねぇ。」


 アルトがまた話し始めた。


 「気に食わねぇ。けど、面白い。ひとまず入れよ。」


 アルトは勝手に一人で納得し、俺たちを家に招き入れた。

 ・・・いや、なんで?



 中へ入る。

 そこには、黒い魔法陣が描かれていた…

 ・・・なんてことはなく、普通の一般的な家だった。

 まず玄関、そこから部屋に入ると、生活感のある部屋が広がっていた。

 テーブルに、椅子が一組。

 大きめのソファも一つあり、良くも悪くも余裕のある一般家庭って感じ。

 前世のイメージで語ってるけど。

 俺が部屋の中を物色していると、アルトが口を開く。

 

 「まあ、座れよ。」


 俺は指示に従い、大人しくソファに腰を下ろす。

 翔もだ。


 「で、何しに来た…って、またおまえか?」


 アルトは立ったままのレイを指差す。


 「何回言ったら分かる?俺は、路地に飯を持って行ってなんかないってな。てめぇの面も拝んだことねぇって。」


 うん?

 どういうこと?

 たしか、レイは、『そろそろアルトさんが来てくれる。』みたいなこと言ってたよな?

 で、アルトはレイなんて見たことないって言ってる。

 わけわからん。


 「そんなはずない!アルトさん、あんたは俺たち孤児に、飯を配ってくれたじゃないか!それも、何回も!」

 「だから見間違いっつってんだろ!もういい!おまえはもう帰れ!」


 レイとアルトがぶつかり合う。

 そして、レイは玄関の方に歩き出す。

 

 「ちょっと、レイくん…?」

 

 翔がレイに声をかけるが、少し反応しただけで、姿が見えなくなる。

 そして…


 バタン。


 と、ドアが閉まる音がして、なにも聞こえなくなった。

 ・・・アルトは、孤児に飯を配っていた…?

 レイの話だと、そうなる。

 でも、アルトは頑なに否定してる。

 どういうことなんだ…?

 

 「悪いな。アイツが、会うたびにお礼がしたいだのなんだの言ってくるもんでな…ついキレちまった。」


 アルトが頭を掻きながら、俺たちの顔を見る。

 

 「なにがしたい?」


 俺は、正直に答える。


 「話が聞きたい。」

 「話だぁ?俺のか?なんだってそんな…」


 アルトに話を聞くためにここまで来たんだ。

 なにがなんでも聞かせてもらうぞ。


 「・・・まあ、いいか。なら、なにが聞きたい?」


 あ、いいんだ。

 交渉も覚悟してただけに、なんかあっけなく感じる。

 都合がいい分には結構だけどね。




 「じゃ、まず。孤児に、飯を配ってるのはほんと?」


 本来聞きたかったことじゃないけど、今一番気になることだ。

 アルトは、渋い顔をする。

 言いたくないんだろうか。

 

 「・・・なんだ、そのー…まあ…本当だ。」


 言い淀んで、引っ張って、認めた。

 どんだけ隠したかったんだよ。

 そんなに隠したいことかね?

 

 「理由聞いてもいいか?」

 「・・・別に、理由なんかない。気分だよ。」


 嘘…とも言い切れないな。

 こいつならやりうる。

 もし嘘だとしても言う気はないだろうな。


 「悪い、話題変えないか?他に知りたいことは?」


 あ、話題逸らした。

 まあもう聞きたかった場所終わったからいいけど。

 なら、本題。

 やっと行ける。


 「アルト…おまえの過去、それを、覚えている限り前から説明してくれないか?」


 これだ。

 これで、前世の話を聞き出す。


 「ユウキ…おまえ、変なやつだな。俺の過去なんか知りたがるなんて。」


 なんかディスられた。

 

 「・・・話したくはないが…まあいいだろう。面白くもないし、どうせすぐ忘れるだろうからな。ただ、長くなる、覚悟しておけよ。」

 

 こうして、アルトの、過去の話が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ